「Aさんは『チューしよう』と言って、突然顔を近づけてきたんです。何度も拒んだのですが、顔を背けた瞬間に頬にキスされました。本当に気持ちが悪かったです」

【写真】セクハラ中に友人に助けを求めたLINE

 記者の直撃取材に対して重い口を開いたのは、慶應義塾大学文学部1年生の濱松明日香さん(20)。実は濱松さんは慶大学内では“ちょっと知られた存在”だ。


濱松明日香さん(本人Twitterより)

 濱松さんは千葉県出身。豊島岡女子学園高等学校を卒業後、1年の浪人期間を経て今年、慶應義塾大学に入学。浪人生時代に友人がTikTokに投稿した濱松さんがダンスをしながら照れ笑いする何気ない動画が拡散され、同世代の間で大きな話題になった。その知名度も手伝って、11月25日に最終選考が行われる今年のミス慶應コンテストのファイナリストに選出。その際、彼女の氏名がTwitterのトレンドで1位に輝くなど話題となった。Twitterのフォロワーは現在8.5万人を超え、ミスコンのPRのために撮影されたわずか3秒の動画は230万回以上再生されている。

“大人”が運営する前代未聞のミスコンで……

「明日香は自分の意見をしっかりと言うタイプです。努力家で、夏休み中でも『今日は家で勉強する』という日もよくありました。ミスコンが始まってからは、誹謗中傷やデマ情報が出回ることも多くて友人としては心配していますが、明日香は『気にしなければいい』と悩む様子を見せません。サバサバしているので冷たいと思われがちですが、家族を大切にしていて『旅行に行った』などとよく話してくれます」(友人の慶大生)

 しかし華やかな活動の裏で、「明日香はミスコン運営団体内でセクハラ被害を受けている」と友人B子さんが告発したのだ。

セクハラをしたのはミスコンの「プロデューサー」

「彼女は負けん気の強い子ですから。セクハラを受けても一時は笑って受け流そうとしていました。でもショックじゃないわけないですよね。ふとしたときに落ち込んでしまうようで、その姿を見ていたらどうしても許せなくて、お話しようと決めました。

 セクハラをしたのは『ミス慶應コンテスト運営委員会(以下、運営委員会)』のプロデューサー、A氏です。運営委員長は商学部2年の学生なのですが、常に二人で相談しながらミスコンの運営を主導しています」

 主催側の中心人物とも言えるA氏だが、実は慶大の学生ではない。A氏は40歳の会社経営者だ。アパレル会社、株式会社リクルートを経て、2007年に経営コンサルティングやPR動画制作などを請け負う会社を創業。最近では文化庁が主催するイベントの映像制作なども手がけている“社会人”なのだ。

「クリエイティブな仕事をしている人なんだろうな、という印象です。高級そうな帽子やサングラスをしていて、服装もお洒落。SNSにも高級そうなお肉やお酒、海外での仕事の様子などを沢山載せていて、”成功者”という感じです。既婚者で、奥さんも美人な方だそうです。A氏が慶應ミスコンに関わるときには『お金持ちのおじさんがミスコンの運営になるらしい』と学生の間で噂になりました」(ミスコン関係者)

 なぜ慶大生ではないA氏が慶應ミスコンに関わっているのか。その背景には、混迷を極める慶応ミスコン運営の内情がある。

3年前に運営団体が不祥事で解散

 発端は2016年10月。当時ミスコンを運営していた「広告学研究会(以下、広研)」メンバーの一部が未成年の女子学生への飲酒強要と集団強姦をしていたことが発覚。加担した学生のうち3名は無期停学処分、ミスコンは急遽中止に追い込まれた。
 
 慶應ミスコンは元フジテレビの中野美奈子や、元TBSの青木裕子など人気アナウンサーを多く輩出してきた “女子アナの登竜門”。広研も90年の歴史を誇り、卒業生の多くが大手マスコミに就職してきた伝統ある団体だ。この事件は大きな注目を集め、連日メディアでも報道された。

今年のミスコンは2つの団体が同時開催

 事件をきっかけに広研は解散したが、その後は慶應ミスコンの運営団体が乱立する混沌状態に突入する。慶大生が語る。

「事件以後、いろいろなミスコン運営団体が生まれては消えていきましたが、今年は『ミス慶應コンテスト2019実行委員会(以下、実行委員会)』と『運営委員会』の2つがそれぞれミスコンを開催しています。

『実行委員会』は学生主体の団体ですが、『運営委員会』には社会人も関わっています。エグゼクティブ・プロデューサーがホリエモン(堀江貴文氏)だったり、運営費用をクラウドファンディングで集めたりと“ビジネス色”が強い印象です」

「キャバ嬢みたい」と批判を受ける学生ファイナリストたち

 「運営委員会」のやり方に対しては、学生からも批判の声が挙がっている。前出のB子さんが語る。

「今年8月11日、『運営委員会』がクラウドファンディングで支援を募ると発表したのですが、そのやり方があくどくて。支援金に応じて投票数が割り当てられ、AKB商法のようにミスコンファンからお金を巻き上げるシステムになっていたんです。Twitterでも慶大生を中心に炎上しました。

 明日香らファイナリストはミスコンの宣伝のため、雑誌や協賛企業のイベントに積極的に出ていたこともあり、SNSで『キャバ嬢みたい』『金目的』などと批判の的になっていました。明日香は運営に対して直接『応援してくれる人に申し訳ない』と苦言を呈していたようですが、方針が変わる気配はなかったそうです」

LINEでセクハラ被害を“実況”SOS

 濱松さんはB子さんにミスコンの方針について、運営側と考えが合わないとたびたび悩み相談をしていたという。そんな折、8月2日深夜に濱松さんから都内クラブ「X」でA氏からセクハラを受けている、とリアルタイムで連絡が入ったのだ。B子さんのLINE画面を確認すると、日付が変わった3日午前2時頃から、断続的に濱松さんからメッセージが送られてきている。

《めっちゃチューしてくるこの人》(1時56分)
《めっちゃお尻さすってくるww》(2時2分)

 B子さんは心配で、寝ずに動向を見守っていたという。

「明日香が店を出たのは2時半ごろだったと思います。帰りのタクシーの中から電話をしてきてくれました。『ないわ〜』と笑って済ませようとしていましたが、やはりショックではあったようです。セクハラの経緯を語っている最中に黙りこくったり、感情の浮き沈みが激しかったり、いつもの様子とは明らかに違っていました」(同前)

 当日、クラブ「X」では何が行われていたのか。取材班が帰宅途中の濱松さんに声をかけると、戸惑いながらもセクハラ被害の全容を打ち明けた。

「相談したいことがあるから来てくれないか」

「その日は恵比寿で友達と夕飯を食べていたのですが、Aさんから『相談したいことがあるから来てくれないか』と連絡がありました。友達を連れてきてもいいと言われたので、3人で会ったのですが大した相談もなく、22時半頃に友達だけ先に帰ってしまいました」

 しかし濱松さんの友人が先に店を出た後で、A氏はこう切り出した。

「『濱松はミスコンを盛り上げてくれているし、運営で話し合って20万円を支払おうってことになった。受け取ってくれるか?』と聞かれました。20万円なんて大金、受け取れるわけがありません。ミスコンのために頑張っていましたが、自主的にやっていたことですし。それと、私を“釣る”目的なんじゃないか、とも思ったので」(同前)

 ファイナリストらは協賛企業のイベントに参加するなどの活動もしていたが、濱松さんは「やりたくないことはしたくない」と参加に消極的なこともあったという。

「私は学生生活の一部としてミスコンの活動を楽しんでいたので、強制的にビジネス的なものに協力させられるのは嫌だったんです。でもそれ以外の活動はすごく楽しんでいたので、運営側ともっといい関係を築くにはどうすればいいだろうと考えていたところでした。そんな時に『20万円を支払う』なんて言われたので、やっぱり煙たく思われていたのかと落ち込みました」(同前)

耳元で「ラウンジ嬢ごっこしよう」

 そんなやりとりの後、A氏と濱松さんが店を出たのは0時半頃。深夜にもかかわらず、A氏は「今からクラブ行くぞ」と言ってタクシーに乗り込んだ。濱松さんも誘いに乗ったという。

「20万円を受け取ることを拒否しましたし、これ以上断って機嫌を損ねたらミスコンの活動がしにくくなるかもと思うと断りづらくて。でも行かなければよかったです……」(同前)

 新宿区にあるクラブ「X」に着くと、A氏はメインフロアのVIPルームへと向かった。

「VIPルームはソファー席で、Aさんは私の右隣に座りました。Aさんの右隣には『X』の代表でAさんの友人だという方が座っていました。するとAさんが突然腰に手を回してきたんです。腰にあった手は徐々に下がってきて、スカートの上からお尻を触られました。すごく嫌でしたが、場の空気を悪くしないよう『そういう(安っぽい)ことはしないよ』と冗談っぽくかわそうとしたんです。しかしAさんは『ラウンジ嬢ごっこしよう』と言って、やめてくれませんでした」

 そしてA氏は濱松さんの口元に顔を近づけてきた。濱松さんは咄嗟によけたが、よけきれず頬にキスされてしまったという。 

「顔を背けていたのですが、口の周りに何度もされて……。髭がチクチクして痛くて、不快で、必死に拒んだ記憶があります。親のような歳のおじさんに体を触られただけでも気持ち悪いのに、キスまでされてぞっとしました」(同前)

運ばれてきたのは“テキーラ観覧車”

 前掲のLINEはこのときに送られたものだ。A氏の死角になる左側で、見つからないように携帯を操作していたのだという。

「とにかく隙を見てここを出なければと思って、こっそり友達に連絡していたんです。でもなかなか(店外に)出れなくて。そのうちテキーラのショットが何杯も乗せられた観覧車のようなスタンドが運ばれてきたので、さすがにまずいと思って『友達と会うので帰ります』と言って店を出ました。

 直後は大したことじゃないと思い込もうとしました。でもやっぱり軽い扱いをされたことに対してのショックがとても大きくて……。プロデューサーとして権力もお金も人脈も持っているAさんに『あの日私にセクハラしたよね?』と言うこともできず、今まで黙っていました」(同前)

 セクハラの事実についてA氏、運営委員会、慶應義塾大学にも取材をした。すると運営委員会からは驚きの回答が送られてきたのだ――。(後編に続く)

《慶應ミスコンまた不祥事》「セクハラ行為は一切受けておりません」被害者が強要された“偽りの陳述書”と”精神科受診” へ続く

(「週刊文春」編集部/週刊文春)