26歳でも、藍子のように悩む女性は意外にいますから。いずれにせよ、20代後半であることに変わりはありません。「だったら等身大でいこう」ということで監督にも納得していただきました。

 それから撮影期間中、私は台湾の人たちと実際に片言の英語やジェスチャーで意思疎通をしていったわけです。これは、藍子を演じることに通じましたね。

 藍子は台湾で(周囲の人々とコミュニケーションをしながら)成長していったわけです。私も「自分自身が実際に台湾にいる」という経験を通じて、そんな藍子の成長を作っていけたわけです。

 ただ、日本人が「真面目」と言われると、私なんかは心にグサグサグサっときちゃうんですよー。

<黒川の役づくりについての説明を聞いて感心する表情を見せた周囲に対して、黒川はジェスチャーを交え、早口で語った。自分が頑張ったのは事実だが、まだまだ完璧とは思えないという黒川の謙虚な気持ち。そして、次の機会には、もっときっちりとやりたいという向上心を強く感じた>

黒川:最初に台本をいただきますよね。今回、特別だったのは、中国語部分が多いから、相手のセリフがよく分からないんです。

 普通なら、共演者のセリフをよく理解して、演技の際にも相手のセリフを受け止めた上で、自分が演じていきます。

 (演技の際に耳に入って来るのが)中国語のセリフだと、そのあたりが分からない。なのにテレサは、アドリブを入れるんですよ。「度胸あるなあ!」と思いました。

 私も、自分の仕事について、多少のプライドがありますから、相手がアドリブを出したからには、自分も対抗する。そんなやりとりが、芝居の魅力を増すことにつながったかもしれません。

テレサ:そうですね、日月潭で、食べ物の取り合いをしたときも、アドリブいれましたよねえ。

黒川:急にやるんだもんなあ。

テレサ:黒川さんなら、ちゃんと返してくれると信じていたから、私もアドリブをできたんですよ。

――さて、この「南風」ですが、特にどのような人に見てほしいと思っていますか。どういう所に注目してほしいですか。

黒川:この作品は、台湾の美しさを描いています。それから、自転車に特化した作品ですから、自転車を好きな人にも、見ていただきたいですね。それから、20代後半の女性にも見ていただきたいです。

 いわゆるロード・ムービーで、ドキュメンタリーみたいな作品です。「一緒に旅する」楽しさを味わっていただけると思います。(藍子とトントンの)2人の掛け合いも楽しんでください。

テレサ:夢を追う。でも、何かがちょっと足りない。そんな人物が登場します。そして、人と人の心のつながり、言葉を介さないつながりを描いています。夢はあるけど、自分が信じきれない。そんな人に見ていただきたいです。

コウ:台湾の景色、人情、それから食べ物についても見ていただきたい。がんばっている3人を見ていただきたい。勇気をもって、夢を追っていきたいと考える人に、この作品を是非、見ていただきたいですね。

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 上記インタビューの直後、3人は上映初日の舞台あいさつに臨んだ。

 台湾、そして松山での撮影は、3人にとって殊の外、“強烈”な経験になったようだ。黒川は、目をちょっとうるませながら「思い入れの強い作品です。(観客に対して)見ていただけて嬉しいです」と述べた。

 テレサは「東京のみなさん。コンニチハ」、「ヨロシク、オネガイシマス」など、かなり長い日本語を、一気に語った。

 コウも、日本語であいさつしたのは同様。さらに英語で「台湾ロケは1年前にクランクアップしました」などと説明した。