キオクシア株にさらなる追い風か…AI企業が目論む「脱エヌビディア」の実現で起こること

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日本の巻き返しが難しい分野

世界的な“AI革命”の波が、日本経済に歴史的な地殻変動をもたらしている。その象徴が、国内株式市場における主役交代である。

AIデータセンター向けフラッシュメモリーの需要急増を背景に、キオクシアの株価は上場からわずか約1年半で70倍に高騰し、ついにトヨタ自動車を抜いて国内株式時価総額トップに立った。

さらに、オープンAIなどへの投資を加速させるソフトバンクグループも躍進を見せている。こうした中で、日本の産業構造のけん引役が「AI関連産業」へと移行しつつあるとの見方もある。

前編記事〈《時価総額50兆円超》キオクシアがトヨタを抜いた「大きな意味」…低迷する日本経済にチャンス到来か〉ではこれらの背景を詳しく解説している。

AIの世紀、日本企業にどのようなチャンスがあるのか。主な産業での企業ランキングを確認するのも一つの選択肢だろう。

まず、ソフトウェア分野で、わが国の企業が世界トップシェアを目指すことは難しい。生成AIの開発では米中企業がしのぎを削る。AIを使ったサービスでは、マイクロソフト、アマゾンなどの米国企業が優位なシェアを持つ。その他のIT先端分野でも、今のところ、米中の有力企業に比肩する企業がわが国にはない。

ハードウェア分野の勢力図はやや異なる。

キオクシアが隙を突く

メモリー半導体分野(フラッシュメモリー)では、キオクシアが世界第3位のシェアを持つ。半導体材料の一つである感光材分野では東京応化工業やJSR、信越化学工業、富士フイルムホールディングスが世界の60%程度のシェアを占める。半導体製造装置では、東京エレクトロンが世界第3位の売り上げ規模を維持している。

スマホやデジタル家電分野で日本企業は競争力を失ったが、半導体分野では依然として相応の優位性を維持している。

現在の産業構造を見ると、わが国産業界がAI関連分野の需要を取り込むためには、NAND型フラッシュメモリー企業を筆頭に、半導体の部材、製造装置メーカーの連携が重要だ。

スマホの登場をきっかけに、米国ではIT先端企業が半導体の開発に参入した。ソフトバンクグループ傘下、英アームの回路設計図(知的財産)を使い、自社の仕様に適合したチップを開発可能になった。AI分野でも、オープンAIやアンソロピックなどが、演算チップを開発しエヌビディアからシェアを奪うことも考えられる。

その際、AI向けのメモリー半導体は、社外からの調達を重視するだろう。その戦略の方が、演算つまり理論上のAI性能の向上に集中しやすいからだ。そうした見方から、米韓のDRAMメーカーはGPUなどと組み合わせて使う、HBMのデータ転送速度向上を重視している。

米韓勢がHBMの開発に集中する隙を突いて、キオクシアなどがNAND型フラッシュメモリーの性能を引き上げることは、今後のわが国の産業・経済にかなりの好影響を与えるだろう。

日本経済回復のラストチャンス

現時点で、わが国がAI分野の需要を取り込むために、キオクシアの重要性は高まっている。同社に期待されるのは、多くのデータの保存と取り出し速度の高いメモリーを、米国、韓国、中国の競合企業に先駆けて市場投入することだ。

そのために、同社がAIデータセンター向けのメモリーチップを主たる事業領域に定め、競合他社を上回るスピードで研究開発と設備投資を積み増すことが求められる。

その際に重要なのは、これまでになかった機能を持つモノを生み出す経営者の意欲だ。

1990年代以降の日本経済を振り返ると、基本的に、自動車メーカーが米中などの需要を取り込み、それを追い風にして工作機械メーカー、車載用の電子部品メーカーなどの業績が上向くことで景気の持ち直しを実現してきた。それに加えて、スマホ向けの部品、イメージセンサー需要が増え、景気は緩やかに回復した。

わが国の景気回復は、企業が能動的に新しい需要を生み出すというより、外部環境に依存した側面が大きい。そうした状態が続くと、AIがもたらす非連続的な(過去の経験、常識、景気回復プロセスが当てはまらない)経済環境の変化に対応することは難しくなる。

ダーウィンの進化論にある通り、強いものではなく、環境変化に適応できた種が生き残る。長期存続のために、現状維持ではなく、新たな需要を生み出す発想の重要性は高まる。

今後、キオクシアが世界トップメーカーを目指すことは、関連部材や製造装置メーカーの底上げにつながるはずだ。それは、先端および次世代AIチップの量産に取り組むラピダスにもポジティブな影響を与える。

わが国の企業、政府にとって1990年代以降の施策を繰り返すゆとりはない。半導体産業は競争力低下を挽回するチャンスを迎えている。それは、日本経済が再興を期すラストチャンスになるかもしれない。

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