逆流性食道炎の治療費|薬代・検査費用の自己負担額

「逆流性食道炎と診断されたけれど、毎月の治療費はどのくらいかかるのだろう」「胃カメラが必要と言われたけれど、費用が心配で踏み出せない」といった不安を感じている方は、少なくないのではないでしょうか。

逆流性食道炎は、胃酸が食道に逆流することで慢性的な胸やけや不快感を引き起こす病気で、中高年を中心に多くの方が経験するものです。長期にわたることが多いため、月々どのくらいの費用がかかるのかを早めに知っておくことは、治療を続けていくうえでも、家計管理のうえでもとても重要です。

この記事では、外来通院・薬代・内視鏡検査にかかる費用の目安と、費用を抑えるために使える公的制度について解説します。


監修医師:
佐々木 健也(医師)

高知医科大学医学部(現・高知大学医学部)卒業。消化器内科医として10年以上にわたり、大学病院や基幹病院で肝胆膵領域の専門診療に従事。ウイルス性肝炎、MASH(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)、肝細胞がんを中心に、最新のガイドラインに基づく標準治療から地域医療における患者マネジメント、病診連携まで幅広く携わる。アルコール依存症診療にも豊富な経験を有し、精神科領域への出向経験を生かして、物質依存症や行動依存症に対する医学的助言も行う。近年は父親としての育児経験を契機に、小児の成長・発達、児童心理、発達障害、児童精神医学にも関心を広げ、看護師や公認心理師など多職種と連携した研究プロジェクトの準備を進めている。日本内科学会認定内科医、日本消化器病学会消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会専門医。

逆流性食道炎とは|治療の基本的な流れ

逆流性食道炎(ぎゃくりゅうせいしょくどうえん)とは、胃の内容物や胃酸が食道へ逆流し、食道の粘膜が炎症を起こす病気です。主な症状は、食後や就寝時に強くなりやすい胸やけ、呑酸(どんさん)=すっぱい液体が口まで上がってくる感覚、のどの違和感、慢性的なせきなどです。

発症の背景には、食べすぎや飲みすぎ、肥満、猫背・前かがみの姿勢、早食い、脂肪分や刺激物の多い食事、喫煙、就寝前の食事といった生活習慣が関係していることが多く、加齢によって胃と食道の境目にある括約筋(かつやくきん)がゆるむことも原因のひとつです。

治療は主に、プロトンポンプ阻害薬(PPI:ぴーぴーあい)やP-CAB(ぴーきゃぶ)と呼ばれる胃酸の分泌を強力に抑える薬の服用が中心で、内科・消化器内科への外来通院で管理します。薬の服用と生活習慣の改善を組み合わせることで症状が落ち着くケースが多いですが、症状が繰り返す場合や重症と診断された場合は、内視鏡による定期観察が必要になることもあります。

外来通院・処方にかかる月額費用の目安

健康保険の3割負担を前提にした場合、安定期の通院で月にかかる費用の目安は以下のとおりです。

■ 初診料
・費用目安(3割負担):約870~1,000円
・備考:初回のみ
■ 再診料
・費用目安(3割負担):約230~450円
・備考:2回目以降
■ 処方箋料
・費用目安(3割負担):約200円
・備考:処方時発生
■ 薬剤料(月30日分)
・費用目安(3割負担):約100~1,700円程度
・備考:薬の種類による
■ 合計(安定期の月額)
・費用目安(3割負担):約800~3,000円程度
・備考:月1回通院の場合

※上記はあくまで目安です。受診する医療機関や検査内容・投薬内容により異なります。

一般的なクリニックでは、内科の再診料と処方箋料を合計すると自己負担は1回あたり600~700円程度です。これに調剤薬局での薬代が加わります。初診の場合は診察料が高くなるため、初回のみ1,000~1,200円程度かかることが多いです。症状が落ち着いている安定期であれば、薬の長期処方(28~30日分)が可能なため、月1回の通院で管理できることが一般的です。

胃カメラ(上部消化管内視鏡)の費用

逆流性食道炎の診断確定や経過観察には、上部消化管内視鏡検査(じょうぶしょうかかんないしきょう)、いわゆる胃カメラが用いられます。3割負担の場合の費用目安は以下のとおりです。

■ 上部消化管内視鏡(経口・経鼻)
・費用目安(3割負担):約4,000~5,000円
■ ピロリ菌感染検査(追加)
・費用目安(3割負担):約400円
■ 生検・病理組織検査(追加)
・費用目安(3割負担):約6,000円~(1臓器につき)
■ 内視鏡的止血術(追加)
・費用目安(3割負担):約15,000~30,000円
■ 内視鏡的粘膜切除術(EMR)(追加)
・費用目安(3割負担):約30,000~42,000円

※上記はあくまで目安です。受診する医療機関や検査内容・投薬内容により異なります。

内視鏡検査は1回の費用がまとまってかかりますが、逆流性食道炎の診断時や、バレット食道(ばれっとしょくどう)など合併症の確認のために年に1回程度行われることが多いです。バレット食道とは、食道と胃の境界部分の粘膜が変性した状態のことで、まれに食道がんのリスクが高まることから定期的な観察が推奨されます。

また、内視鏡と同時にピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)の感染確認検査が行われることもあります。ピロリ菌の除菌治療が成功すると、逆流性食道炎の症状が改善するケースもあることが知られており、その場合は検査費・除菌薬代が追加でかかります。

薬代の目安|先発品とジェネリック医薬品の違い

逆流性食道炎の治療薬として処方されることが多いのは、胃酸の分泌を強力に抑えるPPIと、新しいタイプのP-CABです。30日分を3割負担で購入した場合の費用目安は以下のとおりです。

■ PPI(オメプラゾール・ランソプラゾール等)
・先発品(30日分):約250~450円
・ジェネリック(30日分):約150~310円
■ P-CAB(ボノプラザン〔タケキャブ〕等)
・先発品(30日分):約800~1,700円
・ジェネリック(30日分):無し
■ H2ブロッカー(ファモチジン等)
・先発品(30日分):約100~300円
・ジェネリック(30日分):約60~180円

※上記はあくまで目安です。受診する医療機関や検査内容・投薬内容により異なります。

ジェネリック医薬品(後発品)とは、先発品と同じ有効成分で同等の効果が確認された薬で、先発品よりも価格が低く設定されています。医師や薬剤師に相談することで変更が可能なケースが多く、長期の服用が見込まれる場合には薬代を大幅に節約できることがあります。一方で、2026年の薬価改定により、一部のジェネリックが先発品と同等または高い価格になっているケースもあります。また、薬の種類・用量によって費用も異なります。詳しくは薬剤師にご確認ください。「先発品と効果が変わらないか心配」という場合も、遠慮なく担当医に確認してみましょう。

費用が増えるケース|症状が長引く・合併症がある場合

逆流性食道炎は適切な治療を続けることで多くの場合コントロールできますが、症状が繰り返したり合併症が生じたりすると費用が増加します。代表的な状況と追加費用の目安は以下のとおりです。

■ バレット食道の定期内視鏡(年1~2回)
・追加でかかる費用目安(3割負担):約4,000~12,000円程度(1回)
■ 逆流性食道炎に伴う咽頭・喉頭炎(耳鼻科追加受診)
・追加でかかる費用目安(3割負担):1,000~3,000円程度(1回)
■ ピロリ菌除菌治療(薬代+検査費)
・追加でかかる費用目安(3割負担):約2,000~3,000円程度(1次除菌のみ)約4,000~6,000円程度(2次除菌まで実施)

※上記はあくまで目安です。受診する医療機関や検査内容・投薬内容により異なります。

バレット食道と診断された場合は、年に1~2回の内視鏡検査が推奨されることがあり、年間で4,000~20,000円程度の検査費用が継続的にかかります。放置すると食道がんへ進展するリスクがあるため、費用がかかっても定期検査を継続することが大切です。また、逆流性食道炎が慢性化すると「夜間の胸やけで眠れない」「食事が楽しめない」など日常生活への影響も大きくなります。早期の受診と継続的な管理が、長期的にみて医療費の抑制につながります。

知っておきたい公的制度

■ 高額療養費制度(こうがくりょうようひせいど)

同じ月に医療機関や薬局で支払った医療費が、一定の金額(自己負担限度額)を超えた場合に、超えた分が後から払い戻される制度です。たとえば、70歳未満で一般的な所得(月収の目安:約28万~50万円)の方の上限額は「80,100円+(医療費-267,000円)×1%」となります。医療費が10,000円の場合は3割負担の3,000円がそのまま自己負担ですが、胃カメラと薬代が同じ月に重なるなど費用が集中した月に効果を発揮します。

事前に「限度額適用認定証」を取得しておくと、医療機関の窓口での支払いを最初から限度額にとどめることができます。申請窓口は、会社員の方は勤務先の健康保険組合または全国健康保険協会(協会けんぽ)、自営業・無職の方は居住地の市区町村窓口です。

また、マイナンバーカード(マイナ保険証)でオンライン資格確認をすると自動で自己負担限度額が適用されるため、高額療養費の申請不要や、窓口での支払いが自己負担限度額までに抑えられるというメリットがあります。

■ 医療費控除(いりょうひこうじょ)

1年間(1月~12月)に自分や家族のために支払った医療費の合計が10万円を超えた場合に、超えた分を所得から差し引いて税金の還付を受けられる制度です。通院費・薬代・病院までの交通費(電車・バスなど公共交通機関)がすべて対象になります。領収書を1年分まとめておき、確定申告の時期(翌年2~3月)に申請します。

■ セルフメディケーション税制

特定の健康診断や予防接種を受けた方が、薬局などで購入できる「スイッチOTC医薬品」の購入費が年間12,000円を超えた場合に、超えた分を所得から差し引ける制度です。逆流性食道炎の市販薬に含まれるH2ブロッカーや一部の制酸剤が対象になるものもあります。確定申告で申請しますが、医療費控除との重複利用はできません。どちらが有利になるかは年間の支出状況によって異なるため、確認したうえで選択しましょう。

編集部まとめ

逆流性食道炎の治療費は、安定期であれば月あたり800~3,000円程度(再診料+薬代)に収まることが多く、胃カメラが必要な年は1~2万円程度の追加費用を見込んでおくとよいでしょう。公的制度を上手に組み合わせることで、費用の負担をさらに軽減できます。

安定期の外来通院費は月800~3,000円程度(3割負担)。薬代が費用の大部分を占める。

胃カメラ(上部消化管内視鏡)は、検査のみで1回4,000~5,000円が目安。生検やピロリ菌検査が加わると追加費用が発生することがある。

ジェネリック医薬品に変更することで薬代を大幅に抑えられる場合がある。担当医や薬剤師に遠慮なく相談してみよう。

バレット食道など合併症があると定期検査が必要になり、年間の医療費が増える。早期発見・継続治療が長期的なコスト削減につながる。

費用面の不安は、医療ソーシャルワーカーへの相談で解決できることが多い。

逆流性食道炎と診断されたら、まず主治医に治療の見通しと検査の頻度を確認しておくことが大切です。高額療養費制度や医療費控除など使える制度をあらかじめ知っておくと、費用の心配を減らしながら通院を続けやすくなります。「受診をしたいけど費用が心配」という場合は、医療機関の相談窓口や医療ソーシャルワーカーに遠慮なく聞いてみましょう。費用の見通しが立つだけでも、治療は続けやすくなります。

※本記事の情報は2026年6月時点のものです。医療費・制度の内容は変更になる場合があります。詳細は医療機関や各担当窓口にご確認ください。