チェリーポイント海兵隊航空基地の滑走路を走行する米海兵隊のAV8B「ハリアーII」=6月3日/Lance Cpl. Bryan Giraldo/U.S. Marine Corps

(CNN)米海兵隊は3日、55年間にわたって海兵隊航空部隊の象徴となってきた垂直離着陸機AV8「ハリアー」の退役記念式典を開催した。ハリアーは航空ショーの目玉的な存在で、物議を醸したペプシのテレビCMの題材になったこともある。

第223海兵攻撃飛行隊の指揮官、ジョン・カンビー中佐は式典で「ハリアーは世界各地に継続的に前方展開してきたプラットフォームであり、その輝かしい戦績や伝説的な垂直・短距離離着陸(V/STOL)能力、この部隊を特別たらしめた海兵隊員や海軍要員の姿によって記憶に刻まれるだろう」と語った。

ノースカロライナ州のチェリーポイント海兵隊航空基地では、詰めかけた約5000人の観衆が見守る中、ハリアーがホバリングや垂直離着陸などの名高い能力を披露した。

ハリアーはターボファンエンジン1基を動力源とする。そこから生み出される推力は、水平から垂直まで回転可能な四つのノズルを通じてベクトル制御される。

こうした能力により、ハリアーは滑走路のない場所や、米海軍の強襲揚陸艦の甲板からの運用が可能に。本格的な滑走路を備えた航空基地や空港から運用される戦闘機に比べ、実際の戦闘に近い位置にとどまることが可能になった。

ハリアーのパイロットを務めた経歴を持つ海兵隊のマイク・ラウントリー退役中佐はウェブサイト「タスク &パーパス」に対し、「ハリアーには飛行場は必要なかった」と振り返った。

「必要なのは機体を操縦する海兵隊員」と、未整備の着陸地点で燃料補給や兵器搭載を行う少数の支援要員だけだったという。

航空博物館によると、米軍のノーマン・シュワルツコフ司令官はイラクで1991年に実施した「砂漠の嵐」作戦の際、ハリアーを作戦の7大兵器の一つとして称賛した。

ハリアーは「砂漠の盾」作戦や「砂漠の嵐」作戦、ユーゴスラビアに対する99年の北大西洋条約機構(NATO)の軍事作戦、アフガニスタン戦争やイラク戦争、2011年のリビア介入、中東での過激派組織イラク・シリア・イスラム国(ISIS)との戦いなど、数々の紛争に実戦投入された。直近では今年1月、マドゥロ大統領の拘束前にベネズエラ沖に展開した米軍艦隊の一員としてカリブ海入りした。

海兵隊の声明では「ハリアーは強力で高性能、多用途な戦術航空プラットフォームとして幾度となく卓越した能力を示してきた」としている。

英国の設計

AV8Bはこの垂直離着陸機の2代目のモデルに当たる。

初代モデルのAV8Aは1960年代、英ホーカー・シドレーによって開発された。海兵隊の声明によると、米海兵隊が運用を開始したのは71年。85年からは、マクドネル・ダグラス製造の改良モデルAV8Bを導入した。

米政府監査院(GAO)の96年の報告書によると、90年代の価格は1機当たり約2360万ドル。インフレ調整後の現在の価値では約5000万ドルに相当する。航空アナリストによると、海兵隊は一時、約280機のハリアーを運用していた。

現在では、ハリアーはF35戦闘機の垂直離着陸バージョンであるF35Bにその座を譲りつつある。F35Bの機体価格は1機当たり約1億1000万ドルに上る。

F35Bはすでに米国の強襲揚陸艦で運用されており、イランとの現在の戦争に参加する「トリポリ」にも配備されている。

米軍機として部隊で活動するのは3日が最後になったが、イタリア軍とスペイン軍の艦隊には引き続き残る見通しで、比較的小型の揚陸艦から運用される。

最高の景品

戦場での伝説に加え、ハリアーはポップカルチャーの中でも独特の地位を占める。大量のペプシを飲んだ人への景品として提示されたことがあるのだ。

ペプシコは1990年代、ペプシ製品を飲んで700万ポイントを貯めると景品としてハリアーが当たる、というキャンペーンやスーパーボウルのCMを打った。

しかし、これほど大量の炭酸飲料を飲めない場合でも、1ポイント10セントでペプシ・ポイントを購入するチャンスが残されていた。

経営学専攻の学生だったジョン・レナードさん(当時21)は、わずか70万ドルでハリアーを入手できることを見抜き、投資家から資金を募った。

ペプシコはこの取引を拒否。レナードさんはハリアーの引き渡しを求めて訴訟を起こしたが、連邦裁判所はこの請求を退けた。

裁判所はレナードさんの請求を退けた際、「合理的な人なら、CMの冗談めいた表現から、清涼飲料水の会社がキャンペーンの一環で戦闘航空機を提供するなどと結論付けることはないだろう」と指摘した。