事業承継をめぐるトラブルは増え続けている(写真はイメージです)

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 これまでビジネスの場面でAIを活用するためには、人間が「プロンプト(指示・説明文)」を与える必要があった。ところが2026年以降は細かなプロンプトを入力せずとも、ゴールセッティング(目標設定)、ミッションタスク(使命)、オブジェクティブ(具体的目標)を設定するだけで、AIが24時間365日、自律的に複数の工程を経て目標を達成するようになった。【藤原良/作家・ノンフィクションライター】(全2回の第1回)

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 人間が細かい指示を出さなくても、設定された目標を達成するために自ら計画を立て、様々なツールや情報を自律的に判断して処理を実行できる高度なAIシステムを「AIエージェント」と呼ぶ。

事業承継をめぐるトラブルは増え続けている(写真はイメージです)

 AIエージェントの誕生により、その活用が本格化しつつある。世界的に重宝されていることは言うまでもない。欧米などではビジネスシーンにおける上中下層ピラミッドの構造改革を招き、経営陣の勇み足もあって中間ホワイトカラーの失職も増え始めている。

 欧米並みとは言えないが、日本にもAIの波が着実に押し寄せてきている。それは一般社会の中だけに限らず、非合法な犯罪分野や、たとえ違法でなくともグレーゾーンの領域にも大きな影響を及ぼし始めている。

 よく知られているのはデジタル詐欺やロマンス詐欺の進化版だ。AIの進化で自動翻訳の精度が向上し、外国人が日本人になりすましても見抜くことが難しくなってきた。ディープフェイクの技術進化も爆発的で、AIが生成した偽のリアルタイム動画で、ビデオ通話さえ可能になっている。

 とはいえ、デジタル詐欺やロマンス詐欺で起きていることは、ネット空間を起点とする現象だ。

買い主が中国人と発覚

 それが最近では人と人が対面して行うリアルなコミュニケーション領域でも──おまけに裏社会のやり取りでさえ──AIの活用が顕著になってきた。

 東北地方でビジネスを展開している老社長は後継者に恵まれず、長年経営してきた会社を黒字倒産させる必要に迫られていた。そんな折、「社長の会社を引き継ぎたい」という佐々木(仮名、以下同)なる人物を知人から紹介された。

 老社長と佐々木の話し合いは順調に進み、会社の敷地と社屋込みでの買い取り話がまとまりつつあった。ところが、最終価格の決定間際に真の買い主は佐々木ではなく中国人の実業家だったことが判明した。

 老社長は取引を急遽、反故にした。それは自分の会社を中国人には売りたくないと考えたからだ。

 昨今、中国人は日本で土地、建物、企業の買収を活発化させている。その理由の一つに、中国の実業家や富裕層は中国共産党を信用していない、というものがある。

 なぜ信用していないのか。共産党体制が崩壊するのではないかという不安もあるが、何よりも共産党の都合で何の予告もなく自分の財産が強制的に徴収されてしまうかもしれないという恐怖を常に感じているからだ。

事態は泥沼化

 中国共産党の強権政治は強い懸念材料だからこそ、その「逃亡先」や「対抗策」として日本の土地や建物、企業を買い上げておきたい。そして日本のビザを入手し、長い人生の保険として有事に備えておく──これが今や彼らの常識になっている。

 こうした動きを老社長は前々から把握し、毛嫌いしてきた。日本の習慣や建物管理の知識に乏しい中国人が新オーナーとなった物件は杜撰な管理状態に陥るケースが多い。

 他にも買い取った建物がいつの間にか無許可の怪しい民泊施設やゲストハウスに様変わりしていたり、建築基準法などを無視した勝手な改築工事を強行してしまったりすることも頻繁だ。近隣住民とのトラブルも跡を絶たない。

 企業を買収した場合でも、マネーロンダリングや労働ビザの不正乱発に悪用されたり、設備や材料等の不当な横流しの巣窟と化したりしてしまう。

 老社長は自分の会社を中国人実業家に売却することを頑なに拒んだ。佐々木が相手だと思い込んでいた老社長は売買取引の手付金をすでに受け取っていたが、それも返還する意思を示した。一見、これでこの売買取引は正式に白紙に戻ったかのように見えたが、佐々木が断固として納得しなかったことから事態は泥沼化へと向かった。

裏切った弁護士

「手付金の返還は当然だが、これまでの商談にかかった費用と損害賠償金を払え」

 佐々木から迫られた老社長は、直ちに弁護士の「荒木」に依頼して佐々木との交渉を始めてもらったが、数カ月経っても弁護士は交渉をまとめることが出来なかった。

 それどころか老社長に対して中国人実業家の代理人に会うための交渉費用を追加要求し、挙げ句の果てには「あなたの名誉を守るためにも佐々木さんに和解金を支払って穏便に済ませましょう」と提案してくる始末だった。

 老社長は困り果て、「この弁護士は水面下で佐々木と組んで私からカネを吸い取ろうとしているのではないか?」と疑心暗鬼の状態になった。

 まったく弁護士もピンからキリまで、だ。おまけに佐々木が数人の若い半グレ風の男たちだけでなく、弁護士の荒木さえも脇に従え、老社長の会社にいきなり現れて「どうしましょうか?」と凄んだこともあった。

 精神的に追い詰められた老社長が新たな相談相手を探していると、旧友から「事件師」の存在を知らされた。

 第2回【「中国人実業家」「悪徳弁護士」との交渉に完勝した“事件師”の奥の手…「書面はAIに書かせたんですよ」】では、老社長が事件師の「池田」にトラブル解決を依頼すると、何と事件師はAIを活用。最終的に中国人実業家や悪徳弁護士を“撃退”したという驚くべき結果をお伝えする──。

藤原良(ふじわら・りょう)
作家・ノンフィクションライター。週刊誌や月刊誌等で、マンガ原作やアウトロー記事を多数執筆。万物斉同の精神で取材や執筆にあたり、主にアウトロー分野のライターとして定評がある。著書に『山口組対山口組』、『M資金 欲望の地下資産』、『山口組東京進出第一号 「西」からひとりで来た男』、『闇バイトの歴史 「名前のない犯罪」の系譜』(以上、太田出版)など。

デイリー新潮編集部