朝の駅で缶チューハイを飲む“スーツ姿の会社員”たちの心の叫び「ホームのベンチで涙が…」「怠けていたわけではなかった」
今回は、出勤前にアルコールに頼らざるを得なかった3人の証言をもとに、その実態に迫る。
◆仕事のスイッチを入れるための儀式
月末になると社内は「あと何件取れる」「今月落としたら次がない」といった言葉が飛び交うなど、緊張感に包まれる。夜は取引先との会食、その後は一人で飲み直し、コンビニで買った缶チューハイを手に帰宅する。
そんな寝不足の生活の中で、駅でお酒を飲むようになった。
「きっかけは、本当に偶然でした。前日の飲み会でほとんど眠れず、体調が悪い中、朝一で客先訪問の予定が入っていたんです。駅のコンビニでコーヒーを買おうとした手が、なぜか隣のハイボールに伸びて。少し飲めば、逆に楽になる気がしたんです。そして、ベンチで缶を開けました」
一口飲むと、たしかに少しだけ体が軽くなった。不安や緊張がぼやけて、「まあ今日もなんとかなるか」と思えた。
そこから、週に一度だった朝の飲酒は二度になり、プレッシャーの強い日などには、出勤前に350ml缶を空けることが“儀式”となったのだ。酒が好きというより、仕事に向かうためのスイッチである。彼はアルコールの力を借りて、なんとか前に進もうとしていたのだ。
転機は、営業先で言葉がうまく出なくなった日である。
「簡単な説明でさえ噛み続け、お客さんに『大丈夫?』と真顔で心配された瞬間、自分が思っていた以上に壊れかけていることに気づいたんです。
そこから転職まではしていないけれど、少しずつ生活を変えるように努力しました。まず夜の付き合いを減らして『今日は予定あります』って断る日をつくったんです。そして睡眠時間を確保して、朝にコンビニでお酒ではなくお茶を買うようにしました。数字で詰められる部署から、既存顧客中心の担当に変えてもらって、今はなんとか立ち直りましたね」
◆絶望が引き起こした衝動的な一杯
公務員として勤務していた内田健一さん(仮名・30代)のケースは、より衝動的だ。憧れの部署に異動した当初の意気揚々とした気持ちは、経験したことのない業務内容と古い庁舎の重々しい雰囲気にすぐに押しつぶされた。
「仕事で扱う法律が全く異なり、まるで転職したかのように業務についていけなかったんです。次第に上司から与えられる仕事は単純なものばかりになり、“自分はいかに使えない職員か”という自己嫌悪に苛まれるようになったんです」
その日、通勤途中のJR常磐線の車内で、内田さんの頭の中で「何かがぷつんと切れるような音がした」という。気が付けば、衝動的に電車を降りていた。
「私はホームのベンチで缶チューハイを開けていました。2本目を手にした頃、私の目からは涙が流れていました」
通勤ラッシュの時間帯にスーツ姿で泣きながら酒を飲む自分に、周囲からの奇異の視線が突き刺さる。酔った勢いで上司に電話をかけ、支離滅裂な言葉で「休みます」と告げた。
「電話口で戸惑う上司が『内田さん、泣いたらいかん!』と繰り返していたことだけが、嫌にはっきりと印象に残っていますね」
その後の記憶は途切れ途切れで、居酒屋を転々とし、終電後の駅のベンチで駅員に起こされたことしか覚えていないという。
