1日缶2本で死に至ることがある…小児科医「子どもには飲ませたくないコンビニにあるドリンクの名前」

■子どもが注意すべきドリンクとは
コンビニやスーパー、自販機などで手軽に買えるドリンクのなかには、実は子どもにとって危険なものがあるのをご存じでしょうか。そのドリンクとは、ズバリ「エナジードリンク」です。エナジードリンクは、カフェインやアミノ酸、ビタミンB群、糖類などを配合した甘い炭酸飲料のこと。
日本では2005年にオーストリア発の「Red Bull(レッドブル)」が発売され、「翼をさずける」という有名なキャッチコピーとともに人気が爆発。その後、アメリカ発の「Monster Energy(モンスターエナジー)」が発売されました。日本発の「ドデカミン」、「ZONe(ゾーン)」なども売られています。
エナジードリンクは、サッと飲むだけで「眠気が減る」「集中できる」「元気が出る」と評判です。でも、子どもにはすすめられません。なぜなら子どもは普通のジュースとの違いを理解していないことが多く、少ないカフェイン量でも中毒になることがあるため、飲む量が多ければ最悪の場合、命の危険があるからです。
■エナジードリンク飲用後の死亡事例
実際、海外では、エナジードリンクを飲んだ後に子どもが亡くなったという悲しいニュースが何度も報じられています。例えば、次のようなものです。
2011年にアメリカで、心疾患のある14歳の女の子が24時間で24オンス(710ml)の「モンスターエナジー」を2本飲んだ後に亡くなりました。死因は、カフェインの過剰摂取による心臓の不整脈と診断されています。摂取したカフェインは約480mgでした。2025年には、同じくアメリカで、日常的に「Alani Nu(アラニ・ニュー)」というエナジードリンクを飲んでいた基礎疾患のない17歳の女の子が、重い心臓の症状を起こして亡くなりました。
日本では、2022年に8歳の男の子が自動販売機で500mlのエナジードリンクを一気に全部飲み、2時間半後に吐き気が始まって続くため救急外来を受診しました。見た目が魅力的だと思って、初めて買ったそうです。幸い、翌朝には吐き気がおさまりました。
また、日本では子どもの死亡例はありませんが、大人の死亡例はあります。2015年、普段から眠気覚ましのために日常的にカフェインを含むエナジードリンクや錠剤を飲んでいた20代の男性が仕事から帰宅後に嘔吐して亡くなりました。
日本中毒学会は、2011〜2015年の5年間に救急搬送されて、「急性カフェイン中毒」と判明した人を集計しました。少なくとも101人が救急搬送され、7人が心停止、そのうち3人が死亡しています。97人は眠気防止薬を服用しており、併せてコーヒーやエナジードリンクを飲んでいた人もいました。エナジードリンクだけで中毒になった人は4人でした。
■カフェインが世界中で愛される理由
もちろん、カフェイン自体が悪いものだということではありません。カフェインを含む飲料は、エナジードリンクだけでなく、コーヒーや紅茶、緑茶、カカオなどたくさんあり、はるか昔から世界中で愛されてきました。
それは人には疲れていても活動したい(しなくてはいけない)、集中したい、社交的でありたい、長く起きていたいといった欲求があり、カフェインがそうした欲求に答えてくれるからです。
カフェインは、疲れたときに休息や睡眠を促す際に重要なアデノシンという物質の受容体を阻害することで活力を維持します。また、適量のカフェインは注意力を増したり、反応速度を上げたりして単純作業の効率をよくすることが知られています。だから、仕事や勉強、長距離運転や夜勤などの集中力が必要な時に使われやすいんですね。
さらに、カフェインは、ドーパミンやノルアドレナリンなどの覚醒系の神経伝達にも影響します。そのためやる気が出たり、気分が軽くなったりシャキッとした感じが得られるのです。
■なぜカフェインの過剰摂取は危険か
ただし、カフェインには依存性があります。毎日摂っていると脳が慣れてしまい、飲まないと頭痛がする、だるい、集中できないといった離脱症状が現れることがあります。単にコーヒーやエナジードリンクの味が好きだからというより、「いつもの状態に戻るための習慣」になってしまうことがあるのです。
さらにカフェインを過剰摂取すると、不安や動悸、不眠、吐き気、頻脈といった症状が出てきます。もっと過剰摂取すると、急性カフェイン中毒になって、場合によっては命を失います。特に子ども、妊婦、カフェイン感受性の高い人は少ない量でも影響が大きいので注意が必要です。
そのため、カフェインの過剰摂取を防ぐために、厚生労働省や消費者庁が注意喚起をしています(※1、2)。また、食品安全委員会は海外の基準をまとめ、健康な成人では最大400mg/日、妊婦や授乳中、あるいは妊娠を予定している女性は200〜300mg/日、10〜12歳児で85mg/日、7〜9歳で62.5mg/日、4〜6歳児で45mg/日を提唱しています。

※1 厚生労働省「食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A 〜カフェインの過剰摂取に注意しましょう〜」
※2 消費者庁「食品に含まれるカフェインの過剰摂取について」
■ドリンクによって違うカフェイン量
では、さまざまなドリンクに含まれるカフェインの量はどのくらいでしょうか。
日本で一番売れているエナジードリンク5つ、コーヒー、紅茶、緑茶、コーラで比べてみました。

特にエナジードリンクのカフェイン量の多さが際立っていますね。缶は一度に飲み切ることが多いので、要注意です。日本中毒学会の報告のように、これらの飲料と一緒にカフェインのタブレットを飲んだり、コーヒーや紅茶を一緒に飲んだりしたら、食品安全委員会の示す最大摂取量をすぐに超えます。
子どもの中には、「大人っぽくてかっこいい」とエナジードリンクに憧れている子もいるでしょう。また、勉強やスポーツのために「集中できるなら飲みたい」「眠いときに飲みたい」と思う子もいるかもしれません。でも、子どもは大人よりカフェインの影響を受けやすく、体格や体質による個人差も大きいもの。「毎日ではないから」「みんな飲んでいるから」と考えるのではなく、まずは十分な睡眠や規則正しい生活を大切にしてもらえたらと思います。
また、エナジードリンクは、清涼飲料水としてお茶やジュースと一緒に並んでいて手に取りやすいうえ、栄養ドリンクよりも1本に入っているカフェイン量が多いので、大人がどういう飲み物なのかを教えておいたほうがいいでしょう。
モンスターエナジー 40mg
ボスブラック 40mg
ハイパーゾーン 37.5mg
レッドブル 31.8mg
お〜いお茶 13mg
デカビタC ゴッドチャージ クエン酸 10mg
コカ・コーラ 10mg
午後の紅茶 10mg
ドデカミン 5mg
■栄養ドリンクの多くにも含まれている
なお、医薬品・指定医薬部外品である「栄養ドリンク」の多くにもカフェインが入っています。「リポビタンD」や「アリナミン」、「チオビタ」、「キューピーコーワ」、「オロナミンC」などが有名ですね。
栄養ドリンクにはビタミンB群やビタミンC、タウリンなどのアミノ酸が入っていて、肉体疲労時や病中病後の栄養補給のために開発されました。カフェインが入っているのは、中枢神経を刺激し、眠気や倦怠感を改善するためです。
こうした栄養ドリンクも、エナジードリンクと同様にカフェインと糖分の量に注意が必要です。栄養ドリンクを飲めば飲むほど、栄養がつくというわけではありません。何本も飲むと、糖分が体に脂肪として蓄えられ、カフェインによって胸がドキドキしたり、気持ちが悪くなったり、眠れなくなったりします。
ただし、カフェインの入っていない栄養ドリンクもあるので、病気の際の回復や偏食の子の栄養補給として、推奨量を守って飲むのはいいでしょう。
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森戸 やすみ(もりと・やすみ)
小児科専門医
1971年、東京生まれ。一般小児科、NICU(新生児特定集中治療室)などを経て、現在は東京都内で開業。医療者と非医療者の架け橋となる記事や本を書いていきたいと思っている。『新装版 小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』『小児科医ママとパパのやさしい予防接種BOOK』など著書多数。
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(小児科専門医 森戸 やすみ)
