本塁打数でも四球数でもない…村上宗隆が残している「驚異的な数字」

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技術さえあれば通用するほど、メジャーは甘い世界ではない。過酷な環境、言語の違い、熾烈な競争……選手が直面する「壁」の正体。 

村上の強さを示す特筆すべき「データ」

どんな業界においても「前評判」ほど当てにならないものはないが、この男は良い意味で見事に予想を裏切ってくれた。昨オフにメジャーへ移籍した、ホワイトソックスの村上宗隆(26歳)だ。

3月27日からの開幕カードで3戦連発弾を放った後は4試合連続無安打もあったが、4月15日のレイズ戦で復調。ドジャースの大谷翔平(31歳)と並ぶ日本人最多5試合連続本塁打を含む14本を打ち、メジャー全体でトップに立っている(日付は日本時間、数字は5月6日時点。以下同)。

移籍前の村上は「メジャーでは通用しない」という評価がもっぱらだった。ヤクルト時代から三振が多く、「メジャーの速球に対応できない」と言われていたのだ。

それが蓋を開けてみればホームラン量産……このままのペースでいけばシーズン60本超えも夢ではない。メジャーの試合を数多く実況し、リーグ事情にも精通するフリーアナウンサーの節丸裕一氏は活躍の理由をこう分析する。

「メジャーでは95マイル(153km)以上が速球という位置づけですが、村上選手がこの速球をホームランにしているかというとそうではありません。日本時代と同様に三振数は多く、4月時点で46個。これは全体で2位の数字です。

ただ一方で、選球眼が良く、BB%(四球を選ぶ割合)で上位5%に入っている。甘く入ってきた変化球を確実にとらえている印象です」

データ野球化が進むメジャーでは、「結果」だけでなく「過程」も数値化される。アウトになった打球でも、速度や角度などが分析され、評価の対象となるのだ。

メジャーの公式データベース「savant」によると、全打球のうち95マイル以上の打球をどれくらい打てたかを示す「ハードヒット%」において、村上はリーグ全体で上位1%に入っている。つまり、「強い打球」を打てているというわけだ。

「これは、たとえ現時点での打率が低くても長い目で見れば上がってくる可能性が高いということです。ホワイトソックスは再建中のチームで選手を育てている段階ですから、村上選手を起用しないという選択肢はない。そういう意味では、チーム選びにおいても良い判断をしたと言えますし、与えられたチャンスをしっかりと活かしていると思います」(節丸氏)

「覚悟と明確な目標がなかった」

今季から強豪・ブルージェイズに所属する岡本和真(29歳)も、チームトップの10本塁打を放つなどまずまずの滑り出しとなった。何より、日本人選手にとって鬼門と言われてきた内野守備に関しても及第点を与えられているのが、大きな成果だ。

一方、日本人ルーキーのなかで明暗がくっきりと分かれたのが、アストロズの今井達也(28歳)である。一軍3試合の登板で防御率7・27と大苦戦。その後、腕の疲労を訴えて故障者リスト入りし、4月28日に傘下の2Aリーグでリハビリ登板した際も5失点と打ち込まれた。

今井は不調の原因について、「環境の変化に対応しきれていない」とメディアに語っている。ボールやマウンドの違い、遠征帯同や食事など、フィールド内外で適応に苦労しているというのだ。

メジャーは日本のプロ野球よりも試合数が多いうえ、移動距離も長い。大谷らが所属するドジャースは昨シーズン、地球2周分にあたる約7万8293kmを移動したとされる。

食事面での違いも大きい。日本では遠征先でもホテルに豪華な食事が用意されているケースが多いが、メジャーでは球場近くのレストランなどで選手が各々に食事を摂るのが一般的だ。言葉の壁もあり、チーム内だけでなく生活全般においてストレスがかかる。現地の環境への適応力--メジャー挑戦では、これが極めて重要になるという。

「転職にしろ何にしろ、新しいことに挑戦する際には、『覚悟』が重要なんだと思います。僕は『メジャーに行けた』ことで満足していた。『メジャーでサイ・ヤング賞を獲る』という明確な目標がなかったんです。それが足りなかったものかなと、いまは思っています」

そう語るのは、元プロ野球選手の山口俊氏だ。'20年に巨人からブルージェイズに移籍。コロナ禍の影響もあり、わずか1年のメジャー挑戦となった。そのため、「元メジャーリーガー」とは名乗らないようにしているという。

「コロナ禍のため、球場とホテルの行き来しかできず、食事は毎日、ランチボックスに入ったブリトー(肉や豆などを包んだ薄焼きパン)でした。誰かとしゃべる機会もほとんどなく、ホテルでテレビをつけても英語しかやっていない。正直、その環境が僕には無理でした。『根性がない』と言われるかもしれませんが、踏ん張れる適応能力は僕にはありませんでした」

【後編を読む】メジャーで活躍する村上宗隆の「ほんとうの英語の実力」とは…仲の良いチームメイトとの「勉強方法」がわかった

「週刊現代」2026年5月25日号より

【つづきを読む】メジャーで活躍する村上宗隆の「ほんとうの英語の実力」とは…仲の良いチームメイトとの「勉強方法」がわかった