巨体を突き動かす6.6L V8 ブリストル412 プロトタイプ(2) 量産仕様以上の主張 経営者へ似た豪快な性格
量産仕様以上の主張を放つプロトタイプ
ブリストル・カーズが、オープン・グランドツアラー市場へ挑んだ判断は、懸命なものだったと思う。経営を率いたトニー・クルック氏は、一定のニーズが有ると睨んでいた。
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当時の英国には、ジェンセン・インターセプターやロールス・ロイス・コーニッシュといった、上級モデルが複数存在していた。クライスラー由来の6.6L V型8気筒エンジンを積んだ412にも、チャンスはあった。

ブリストル412(プロトタイプ/1973年/英国仕様) ジャック・ハリソン(Jack Harrison)
今回のプロトタイプは、ボンネットの先端がより垂直に造形されており、量産仕様以上の主張を放つ。初期の提案から短縮されたといっても、全長は4940mmもある。オリジナルのデザインは、どんな姿だったのか興味も掻き立てられるが。
412用のボディは、ザガートの工場で98台か99台分が組み立てられ、塗装されてからブリストルへ届けられた。段差の付いたサイドの処理などへ、ランチア・ベータ・スパイダーやランドローバー・レンジローバーなどの影響を見て取れる。
1000時間の作業を経て塗装されたボディ
幾度もの転売を経て、プロトタイプの412をジェームズ・キャラダイン氏が購入したのは、2002年末。その時点で、ボディはレッドからブラックへ塗り替わっていたという。
彼は根っからのブリストル・マニアで、10代の頃、既に404を購入している。「その後に購入した405 ドロップヘッドクーペが、この412を入手するキッカケになりました。オーナーズクラブによる、南アフリカ・ツアーへの参加を理由に」

ブリストル412(プロトタイプ/1973年/英国仕様) ジャック・ハリソン(Jack Harrison)
「ツアーへ向けて405のレストアを頼んだんですが、全然間に合わなかったんです。そこで、憧れていた412を急いで探しました。以来、素晴らしい時間を過ごしています」
「プロトタイプという点に惹かれたんです。2008年には、専門家のアンドリュー・ミッチェルさんへレストアを依頼しています。当初の状態は褒められたものではなく、約4年間、1000時間の作業を経てから塗装されました」。キャラダインが振り返る。
テーラードスーツの裏地のように派手な内装
412は、典型的な美しいフォルムではないかもしれない。しかし、クロームメッキのロールオーバーバーとエイボン・ホイールで飾った姿は、筆者を魅了する。ガンメタリックの塗装も、落ち着いていて好ましい。状態の良さが、陽光を受けて強調される。
インテリアは、いかにもブリストル。マスタード・イエローのレザーが、ボディと見事な対比を生む。シックなテーラードスーツの、裏地のように。前後の席へ大人2名がゆったり座れ、ルーフパネルとリアのソフトトップを開けば、一層優雅に過ごせる。

ブリストル412(プロトタイプ/1973年/英国仕様) ジャック・ハリソン(Jack Harrison)
ダッシュボードはクラシカルなデザインだが、ステアリングホイールはスポーティな3スポーク。ブリストルのロゴが、誇らしい。
豪快さをなだめたクルージングが気持いい
6.6L V8エンジンが轟音を放ちつつ、大きなボディを軽々と突き動かす。太いトルクは、3速ATとの相性も良い。扁平率70のミシュラン・タイヤが、路面の凹凸を吸収する。
ステアリングコラムに伝わる細かな揺れは、シャシー剛性の不足によるものだろう。量産版では、補強が施されている。パワーアシストはZF社製で、切り始めはやや曖昧だが、ステアリングホイールは軽く操れ、レシオもスロー過ぎず直感的に導ける。

ブリストル412(プロトタイプ/1973年/英国仕様) ジャック・ハリソン(Jack Harrison)
フロントノーズは素早く反応するものの、気張らずともボディロールは大きい。急発進を試みると、テールが大きく沈み込む。意欲的に速度は上昇し、あっという間に一般道の制限速度へ。リアのリジットアクスルは、しっかりトルクを受け止める。
豪快さをなだめつつ、春風を受けながらのクルージングが気持いい。ブレーキはもう少し効きが強くて良いが、許容範囲。100km/h時の回転数は1900rpm程度で、クリーミーなサウンドに包まれながら、穏やかに流れる景色を楽しめる。
トニー・クルック氏と似た性格の412
ブリストル・カーズを率いたトニー・クルック氏と、412の性格は似ているように思う。工場で主任マネージャーを務めた、ジェフ・マーシュ氏が振り返る。「25年間も仕事を与えてくれたんです。厳しくも公平な人でした。自分は好きでしたよ」
最終的に603を名乗る次期モデルまでの、つなぎ役だった412。クラシックカーとなった今、類まれな存在感でファンを魅了する。快晴の春に運転すれば、一層惹き込まれる。

ブリストル412(プロトタイプ/1973年/英国仕様) ジャック・ハリソン(Jack Harrison)
協力:ジェームズ・キャラダイン氏、ジェフ・マーシュ氏、ジョージ・ホワイト氏、コッツウォルド空港
ブリストル412(1975〜1982年/英国仕様)のスペック
英国価格:1万4584ポンド(新車時)/4万5000ポンド(約945万円)以下(現在)
生産数:61台
全長:4940mm
全幅:1770mm
全高:1435mm
最高速度:225km/h(予想)
0-97km/h加速:7.4秒
燃費:4.6km/L(予想)
CO2排出量:−g/km
車両重量:1714kg
パワートレイン:V型8気筒6556cc 自然吸気 OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:263ps/4800rpm
最大トルク:56.5kg-m/3200rpm
ギアボックス:3速オートマティック/後輪駆動

ブリストル412(プロトタイプ/1973年/英国仕様) ジャック・ハリソン(Jack Harrison)
