果たして混乱は起きるのか

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 5月15日、マクドナルド(以下、マック)のハッピーセットに、人気キャラクター「ちいかわ」とコラボした玩具が登場した。

 1年前の5月16日にも、やはりハッピーセットに「ちいかわ」のコラボ玩具が登場したが、このときマックは個数制限を設けつつ、転売や営利目的の購入を遠慮するように注意喚起していた。

 ところが、発売日当日から転売目的と思しき客(以下、転売ヤー)が殺到。ハッピーセットを買い占める光景が各地で見られ、それと合わせて、食べることなく放置されたバーガーやポテトなどの画像がSNSで拡散された。結果、「転売ヤーのせいで買えなかった」「食べ物を粗末にするな」と大炎上してしまった。批判は転売ヤーだけでなくマックにも集中。マックが謝罪文を発表する事態にまで発展した

 そのため、今年、マックはフリマサイトの「メルカリ」と協力し、今回の玩具を“一定期間は出品を禁止する”ことを告知、事前に多くのメディアで宣伝した。この発表に対し、SNS上では「他のフリマサイトなら売れる」「対策になっていない」などの批判が相次いでいた。では、実際の現場はどうなったのだろうか。15日朝、都内のマックを取材した。

果たして混乱は起きるのか

【取材・文=宮原多可志】

【わァ…ぁ…】かわいすぎて滅!「ちいかわハッピーセット」発売日当日のマクドナルドを訪ねてみた一部始終

朝から店に行ってみると……

 筆者は当日に都内で取材の予定があったので、午前7時頃、通り道にあるマックに立ち寄ってみることにした。選んだのは地下鉄日比谷線の秋葉原駅、昭和通り改札口を出てすぐの「秋葉原昭和通り店」。さて、どれだけ並んでいるのか……と思って行ってみたが、なんと誰も並んでいない。えっ、今日は発売日だよね、とカレンダーアプリを確認してしまったほどである。

 マックが転売ヤー対策として講じたのは、事前にアプリをスマホにダウンロードし、その画面に表示される数量限定のクーポンを使って購入するというシステムである。筆者は普段からマックのヘビーユーザーなので、アプリはダウンロード済みだ。画面にあるQRコードをレジで提示すると、ものの1分で2個購入できた。は、は、早い!

 他の客が購入する様子を観察してみると、アプリをおそらく初めて使うのか、画面を出すのに戸惑っている人がいるくらいだった。前回(昨年)は埼玉県内のマックでも大勢の客が押し寄せた店内には殺伐とした空気が漂い、店員に笑顔が見られず、キッチン内は戦場のようであったが、今回は余裕があるように思えた。マックの対策は成功したと言っても良いのではないだろうか。

 店内を見渡すと、ちいかわの玩具をテーブルに広げている人は見当たらず、サラリーマンがコーヒー片手に黙々とスマホをいじったり、パソコンで書類整理をしている姿が見られた。いたって平和であり、普段のマックの日常と変わらない光景だ。なお、秋葉原駅周辺には他にもマックがあるので行ってみたが、列ができている店は皆無だった。

初日の対策はおおむね成功か

 もっとも、このレポートは15日早朝の様子を書いているので、昼時になるにつれて混雑が増す可能性もある。また、16日は土曜日なので、ハッピーセットが本来ターゲットにしている子供が休日になるため、ドライブスルーなどが混雑する可能性もあるので、予断を許さない状況であるのは間違いない。

 とはいえ、SNSで購入者の投稿を見てみると、「あっさり買えた」「混雑は見られなかった」という報告も多く、お目当ての玩具をゲットして喜んでいる人が見られた。前回は早朝から列ができている店舗が各地にあったことを考えると、秋葉原であっさり買える状況なのであれば、初日の対策は一定の成果を収めたと言ってよさそうである。

 混雑が起きなかった要因を分析してみよう。おもちゃがシンプルな人形であり、前回と比べたらそれほど凝った内容ではなかったこと。「ちいかわ」のブームがかつてと比べたら落ち着いたこと。マックが数量を十分に用意したこと。メディアを通じて宣伝を入念に行ったこと。アプリを通した購入方法にしたこと……などが考えられる。

 焦点となった転売ヤー対策はどうだろう。筆者は転売ヤーと思わしき人を店頭で見かけなかったが、「メルカリ」以外のフリマサイトを見てみると、午前7時43分の時点では4個セット2200円前後でしっかりと売れており、玩具単体が720円で売れている例もあった。

 筆者が買った「エッグマックマフィン」のハッピーセットは540円なので、フリマサイトの利用手数料などを引くと、転売したところでほとんど利益は出ない計算になる。それでも、ハンバーガーが“ほぼタダ”で食べられるというメリットはあるのかもしれないが。転売ヤーを減らすという目的も、(現時点では)達成できたといえるのではないだろうか。

マックがない地域の需要を取り込む転売ヤー

 そもそも、なぜ転売が起きるのか。その理由はシンプルで“需要があるため”である。とりわけ、今回の玩具のような限定グッズは、地方など入手難易度が高い地域に住む人にとっては困った存在である。東京ならマックはあらゆる駅前にあるイメージだが、自動車を2〜3時間ほど走らせないと店がない地域も普通にある。

 以前に「デイリー新潮」で報じたように、秋田県の地方都市・湯沢市には今年初めてマックが出店する。それだけで市民全体を巻き込むような大ニュースになり、県内最大手の新聞「秋田魁新報」が大々的に報じ、「(地元出身の)菅義偉総理誕生以来の衝撃」と報じたサイトまであったくらいである。マックはどこにでもあるチェーン店ではないのだ。

 限定グッズを転売屋から買う人が多いのは、そういった“マック難民”といえる地域の需要が一定数あるためだと思われる。また、「グッズを転売すれば、実質タダでハンバーガーが食べられる」という需要も一定数あるようだ。浅ましい気がするものの、物価高が続く現代においては、理解できなくはない気持ちであろう。

マックのグッズは質が高くて、安い

 マックのハッピーセットの玩具は、ターゲット層である子供だけではなく、一般の推し活層からも注目される。それは、グッズの完成度が高いためである。アニメショップなどが販売するグッズは、単に絵をアクリルの板にプリントしただけのものが多い。言ってしまえば手抜きでしかないのだが、そのくせに高いのである。

 ところが、そこはさすがマックである。オリジナルでデザインが起こされ、触り心地もよく、エンタメ性も考え抜かれている。創意工夫されたグッズが多いうえ、安い。完成度が高くて安いのであれば、推し活層が欲しがってしまうというのは当然ではないだろうか。

 筆者の要望であるが、アニメショップはもう少し気合いを入れて、質の高いグッズを作ってほしいものである。それでいて、たびたび需要予測を読み違えてグッズを枯渇させてしまい、炎上騒動を起こしているのもアニメショップである。マックの企業努力を見習ってほしいものだ。

ライター・宮原多可志

デイリー新潮編集部