俺のほうが「上」だったのに…妻の昇進祝いでケーキを囲むはずが、能面の夫。世帯年収2,000万円超・40代共働き夫婦「収入逆転」で忍び寄る危機
世帯年収2,000万円を超え、タワーマンションで何不自由なく暮らしていた40代の共働き夫婦。しかし、夫の転職を発端に、円満だったはずの夫婦関係に冷たい風が吹き始めます。夫が放った一言に、妻が感じた絶望とは?
妻の昇進で、夫婦の収入が逆転
「うちの人、全然笑わなくなったんですよね」
そう話すのは、絵里さん(42歳・仮名)。都内の湾岸エリアにあるタワーマンションを購入し、夫の洋介さん(44歳・仮名)と小学生の娘と3人で暮らしています。
共働きで家計を支え合い、子育ても分担する。夫婦仲も悪くない。少なくとも、絵里さんはそう思っていました。
変化が起きたきっかけは、洋介さんの転職でした。2年ほど前、洋介さんは年収アップを目指して大手日系企業から新進気鋭の外資系企業に転職。ところが、新しい職場は成果主義が厳しく、思うように結果が出ません。1年後には部署異動となり、年収は約1,250万円から約900万円まで下がりました。
一方、絵里さんは長年担当してきた大型案件が評価され、管理職へ昇進。その直前に、時短勤務からフル出社へ切り替えていたこともあり、年収は一気に300万円超アップの約1,100万円へ。ここで、夫婦の収入が逆転しました。
「私は、家計全体で考えればいいと思っていたんです。どちらが多く稼ぐかなんて、夫婦には関係ないじゃないですか。だって、彼の代わりに私が稼げなければ、この家に住み続けることだって難しいんですよ」
けれど、そう考えていたのは「自分だけだった」と気づいたのです。
「すごいよな。もう俺いらないじゃん」
絵里さんの昇進が決まった翌日のこと。 絵里さんは、小さなケーキを買って帰りました。家族でささやかに祝えたらと思ったのです。
しかし、ソファに座ったままの洋介さんは、テレビから目を離さずこう言いました。
「すごいよな。もう俺いらないじゃん」
冗談のようでいて、顔はまったく笑っていませんでした。その後、以前はよくしていた仕事の話をしなくなり、夕食時も無言が増えました。
絵里さんは気づいたといいます。問題は収入そのものではなく、夫婦の“前提”が崩れたことだったのではないかと。
2人は対等なパートナーだと思っていました。けれど、その土台のどこかに、洋介さん自身も意識していなかった感覚が潜んでいたのかもしれません。
「夫のほうが妻より上」
「自分が家計を引っ張る側」
そんな無意識の役割意識です。 普段は表面化しなくても、夫の収入が高いうちは問題になりません。しかし転職失敗や昇進などで立場が逆転したとき、その価値観が一気にあらわになったのです。
「どちらが上か」という発想を手放す
絵里さんは静かに言います。
「私たちは対等だと思っていたのに、彼はそう思っていなかったんだなと。『私が下にいたほうがよかった』と思っていたのは、態度を見れば明らか。それがとてもショックでした」
厚生労働省の「賃金構造基本統計調査(令和7年)」では、女性の月額賃金(フルタイム)は28万5,900円。男性を100とした場合の女性賃金は76.6で、比較可能な1976年以降で最も格差が小さくなりました。また、女性の賃金上昇率は3.9%と男性の2.8%を上回っています。
こうしたデータからも、女性の賃金が上昇している事実がわかります。女性の管理職登用も進み、夫婦の収入逆転もいまや珍しいことではありません。
また、人生は長く、その間に働き方も健康状態も変わります。ある時期は夫が支え、別の時期は妻が支える。育児で一方がセーブする時期もあれば、介護で働けなくなることもあるでしょう。そのたびに優劣を競っていては、夫婦は消耗するだけです。
結婚時の力関係が、そのまま続く時代ではない。だからこそ必要なのは、「どちらが上か」という発想を手放すことです。
絵里さんは、いまだに悩み続けています。
「内心、小さい男だなとは思います(苦笑)。でも、子どもの父親として、いいところもいっぱいあるんです。私は元のように話せる関係に戻りたい。でも、そのために私が今のポジションを手放すのか? それも違うと思うんですよね……」
肩書きや年収が変わっても協力して歩んでいける――そんな2人でなければ、夫婦の関係は長続きはしないのかもしれません。
