こちらは、ハッブル宇宙望遠鏡が観測した渦巻銀河「NGC 3137」。ポンプ座の方向、地球から約5300万光年先にあります。


【▲ ハッブル宇宙望遠鏡が観測した渦巻銀河「NGC 3137」(Credit: ESA/Hubble & NASA, D. Thilker and the PHANGS-HST Team)】

NGC 3137は地球に対して大きく傾いた角度で見えています。緩やかに広がる羽毛のような渦巻構造が広がる円盤部には、青く輝く若い星々が集まった星団や、誕生したばかりの星を包む電離水素領域(HII領域※)が多数点在しており、まるで宝石をちりばめたような美しさです。


また、細かな塵(ダスト)の雲に囲まれた輝く中心領域には、太陽の約6000万倍の質量を持つ超大質量ブラックホール(超巨大ブラックホール)が存在するとみられています。


※…若い大質量星から放射された紫外線によって水素ガスが電離し、赤い光を放っている領域のこと。


局所銀河群とよく似た集団に属する銀河

天文学者たちがNGC 3137に注目する理由のひとつは、この銀河が属する環境にあります。


ESA(ヨーロッパ宇宙機関)によると、NGC 3137は「NGC 3175銀河群」と呼ばれる銀河の集まりに属していますが、この銀河群は天の川銀河が属する「局所銀河群(局部銀河群)」によく似ていると考えられています。


たとえば、局所銀河群には天の川銀河とアンドロメダ銀河(M31)という2つの大きな渦巻銀河が存在します。NGC 3175銀河群にも同じように、NGC 3137と「NGC 3175」という2つの大きな渦巻銀河が含まれています。


さらに、どちらの銀河群にも小さな矮小銀河が数多く存在しています。NGC 3175銀河群の矮小銀河が正確にいくつ存在するのかはまだわかっていませんが、すでに500以上の候補が発見されているといいます。このようなNGC 3175銀河群を研究することで、天文学者は天の川銀河とその周辺の力学について学ぼうとしています。


観測データが解き明かす星々の営み

ハッブル宇宙望遠鏡によるNGC 3137の観測は、近傍宇宙の銀河を対象とした観測プロジェクト「PHANGS(Physics at High Angular resolution in Nearby GalaxieS)」の一環として実施されました。


ハッブル宇宙望遠鏡をはじめ、チリの電波望遠鏡群ALMA(アルマ望遠鏡)、ESO(ヨーロッパ南天天文台)が運営するパラナル天文台のVLT(超大型望遠鏡)、それにジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡も参加するこのプロジェクトでは、さまざまな波長の電磁波を使った高解像度の観測が数年にわたって行われています。


複数の強力な望遠鏡の連携によって集められたデータは、星の誕生から死に至るサイクルや、初期に成長した古い星々の集団の歴史を紐解くための貴重な手がかりを提供しています。


冒頭の画像はESA/Hubbleから2026年4月30日付で公開されています。


 


文/ソラノサキ 編集/sorae編集部


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