ニュースに心がザワつくなら。凄腕書店員が薦める【気持ちを切り替えてくれる本6選】

今月のお客様のご依頼は……
悲しいニュースを見ると、気持ちがざわざわします。本を読んでこの気持ちを切り替えたいです。
今回の選書担当

書店員芸人 カモシダせぶんさん
芸人活動と並行し、2つの書店に勤める現役書店員。9 月19日には初小説『探偵はパシられる』(PHP研究所)発売予定。
公式X:@kamo_books

「いか文庫」店主 粕川ゆきさん
書店勤務のかたわら、店舗も商品もない「エア本屋」・いか文庫を発足。リアル書店での選書やイベントを通じ、本との出会いを提供している。
紹介する本 一覧
書店員芸人 カモシダせぶんさん
おふろだいすき高宮麻綾の引継書はい! こちら子ども記者相談室デス!「いか文庫」店主 粕川ゆきさん
ひらやすみ「要するに」って言わないで 本当の自分の思いに気づくとラクになるさよならのあとで書店員芸人 カモシダせぶんさん
おすすめ3選
お風呂×読書で気持ちをリフレッシュ

おふろだいすき/
作:松岡享子 絵:林 明子 福音館書店 1430円
いやなことがあったとき、僕は湯ぶねにつかります。アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」で「風呂は命の洗濯よ」というセリフがあるように、かなりリフレッシュできるんです。この絵本は主人公がお風呂に入ると、なぜか湯ぶねが海とつながっていて……という設定。ペンギンや亀、果てはくじらも浴室に登場します。洗い場も〈超空間〉になっているため狭くなく、みな楽しそう。『不思議の国のアリス』のようなトリップ感です。私事ですがこの本は、昨年亡くなった同期の芸人が好きだった作品。本当に悲しかったですが、お風呂に入ったらこの本のことを思い出し、そいつの分もがんばろうと心から思えました。ぜひ本書を読み、いつもよりゆっくり湯ぶねにつかってみてください。
お風呂が大好きな「ぼく」。いつものように、あひるのプッカといっしょにお風呂に入って体を洗っていると、そこに次々と生きものたちが現れて――。
スカッとする物語でもやもやを消しちゃえ!

高宮麻綾の引継書/
著:城戸川りょう 文藝春秋 1760円
いろんなニュースに触れているとモヤモヤしちゃうことありますよね……。そんなときに読みたい小説は、やっぱりスカッとするもの! そこで第二の「半沢直樹」になりそうなこちらをおすすめ。主人公の高宮麻綾は、食品原料の専門商社でバリバリ働く女性。自信のある社内コンテストで優勝して出世コースに……と思いきや、過去に起きたある「事故」を理由にすべてがオジャンに。理不尽なリスク回避に途方に暮れていたものの、彼女はそれが作為的に起こされた「事件」だったのではと疑いはじめます。もし事故でなければ再び彼女に栄誉が。果たして真実は? 麻綾と会社はどうなるのか! 竹を割ったような快活な主人公に、あなたの陰鬱とした気持ちも吹き飛ばされます。
著者のデビュー作となるビジネス×痛快ミステリー。新規事業を理不尽にほごにされた怒れる主人公·高宮麻綾は、社内である〈引き継ぎ書〉を見つけ――。
子どもならではの意見にハッと目が覚める

はい! こちら子ども記者相談室デス!/
著:かめおか子ども新聞 イラスト:ヨシタケシンスケ 新潮社 1320円
大人になるにつれ、世の中のいやなところがわかってきますし、それもしかたないかと諦めの目で見てしまいます。そんなわれわれ大人の目を覚まし、スッキリさせてくれるのがこの一冊。有名な「全国こども電話相談室」は子どもの質問に大人が答えますが、こちらはその逆。「大人」が京都·亀岡市の「子ども」記者に相談する、「かめおか子ども新聞」の人気コーナーをまとめたものなんです。現役の小中学生が答えるのですが、その切れ味がすごい。子どもだからこその辛辣さと物言い。だけどそれって、いやなことに対して「しかたないか」の目線がないからこそ言えること。生意気さもほほえましく、笑えて、ハッとさせられて、読んだ自分も純粋な思考に戻れますよ。
月刊紙「かめおか子ども新聞」の大人気コーナーを書籍化。「息子にクソババアと言われた」「死ぬのが怖い」など、大人の悩みに子どもがストレートに回答!
「いか文庫」店主 粕川ゆきさん
おすすめ3選
世界平和の種が何気ない日常の中に

ひらやすみ/
著:真造圭伍 小学館 各770円
東京·阿佐ケ谷の平屋に住む従いとこ兄と従いとこ妹が、バイトや大学に行き、友達と 遊んで、帰ってきておいしいごはんを食べて……という物語。でも、ただのほのぼの日常マンガなわけじゃないんです。だってだれだって日々の喜怒哀楽に、うわー! って叫びたくなることがある。だからこそ、作中の何気ないエピソードやセリフが心に響くんです。心に置いておきたい従兄のセリフがあります。「くよくよ考えたってしょうがないじゃん」。少し突き放すようなひと言でもありますが、なんだかフッと心が軽くなります。頭の中が下向きの気持ちで満たされてしまったときにぜひ。日常を愛することが、世界平和につながるんじゃないかとさえ思えてくる、やさしい光が差し込むような作品です。
29 歳でフリーターの生田ヒロトと、美大に通う18 歳のいとこ·なつみちゃん。譲り受けた平屋で暮らす二人の日々を描く、2025 年に実写ドラマ化もされた話題作。
心と体が発する声にじっくりと向き合う

「要するに」って言わないで 本当の自分の思いに気づくとラクになる/
著:尹 雄大 亜紀書房 1980円
日々流れてくる大量の情報や人の意見に触れて、自分の本心が迷子になること、ありませんか。そんなの毎日だよ……とへこんでいた私が最近出会ったのは、「自分自身と対話をするセルフケア」について語られたこの本です。簡潔で論理的で、効率がよくて……そういう客観的な基準で理解しようとせず、自分の心と体から発せられる声にただ耳を傾ける。体験から学び、自分が心地よいと思うことを第一にしてみる。それが自分をいたわることになり、無理のある共感や、「こうあるべき」から遠ざけてくれる。読んでいるうちに、頭も体も心も柔らかくなっていくような感覚が生まれました。解決法を得るのではなく、自分のありのままを取り戻すための一冊です。
「要するに」「つまり」と、簡潔にうまく話すことが求められる現代のコミュニケーション。簡潔には伝えられない心の声を「要することなく」拾い上げ、自分と向き合う一冊。
「別れ」の深い悲しみに心がおおわれたら

さよならのあとで/
詩:ヘンリー·スコット·ホランド 絵:高橋和枝 夏葉社 1430円
「死はなんでもないものです。」――ハッとする一文で始まるこの本は、英国教会の神学者であるヘンリー·スコット·ホランドが作った詩一編のみを、やさしく穏やかなイラストとともに収めた一冊です。海外では葬儀や追悼式などで読まれる詩だそうで、出版されたかたも、大切な人との死別の悲しみに向き合うなかでめぐりあったのだそう。この詩は死者の立場から語られていくのですが、冒頭の一文のあと、こう続きます。「私はただ となりの部屋にそっと移っただけ。」「私は今でも私のまま」。悲しみを抱えたときどうするのがいいのか、それはきっと人によって違います。ただこの本が傍らにあれば、向き合うことが少し、怖くなくなるような気がします。
ヘンリー·スコット·ホランドによる42 行のただ一編の詩を収めた、死別の悲しみを癒やす一冊。絵本作家·高橋和枝が描く18 点のイラストが詩に寄り添う。
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