日本のインフラ問題を深刻化させないために重要な「点検の世界」
日本はこのまま崩れ去ってしまうのか? 道路、鉄道、水道、インフラ、橋……なぜ全国各地で次々に事故が起きるのか? お金も人も足りない……打つ手はあるのか?
注目の新刊『日本のインフラ危機』では、私たちの暮らしを揺るがす「大問題の正体」を豊富なデータと事例から解き明かす。
(本記事は、岩城一郎『日本のインフラ危機』の一部を抜粋・編集しています)
点検のさまざまな世界
点検をとってみてもさまざまな種類があります。具体的には、初期点検、日常点検、定期点検、臨時点検、緊急点検です。
このうち初期点検は、最初におこなう点検を意味し、一般には構造物が出来上がった時点での情報を収集することを指します。とはいえ、昔に造られた構造物の場合、出来上がった時点で初期点検をおこなっていない場合もありますので、すでに供用は始まっていても第1回目の点検のことを初期点検とします。
日常点検は、パトロールなど日常の巡回で点検が可能な範囲について、構造物の状態の変化の有無を把握することを目的として実施するものです。目視調査(遠望からでも可)や車を運転しながらの車上感覚を主体としたものです。
定期点検は、たとえば2年に1回や5年に1回といったサイクルで、構造物全体における劣化、損傷の有無やその程度を把握するためのもので、人間でいうところの定期の健康診断や人間ドックに相当するものです。構造物全体に対し、近接目視(構造物表面に手で触れるくらいまで近づいて目で見る行為)やたたき(構造物をハンマーでたたき、空洞などがないか調査する行為)をおこないます。
臨時点検は、日常点検や定期点検の結果、維持管理計画の想定と異なる変状が生じている構造物を見つけた際や、災害や事故により大きな損傷を受けた構造物を対象として、構造物の性能を評価して対策の要否を判定するために実施します。
緊急点検は、たとえば海外などで落橋事故などが生じた場合に、日本における類似の構造物を対象として、同種の問題が生じる可能性を有する箇所の性能を評価して対策の要否を判定するために実施します。
点検では、構造物の状態について必要な情報を得るために調査をおこないます。調査項目は点検の種類および目的に応じて選定。その方法も項目に関する情報が得られるものを選びます。その中には、非破壊試験と呼ばれるものもあります。
これは人間でいうところの、X線や超音波で肺や臓器を見るようなイメージです。すなわち、人の身体を傷つけずに内部の状態を診る行為で、最近ではコンクリート構造物もX線や電磁波などによりコンクリート内部の状況がわかるようになってきました。
そして、時には微破壊試験といって構造物から少量の試料を採取し、専門的な分析をおこなうことでより詳細な情報を得ることもあります。人間で言えば血液を採取したり、場合によっては細胞を採取し、良性か悪性かを判断するようなものです。
点検と似ているものに、「モニタリング」があります。対象物の状態を継続または定期的に観察・記録することです。最近ではインフラについてモニタリングする機会が増えてきています。すなわち、構造物の性能を直接的に反映している項目について、適切な方法で常時観察するというものです。
私の研究室でも高速道路のコンクリート床版の下面に光ファイバセンサを取り付け、車の往来に伴う振動を常時計測する研究をおこなっています。モニタリングの結果、いつどのくらいの大きさの車が走っているか、床版にどの程度のダメージが蓄積しているかといったことが明らかになりつつあります。
さらに、「日本はこのまま崩れ去ってしまうのか…意外と気づかない「インフラ危機」本当の実態」」では、いま大問題として迫っているインフラ老朽化問題をひきつづき見ていく。
