シェアサイクルの“黒船”世界最大手Lime 日本参入まもなく2年で見えた「3つの拡大戦略」
シェアサイクルは、「デジタル管理された貸自転車」と言い換えてもいい。ポイントは、デジタル管理だ。今どこで借りられるのか、バッテリーの残量はどの程度か。それらがネットで、一目で把握できる利便性が支持されている。
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実はこのシェアサイクル、現在では電車やバスと同じ「公共交通機関」の位置づけ。しかし、ビジネスとしての運営はかなり大変だ。
まず、ポート(専用駐輪場)を確保する必要がある。朝晩や平日、休日の人の流れを緻密に読み解き、最適な場所と台数を配置する運用能力が求められる。
2025年末時点での国内主要各社のポート数予測を見ると、LUUP(ループ)が約1万4200カ所、ソフトバンク系のハローサイクリング(OpenStreet)が約1万1300カ所、ドコモ・バイクシェアが約4800カ所。公共交通機関であり日本企業が市場を牽引してきた。
そこに24年、米国のLime(ライム)が本格参入した。17年創業の世界最大手のシェアサイクル事業者だ。業界にとって「現代の黒船」とも呼べる存在だろう。
先行する日本勢は好立地を確保済みだ。
さらに、日本は成熟社会であり、地域のルールやマナーに合わせた運用を行わなければ適合できない。このビジネスは、地域貢献などのウエートが非常に高いからだ。
参入後のLimeの戦略で特徴的なのが、「ハローサイクリングとの相互利用連携」、「ジオフェンシング(仮想的な境界線を引く技術)の導入」、そして「電動キックボードから電動シートボードへの集約」の3点だ。
「相互利用連携」は、国土交通省のデータによれば、導入自治体は22年度末時点で305都市。日本には約800の市があることを考えると、まだ拡大の余地は十分にある。
が、収支がとりやすいエリアばかりではないため、効率的に拡大する必要がある。
25年末時点でLimeの自社ポートは約1000カ所。他社との連携の有無で展開のスピードは変わる。この手法は同社にとって海外でも実績がある戦略だ。
「ジオフェンシング」は、一種の「結界」のような技術だ。進入禁止エリアに入ると警告音が鳴り、車両が自動的に減速・停止する。現在、首都高速の入り口などに設定されており、導入には東京都や警視庁がサポートに付いた。公共交通としての社会適応を高める技術と言える。
最後の、電動シートボードへの集約は興味深い。例えば仏パリでは、かつて名物だった電動キックボードが、事故の多発を背景に23年9月1日に禁止された。
逆に日本では、同年7月1日に道交法が改正され、緩和方向へ動いた。区分は「特定小型原動機付自転車」となり、16歳以上は免許不要、ヘルメットは努力義務。車道に加え歩道(条件付き)も走れるようになった。だが、事故は増加傾向にある。フランスが禁止した同時期になぜ、日本が緩和したのかは不明だ。
こうした中、Limeはキックボードをやめ、座席付きの「シートボード」に一本化した。簡易的な座席があるだけで、走行時の安定感は格段に増す。
シェアサイクルは、今後も時間をかけて「公共交通」らしく整っていくはずだ。多角的な知見を持つLimeの存在は、日本のモビリティーの未来にとって役立つだろう。
(多賀一晃/ライター)
