厚生労働省外観

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金融機関は預金者が認知症であるとわかると、意思確認ができない状態と判断し口座を凍結する。たとえ預金者の委任状を持っている家族であっても預金を引き出すことはできない。そうした事態に対処すべく2000年に始まったのが「成年後見制度」だ。

「後見人」は、認知症や知的障害など判断能力が不十分な人の財産管理や介護契約などをサポートする。成年後見制度を見直す民法改正案が国会に提出された。改正の理由は、たびたびトラブルが起きていたからだ。

本人が将来を見据えて自分のために選んでおくのが「任意後見人」、家族や自治体などが家庭裁判所へ申し立てを行って選任されるのが「法定後見人」だ。

例えば、判断力が低下した人で身寄りがなかったり、家族による虐待が疑われたりする場合、自治体は家裁に申し立てを行うが、ここ数年、高齢者を対象に、後見人をつける手続きを強行する自治体があった。

そのため、判断力があるのに勝手に申し立てられたなどと本人や家族が訴えたり、家族などから「親に会わせてもらえない」「後見人がいい加減な仕事している」などと不満の声が上がっていた。

さらに酷いのは、後見人となった専門職(弁護士、司法書士など)や親族が不正を働くケースもあり、最高裁判所の調査では、2020年だけでも186件、約7.9億円の被害が報告されている。不正とは、財産の横領や使い込みのことだ。

「後見の杜」は報酬目的を指摘

どうしてこのような制度の悪用が頻発したのか。テレビ番組の取材に対し一般社団法人「後見の杜」では、報酬目的による弁護士の悪用を指摘する。東京家庭裁判所の資料によれば、後見人の報酬額は後見されている人の資産で決まることになっているという。さらに、不動産を売却すると付加報酬(ボーナス)が支払われるので、必要がなくても売却へと動く後見人がいるようだ。

現行制度では、いったん選任されると利用者の判断能力が回復するか亡くなるまで事実上の「終身制」だったが、今回の改正案では、必要なくなれば利用を終了できるよう改められる。これまでは横領などの不正行為がない限り後見人は解任されず、報酬も本人が死亡するまで払い続けなければならなかった。

厚生労働省の推計によると、認知症の高齢者は2022年に約443万人、軽度認知障害の高齢者は約559万人おり、今後も増加することが予想される。制度が対象者本人にとって実効性のあるものとなるよう期待されている。

文/横山渉 内外タイムス