「義兄さんが亡くなって僕自身もショックだった。いい人でしたから。でもそれもまた運命として僕らは受け入れるしかないわけです。

理不尽ですよ、元気だったのだから。だけど受け入れるしかない。だったら妻が産んだ息子を受け入れてもいいんじゃないか。なんだかそんなふうに思ったんですよね」

◆「人として試されている」とすべてを受け入れた夫

 妻はじっと聞いていたが、彼の目をまっすぐに見た。そして「愛せる?」と尋ねた。もうすでに2年も一緒に暮らしているんだから、愛していると彼は答えた。「きみのこともね」と彼はつけ加えた。妻は号泣したという。

「娘たちと息子を比べない。それだけは自分に課しました。おねえちゃんたちがものすごくめんどうを見てくれるので、息子は早くからおしゃべりが上手。息子を見ていると、これが自分の本当の子であっても不思議じゃないなあと今は思っています。

妻に対しては許す、許さないの問題ではないと思うようになりました。妻がしてしまった行為を、今さら責めてもどうにもならないですから」

 もともと仲のよかった夫婦に亀裂は入っていないのだろうか。

「妻のほうは僕にちょっと遠慮しているところがあるかもしれませんが、もうそういうのはやめようと言いました。些細(ささい)な気持ちの変化も伝え合おうと。

過去を振り返っても何も生まれませんから。なんだかねえ……生きていくということは、自分や大切な人たちに起こったことをどううまく受け止めていくかにかかっているんじゃないかと最近、しみじみ思うんです。常に人として試されているような気がしますね」

 彼はすべてを受けとめ、受け入れた。この先、夫婦関係や親子関係がどうなるかはわからない。だがそのつど、起こったことを受け止めて受け入れていくしかないのかもしれないと彼は穏やかな笑みを浮かべた。

<文/亀山早苗>

【亀山早苗】
フリーライター。著書に『くまモン力ー人を惹きつける愛と魅力の秘密』がある。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。Twitter:@viofatalevio