「皇室の方々の素顔」に「皇居の自然」も。宮内庁インスタが「新しい距離感」で届けるSNSの魅力と舞台裏
2024年4月、宮内庁が公式Instagram(インスタグラム)を開設したニュースは、大きな話題となりました。それから2年。令和8年(2026年)3月末時点でフォロワー数は234万人に達しています。従来のホームページや報道とは一線を画し、「静かなSNS」とも評される発信の裏側にはどのような意図があるのでしょうか。伝統と現代の狭間で言葉を紡ぐ、宮内庁広報室にその舞台裏を伺いました。
【写真】「とても親しみが持てる」過去に最も反響があった皇室の方々の素顔(10枚目/全12枚)
ターゲットは「若年層を含む幅広い世代」──なぜInstagramだったのか
── 宮内庁がSNSでの発信を始めた背景には、どのような議論があったのでしょうか。
宮内庁広報室(以下、宮内庁): これまでウェブサイトを中心に情報発信を行ってまいりましたが、若年層を含む幅広い方々に、より効果的に皇室の情報をお届けするため、SNSによる発信を開始しました。
── 数あるSNSのなかで、なぜInstagramを選んだのですか?
宮内庁:若年層の利用率が高いことに加え、視覚的に分かりやすい写真・動画での投稿が中心であることを考慮しました。なお、2025年4月からはYouTubeチャンネルも開設しています。
── 若年層のフォロワーからの反響はいかがでしょうか?
宮内庁:13~34歳のフォロワー数は34.5万人(令和8年3月末時点)を超え、若年層を含む幅広い層に情報を届ける手段として機能していると考えています。引き続き、若い方を含め多くの方に関心を持って頂けるよう、工夫を重ねていきたいと思います。
自らカメラを手に「皇居の自然」「皇室に伝わる伝統」も伝える
── 宮内庁のインスタはどのような体制で運用されているのでしょうか。
宮内庁:広報室の定員は13名で、SNSはそのうち半数程度が担当しています。撮影は宮内庁の嘱託カメラマンが実施するほか、「皇居の自然」や「皇室に伝わる文化」などについては、広報室員自らカメラを手に、撮影に臨むこともあります。投稿については、広報室員が実施しています。
── 投稿される写真や動画の「見せ方」で、特に意識している点はありますか?
宮内庁:皇室の方々のご表情がはっきり伝わるような、比較的大きめのカットを選んでいます。また、フォロワー以外の方にもリーチしやすい「リール(短尺動画)」も活用しています。投稿内容に応じて、音楽の選択やカット割りなど、さまざまな方法を模索しながら投稿をしています。
── 一般的なSNSと違い、コメント欄を閉じて運用されているのが印象的です。
宮内庁:コメント欄には、宮内庁に対するご意見だけでなく、皇室の方々に関する内容も含まれ得るためです。ご意見については、公式ウェブサイトの「ご意見・ご感想フォーム」を通じていただく形をとっています。
── 文章のトーンも非常に落ち着いていて、「静かなSNS」という印象を受けます。
宮内庁:「正確な情報をタイムリーにお伝えすること」を第一に意識しています。Instagramでは即時性を活かした速やかな投稿を行い、より詳細な背景を知りたい方には公式ウェブサイトへ誘導するなど、それぞれの役割を明確に使い分けています。
「タケノコ掘り」が大反響。発信がもたらす、皇室との「新しい距離感」
── これまでの投稿のなかで、特に反響が大きかったものは何でしょうか?
宮内庁:令和6年に投稿いたしました、御料牧場でのご様子の写真や動画です。
── 天皇皇后両陛下と愛子さまのタケノコ掘りをなされるご様子が写ったものですね。リールは227万回再生、写真にはおよそ70万のいいねがつきました。
宮内庁:大変多くの反響をいただきました。また、皇居の自然や伝統行事、さらには裏方で支える職員の仕事なども発信しています。
── 今後、SNSを通して実現したい展望を教えてください。
宮内庁:皇室や日本文化に関心を持たれるきっかけは人それぞれです。今後も発信内容を工夫し、一人でも多くの方に皇室のご活動への理解を深めていただけるよう努めてまいります。
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「親しみやすさ」と「正確さ」。その両立に挑む宮内庁の姿勢には、変化し続ける時代の中で、皇室の方々のご活動やお人柄を届けようとする誠実さが感じられました。SNSという喧騒のなかで、ふと立ち止まり、皇室の歩みや日本の文化、日々の営みに触れる。そんな穏やかな時間が、これからも私たちの心にそっと寄り添い続けてくれるのかもしれません。
取材・文:石野志帆 写真:宮内庁

