子宮頸がんのリアル…漫画『コウノドリ』に寄せられた「私も同じ思いだった」の女性たちの簡単には解決できない思い

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4月9日は「子宮の日」だ。2009年に子宮頸がんを予防する日として制定された。子宮頸がんは、他のがんに比べて発症し年齢が若く、妊娠・出産を視野にライフプランを考えている世代が罹患することが多い。別名「マザーキラー」とも呼ばれている。

名作『コウノドリ』の数あるエピソードの中でも、多くの人が必読と挙げる「子宮頸がん」の試し読みとともに、子宮頸がんについて考えたい。

『コウノドリ』の伝える力

FRaUwebでは2020年10月、漫画家の鈴ノ木ユウさんのご厚意で、漫画『コウノドリ』の「子宮頸がん」エピソード218ページを期間限定でを無料試し読みを掲載した。このエピソードは、『モーニング』に2016年に掲載されたものだった。当時、日本では、HPVワクチンの副反応報道から子宮頸がんやHPVワクチンについてのメディア報道がほとんどされない時期でもあった。

ストーリーは、妊娠16週の女性が、検診で子宮頸がんと診断される。出産か母胎かという厳しい現実と選択の中で、子宮頸がんの実態やHPV(ヒトパピローマウイルス)とは何か、HPVワクチンの当時の現状についても、さまざまな立場の人たちの想いとともに、寄り添う視点で描かれている。

このエピソードを改めて掲載し、想像を超える大きな反響をいただいた。産婦人科、小児科などの医師を中心にSNSで多くの声をあげ、さらに子宮頸がんを罹患した方からも「私の経験を知ってほしい」とたくさんのコメントをいただいた。

今回は、今までいただいたみなさんの声をぜひともお伝えしたいと思う。

円錐切除術でも簡単なわけではない

「29歳のとき、ずっとサボっていた子宮頸がん検診を始めて受けました。そこで高度異形成・上皮内がんであることがわかりました。自然治癒出来る段階ではなく、子宮頸がんに進行するリスクが高いということで、子宮頸部を切り取る『円錐切除術』を行いました。不安でしたが、1泊の入院で手術は瞬く間に終了。その後結婚したのですが、3度流産しました。子どもを望んでいますが、また流産してしまうのではと思うと怖くなってしまい、今妊活をお休み中です。命が助かったので円錐切除術を受けたことを後悔はしていませんが、もっと早く子宮頸がん検診を受けておけばよかったととても後悔しています。そして、この『コウノドリ』のエピソードは共感しかありませんでした。私も異形成を放置していたら、同じことになっていたかもしれないのですから……」(35歳)

「初めて子宮頸がん検診に行ったときに、軽度異形成から中度異形成に移行しているぐらいの段階、と医師から説明がありました。初めて聞く言葉で何が何だかわりかせんでした。詳しく聞くと、がんになる手前の段階なので、そんなに心配しないで大丈夫、経過観察をしっかりしていきましょう、と言われました。その後、検索すると怖くなり、さらに、がんになったのはHPV(ヒトパピローマウイルス)に感染したことでなったと知って、彼とセックスをするのも怖くなってしまいました。先生には性行為もしても問題ないと言われても、気持ちがついて行けず、セックスレスになり別れました。中度異形成が長く続いているので、来月、円錐切除術を行うこうことになりました。子宮頸がんの手前の段階でもこんなに心の負担になるのだと実感しています」(27歳)

自分の人生が大きく変わってしまった

「30歳のときに、少し茶色っぽいおりものが出て、何だろうと思って婦人科を受診しました。先生から、もっと大きな病院に急いで行った方がいいと紹介状をいただき、大学病院で確認すると、子宮頸がんに罹患していました。子宮頸部やリンパ節を幅広く切除する広汎子宮全摘出術をできるだけ早い段階で行ったほうがいいという診断でした。実は当時、おつき合いに発展しそうな方がいました。先生にもそのことをお話しして、妊娠出来る可能性を残したいとお願いし、話し合いを重ねました。ですが、精密検査でかなり広範囲に広がっている可能性があるということで諦めざるを得ませんでした。つき合いたいと思っていた方にもがんであることを告げるのがつらくて、自分からフェイドアウトしてしまいました。現在は抗がん剤治療後の経過観察中ですが、子宮頸がんで、自分が思い描いていた人生が大きく変わってしまいました。これからどう生きていくのか考えなくてはと思っています」(33歳)

「娘が34歳のとき、子宮頸がんになりました。そろそろ妊活を始めようと、産婦人科で詳しい検査をして判明したそうです。娘は、もっときちんと子宮頸がん検診を受けて、妊活をしていたら、とずっと自分を責めていました。私はこんなに若く我が子ががんにかかってしまったことに驚き、なぜ私ではなく娘なのか、と思いました。娘は病院で子宮を残す妊孕性温存手術について話し合ったようですが、再発のリスクを考え子宮を全摘しました。娘の気持ちを思うと……。娘が子宮頸がんになって医師の話や専門書なども読みましたが、HPVワクチンで予防できるなら、娘が10代のころになぜ予防接種がなかったのだろうと、心から思いました。ワクチンを打つ・打たないは個人の自由ですが、娘のようなケースもあることをぜひとも知ってほしい。そんな思いも含めて『コウノドリ』を読んでいただきたいと思うのです」(64歳)

HPVワクチンも検診もどちらも大事

HPVワクチンの話をすると、「他のがんに比べて死亡者数が少ないのにワクチンを打つ意味があるのか」「定期的に検診をしていればワクチンをする必要はない」といった意見が必ず上がる。

2026年3月に更新された国立がんセンターのがん種別統計情報(※1)によると、子宮頸がんでの死亡者数(2024年)は2,751人。診断されたのは10,457例。確かに、乳がんなどに比べると死亡率も罹患者数も少ない。しかし、子宮頸がんの罹患率上昇は30歳ぐらいから始まる。そういった現状を考えると、治療をできたとしても子宮を失い、妊孕性を失うといった経験をする女性がいることも忘れてはいけないのだ。

しかも、子宮頸がんは数少ないワクチンで予防できるがんだ。実際にHPVワクチン接種が進むオーストラリアやイギリス、デンマークやスコットランドなどでは、ワクチン接種世代の子宮頸がん罹患率が著しく低下し、近い将来根絶するがんとして目標を掲げている。アメリカでもHPVワクチンが進んだことで、子宮頸がんの前段階の「前がん病変」の診断が約8割減少したという報告書を発表している。

日本でも2021年から各自治体でHPVワクチン接種が進んでいる。しかし、そうはいっても定期接種(全世代)の女子を見たとき2024年度対象者の前年接種率は31.6%(※2)。自治体によって差があるが、まだまだ他国に比べると低い状態が続いている。ヒトパピローマウイルスに、自分は、自分の子どもは感染しないとは決して言い切れない。だからこそ、命や自分が望む人生を選択できるためにも、ワクチン接種の選択を切り捨てないでほしいと思うのだ。

そして、もうひとつ大事なのは、検診だ。がん検診は治療できる段階でがんを発見する上でとても重要だ。子宮頸がんは20歳以上の女性を対象に、2年に1回の受診が推奨されている。しかし、2022年のがん検診受診率(国民生活基礎調査)によると、子宮頸がん検診の受診率は、43.6%と半数を切っている(※3)。イギリス、ドイツ、アメリカ、フランスなどが70%を超える検診率なのに対して、とても低いことがわかる。

また、20代に限定すると検診率はグッと下がって27%程度だ。『コウノドリ』が掲載された2016年当時は20代検診受診率は20%程度で、それに比べると若干上昇したが、10年経っても子宮頸がんの怖さを知らない人が多いのかもしれない。

※1: 国立がん研究センター がん情報サービス「がん種別統計情報 子宮頸部」

※2:ワクチンJAPAN HPV(子宮頸がん)ワクチン接種率データ「全国の累積初回接種率推移データ」

※3:国立がん研究センター がん情報サービス「がん検診受診率(国民生活基礎調査による推計値)」

鈴ノ木先生の作品への想い

HPVワクチン接種も子宮頸がん検診もなかなか伸びない日本の現状はある。そんな現状を踏まえて、鈴ノ木先生はこう話す。

「私がこのエピソードを描いたのは、2016年。当時は、国も積極的接種を控えていた時期でした。子宮頸がんのことを描きながら、私自身も何が正しいのだろうかと素朴な疑問を持っていました。現在はHPVワクチン接種勧奨へと向かい、多くの人たちのHPVワクチンへの印象も変わってきたように感じています。個人的にそれは素晴らしいことだと思っています。多くの方にHPVワクチンの正しい情報が伝わり、理解され、接種する機会が増えますし、将来的には男子への接種にもつながる。

ただ同時に、HPVワクチンが積極的勧奨となったとき、ワクチン接種を選択しない人が尊重されず、叩かれるような社会、世の中にはなって欲しくはありません。

正しい情報が伝わる中、ワクチン接種を選択する人、しない人がこの先もいるかと思います。そのとき、お互いがお互いの思いや気持ちを理解し、いたわりのある考えや距離で近い将来、子宮頸がんで苦しむ女性がいなくなる日本へと向かってくれたらと切に願っています」(鈴ノ木さん)

この作品では、子宮頸がんを罹患する当事者の本人の気持ちだけでなく、身近で寄り添う夫の気持ちも丁寧に描かれている。子宮頸がんに関する内容だけでなく、登場人物の心の機微も丁寧に描かれ、名作揃いの『コウノドリ』の中でも、心に深く残る作品だ。ぜひともこの機会に作品に触れてほしいと思う。

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