筆者私物。中敷きを抜いて形に添ってカットして使用

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こんにちは、シューフィッター佐藤靖青(旧・こまつ)です。靴の設計、リペア、フィッティングの経験と知識を生かし、革靴からスニーカーまで、知られざる靴のイロハをみなさまにお伝えしていこうと思います。
気温が上がってくると、急に気になりだすのが「靴のニオイ」です。しかも厄介なのは、「対策しているのに臭う人」が多いということ。世間にはさまざまな対策法が出回っていますが、正直に言ってしまうと、「効かないどころか逆効果」なものも少なくありません。今回は、靴のニオイ対策の“効果のほど”を、プロのシューフィッターの視点からチェックしていきます。

◆「重曹を靴や足に使う」△または×

民間伝承的に昔から唱えられている説ですが、個人的には劇的に効くとは感じません。足や靴のニオイは「菌と湿度と角質」が原因です。重曹はアルカリ性のため酸性の汗には一定の効果がありますが、菌に直接ダメージを与えるほどではありません。

たしかに汗由来のニオイは多少軽減されます。しかし、その原因である菌や角質には作用しないため、効果としては「やらないよりマシ」程度。たとえるなら、ゴミだらけの部屋に消臭スプレーをかけているようなものです。

酢やクエン酸、アルコールも似た位置づけで、重曹よりは抗菌作用がありますが、あくまで一時的なリセットにとどまります。

個人的には、足専用の制汗・除菌スプレーのほうが効果的です。ドラッグストアで手に入るもので十分で、朝、ソックスを履く前に指の間へスプレーするだけ。コスパと効果のバランスが優れています。

◆「5本指ソックスを履く」△または×

汗や雑菌は指の間にたまりやすいため、構造的には有効です。ただし、素材・サイズ・靴環境が整っていないと効果は限定的。廉価な製品はポリエステルの比率が高く、吸湿性が低いため、かえって蒸れて逆効果になることもあります。目安としては1足1000円以上を選びたいところ。

また、5本指ソックスの盲点として「靴がきつくなる」問題があります。これまでジャストだった靴に厚みが加わることで、圧迫されて血流が低下し、蒸れるという悪循環に入るケースもあります。さらに履くのが面倒で継続できない人が多いのも事実です。効く人には効きますが、万能ではありません。

◆「10円玉を靴に入れる」×

いまだにやっている方がいるのでしょうか? 私もかつて実験しましたが、効果はほぼゼロでした。理屈としては合っているんです。銅に抗菌性があるのは事実ですが、靴の中での接触面積が小さすぎて、効果が追いつきません。

脱いだ靴に複数枚入れて一晩置くと多少の効果はありますが、そもそも同じ靴を履き続けている状態が問題です。汗をかいたTシャツを連日着続けているのと同じで、根本的な解決にはなりません。

以上が「良かれと思ってやっているのに逆効果になりやすい」代表例です。ここからは、実際に効果のあった対策を紹介します。

◆足にフィットした靴を履く

「きつい」「ゆるい」「痛い」と感じる靴は、例外なくニオイの原因になります。靴のフィット感とニオイは一見関係なさそうですが、実は直結しています。

足底は、摩擦や圧迫といったストレスを受けると、発汗が増えます(Boucsein, W.『Electrodermal Activity』第2版、2012年)。特にゆるい靴は足が中で動き、角質が削れやすくなり、「ゆるいのに蒸れる」という状態が起きます。

完璧なフィットは難しくても、紐をしっかり結ぶ、タンパッドを使うといった調整だけで改善することも多いです。筆者は甲が薄いので、コロンブスのタンパッドを愛用しています。

たかがパッド1枚ですが、靴のベロの裏側に貼るのと貼らないのとでは大違い。紐を結んでもしっくりこないと感じている方はネットで買いましょう。ここまで良い品なのに、実店舗で見かけることがなかなかありません。「ゆるい靴には中敷きを入れる」という昭和の常識はいい加減、業界全体で見直してほしいものです。