たった2年で閉業… お台場・イマーシブ東京は「本当につまらなかった」のか
鳴り物入りで2024年3月にオープンしたテーマパーク「イマーシブ・フォート東京」がこの2月末で閉館した。大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパンを再建したことで名を馳せたマーケターの森岡毅氏がプロデュースしたことで話題になったこの施設、たった2年で終了としてしまうとは。よほどつまらないものだったのか。閉館間際に訪ねてみた。
【実際の写真】本当につまらなかった? 「イマーシブ東京」閉館間際の“意外な光景”
チケットは完売
東京の臨海部を走るゆりかもめの「青海」駅から徒歩1分とかからないイマーシブ・フォート東京。駅を背にするとフジテレビの社屋が見える。もともとここは「ヴィーナスフォート」という商業施設だったが、2023年に営業が終了。施設の内部がヨーロッパ風の街並みであることが売りだった。それを居抜きのまま借りて、24年3月にオープンしたのが「完全没入体験」をうたうイマーシブ・フォート東京だった。

「没入体験」と言われてもわかりにくいかもしれない。のちほど詳述するが、いわば「体験型舞台」を提供する施設。普通の芝居が舞台上の演者を観るのに対して、観客が演者と一つの空間に同居しながら作品に参加していく。
開業当初こそ話題になったが、昨年12月に運営会社が営業終了を突然発表。エンターテイメントの施設としては、あまりにあっけない2年間の営業期間だった。
本当につまらない施設だったのか。閉館まであと10日ほどの2月下旬、平日に訪問してみた。閑散と聞いたのにもかかわらず、来客数が多いように思える。
エントランスから続く廊下を進むと、中央広場がある。この広場もネットで見るとガラガラだったりしていたが、この日は席に座って飲食している人たちが多い。広場からは各アトラクション会場への入り口が見える。
公演されているアトラクションは六つほど。『ザ・シャーロック―ジェームズ・モリアーティの逆襲―』『江戸花魁奇譚』『東京リベンジャーズ イマーシブ・エスケープ』などの作品だ(時間60分〜120分、チケット大人4800円〜24800円)。
チケットはどれも完売である。
『東リベ』の世界に没入
会場から出てきた50代サラリーマンに声をかける。『東京リベンジャーズ』(『東リベ』)を没入体験してきたばかりだという。
「一回も来たことがなかったのですが、閉館すると聞き訪れてみました。人気がないとの噂だったので、チケットはいつでも予約できるだろうと思っていました。ところが1月中旬にサイトを見てみると、2月末までチケットはほぼ売り切れ。本当は『花魁』を見たかったのですが、14800円もするのに売り切れていて、残っていた『東リベ』(7800円)を選びました」
『東リベ』は全世界発行部数8000万部を超える人気漫画で、アニメ化もされている。暴走族が主人公の話だが、友情や恋愛に加えて、過去や未来を行き来するタイムリープといったSF的要素も絡んでくる。
「知人からも『東リベ』がいいと勧められました。『シャーロック』はベイカー街を再現した広い会場に50人ぐらいのキャスト(演者)がいて、あちこちで同時に事件が起きて話が進行していくので、何回もリピートしないと話の全体像がつかめない。同じようなスタイルの『花魁』ですが、少人数(32名)での参加のため、参加者はより深く物語の当事者となっていく。いずれも人気は高いものの、参加者の選択によって結末が異なるマルチエンディングなのに対して、『東リベ』はストーリーが完結していて初心者でも楽しめると言われました」
暴走族の抗争に巻き込まれ……
アトラクションの『東リベ』のストーリーは、主人公が属する「東京卍會」と敵対する暴走族との抗争に参加者も巻き込まれる。参加者が今いるビルに火災が起きて大惨劇になるという。みんなで協力して、それを防ぐというものだ。
「簡単に言うと、2時間あるのですが、演劇パートと脱出ゲームのパートに分かれています。最初に15分ぐらい注意事項があって、暴走族抗争の演劇が始まる。演劇パートが20分ぐらいかな。その後、火災を防ぐため、火災報知器やスプリンクラーを作動させるパスワードを探すといった謎解きゲームがスタート。途中で敵対組織のヤンキーに捕まると、『おっさん、何うろうろと歩き回っているんだよ』とスタート地点に戻されたりする。主人公やヒロイン役に話しかけたりもできる。途中で謎を解けた人たち、解けない人たちで分かれたりもしますが、最後に再び演劇パートがあってハッピーエンドを迎えます」
この男性はかなり楽しめたよう。
「実際、かなり面白かったです。閉業前に来られてよかったですよ。2.5次元演劇をうたうだけあって、役者の人たちは漫画から抜け出てきたよう。漫画のファンなのか、女性率が高くて8割以上でした。役者の人たちの演技もすごく上手で、施設のHPで『キャストの個人名は公表しておりませんが、著名な劇団からなどの一流のキャストが集結』しているという謳い文句も偽りなしだと思いました。ヤンキーの物語なので蹴ったり殴ったりの殺陣(たて)があるのですが、近くで見ている観客に触れないよう転がったり倒れたりしないといけない。レベルが高いと思いました」
ディズニーは入園料1万円
ついでに閉業することについても聞いてみると――。
「残念ですね。2時間で料金7800円は高いという声もあると思いますが、お芝居を見るのだと思えば、そんなものです。しかし、お芝居を見る層が来るかといえば、どうでしょうか。日本人はシャイですから、巻き込まれたくない人も多いでしょう。また、テーマパーク好きの中には受動的に楽しみたい人のほうが多いと思う。それにディズニーならば入園料約1万円で1日中楽しめる。こういうアトラクションが好きな人は、かなり限定されるかもしれませんね」
イマーシブ・フォート東京を運営するマーケティング会社「刀」は、客数に比して施設の規模が過大だったことを営業終了の理由に挙げている。
エントランス近くの右側の壁には、グランドフィナーレを迎えるに当たって、来場者が感想を書いたポストイットを張り付けるメッセージボードがある。
そこには「ありがとう」「たのしめた」「最高だった」、そして「いつかまた」といった言葉が並んでいた。
デイリー新潮編集部
