記事のポイントスポーツロゴ入りアパレル市場は、全体のアパレル需要が停滞するなかで22%増と急成長を遂げており、なかでもウィメンズ部門がカテゴリー全体を牽引している。テイラー・スウィフトがカスタムジャケットを着用したことが象徴するように、女性ファン層の拡大とファッションへのこだわりが、新たなビジネスチャンスを生んでいる。スポーツとライフスタイルの融合は初期段階にあり、消費者が財布の紐を締めるなかでも、ファン心理を突く戦略は新規顧客獲得の強力な武器として機能している。
2月8日のNFLスーパーボウル(Super Bowl)が目前に迫るなか、ライセンス認可されたスポーツグッズへよりスタイリッシュなアプローチを提示するブランドと、その旺盛な需要を突き動かしている要因に注目したい。一部ではこれを「テイラー・スウィフト効果」と呼ぶ声もある。2024年の試合観戦で、歌手のテイラー・スウィフトが当時の婚約者であるトラビス・ケルシーのジャージを基にしたカスタムデザインのコートを着用したことは、多くの女性スポーツファンに対し、スポーツギアが単なる大きなジャージやフォームフィンガー(泡素材の応援グッズ)に限定されないことを示した。それ以来、よりスタイリッシュでファッショナブルなスポーツギアへの需要は高まり続けており、新旧問わず多くのブランドがそのニーズに応えようと奔走している。今年、米国で主要なスポーツイベントが開催され、スポーツファンのデモグラフィック(人口統計学的属性)が変化するなかで、ブランドが洗練されたスポーツグッズを提供するための市場環境は、かつてないほど整っていると言える。フォックス・スポーツ(Fox Sports)のスポーツキャスターでありサイドラインリポーターを務めるエリン・アンドリュースは、ウェア・バイ・エリン・アンドリュース(Wear by Erin Andrews)の創設者でもある。2019年からNFLとライセンス契約を結んでいる同ブランドは、その後NBA、MLB、NHL、USサッカー、そして38のNCAA(全米大学体育協会)スポーツチームなど、多くのチームやリーグをポートフォリオに加えてきた。

「チームアパレルがいたるところに溢れている」

ウェアのアパレルは、ジャケット、ドレス、ラウンジウェア、ハンドバッグ、ジュエリー、さらにはベビー服まで多岐にわたるカテゴリーを網羅しており、そのすべてに公式ライセンスを受けたチームのロゴ、カラー、名称が配されている。同ブランドはD2C(消費者直接取引)だけでなく、ノードストローム(Nordstrom)やディックス・スポーティング・グッズ(Dick’s Sporting Goods)といった小売業者を通じても販売されている。アンドリュース氏はGlossyに対し、ブランド創設以来、スタイリッシュなスポーツグッズへの需要と、それを製造するブランド数が急増しており、過去2年間で売上が倍増したと語った。ここ数カ月で製品カテゴリーをさらに拡大したほか、バブルバー(BaubleBar)やレベッカ・ミンコフ(Rebecca Minkoff)とのコラボレーションも実現させている。「人々に耳を傾けてもらうまでに数年かかったが、今の状況を見てほしい」と彼女は語る。「チームアパレルはいたるところに溢れている。まさに爆発的な普及だ。女性のスポーツファンはファッショナブルであることを求めているのだ」。サーカナ(Circana)がGlossyに提供したデータによると、2025年のアパレル市場全体は横ばいだったが、スポーツロゴ入りのアパレルはメンズ、ウィメンズ、キッズを合わせて22%成長した。なかでもウィメンズのスポーツアパレルは、同期間にほかのカテゴリーの3倍の速さで成長を遂げている。

消費者の「財布を開かせる」強力なトリガー

この需要の高まりは、ウェアやオフ・シーズン(Off Season)のようなスポーツアパレル専門ブランドだけでなく、アバクロンビー&フィッチ(Abercrombie & Fitch)のような一般的なアパレルブランドをも惹きつけている。後者はNFLの公式ファッションパートナーであり、NFLロゴをあしらったライセンスアパレルの生産を強化している。11月、アバクロンビーのCEOフラン・ホロウィッツ氏は、NFLとの提携が「間違いなく新規顧客を呼び込んでいる」と述べ、同社がこれを主に顧客獲得ツールとして捉えていることを明かした。

NFLオフィシャルパートナーのアバクロンビー&フィッチ

サーカナのアパレル部門エグゼクティブ・ディレクター兼業界アドバイザーであるクリステン・クラッシ=ズンモ氏は、消費者が支出を切り詰めている時期に、ブランドがスポーツに執着するのは理にかなっていると指摘する。「消費者が一つひとつの購入をますます厳しく吟味する世界において、アパレルが裁量的(非必需品)なカテゴリーであり続けるなか、大きなイベントやグッズ、あるいはファンダム(熱狂的なファン層)に寄り添うことは、年間を通じて強力な着こなしの動機を突く方法となる」とクラッシ=ズンモ氏は言う。「スポーツへの帰属意識は、今日の選択的な支出環境において、財布を開かせるのに十分なほど強力な購入動機のひとつとなっている」。

「メンズをピンクにしただけ」の時代からの脱却

クリスティン・ユズチェック氏とエマ・グリード氏が設立したオフ・シーズン(Off Season)

スタイリッシュなスポーツグッズの成長には、否定できないデモグラフィック要素がある。NFLによると、視聴者の44%が女性であり、ユーガブ(YouGov)によれば、昨年だけで400万人以上の女性が新たにNFLファンになったという。スポーツアパレルブランドであるオフ・シーズンのプレジデントであるヴィッキー・ピッカ氏は、業界全体でこの変化を感じていると語る。「WNBA(女子全米バスケットボール協会)のコレクションを発売するたびに、驚くほど多くの男性ファンを目にする。一方で、女性がメンズ・ウィメンズ問わず、あらゆるスポーツに深く関与するようになっている。先日も、小売パートナー企業の女性10名と同じ部屋にいたが、私たちは昨夜のフットボールの試合について30分間も語り合っていた」。ファッションデザイナーのクリスティン・ユズチェック氏と、スキムズ(Skims)の共同創設者であるエマ・グリード氏によって1年前に設立されたオフ・シーズンは、テイラー・スウィフト氏のような著名な女性たちの支持を得て、瞬く間に話題のライセンスブランドとなった。スウィフトは、オフ・シーズンの立ち上げ前である2024年の試合で、ユズチェック氏がデザインしたカスタムジャケットを着用したことで知られている。
スポーツ業界出身で、以前はファナティクス(Fanatics)に勤務していたピッカ氏は、長い間、ウィメンズのスポーツグッズを作る際の主流は「メンズのスタイルを流用し、ピンク色にするかVネックにするか」という程度だったと振り返る。しかし現在、女性向けのスポーツグッズには、もっとも多様なバリエーションが存在している。

ファッション、スポーツ、ライフスタイルの融合は始まったばかり

マーケティングエージェンシー、ノバ・ハウス(Nova House)の創設者であり、ライセンススポーツアパレルブランドのスターター(Starter)をクライアントに持つパット・デクレシェンゾ氏は、スポーツファッションにおける女性の影響力は増すばかりだと指摘する。スターターはサンフランシスコで、NFLチームのヴィンテージロゴなどを使ってカスタムジャケットを作れるポップアップを開催している。「デモグラフィックスと、スポーツとファッションの交差性が組み合わさっている」と同氏は言う。「ウィメンズ市場はメンズ市場と同じくらい重要になりつつある。現在、スターターとNFLのポップアップにいるが、売上は男女で完全に二分されている。最近では、サイドラインのリポーター、フィールドやコートなど、スポーツの現場でかつてないほど多くの女性を見かけるようになった。女性は常にファッションにおける『クールさ』のトーンを決めてきたが、今やその影響力がスポーツの世界にも現れている」。しかし、この分野にはまだやるべきことが残っている。VC(ベンチャーキャピタル)のミューズ・キャピタル(Muse Capital)およびスポーツ・アドバイザリー会社ミューズ・スポーツ(Muse Sport)の創設パートナーであるアッシア・グラツィオーリ=ヴェニエ氏は、クラーナ(Klarna)による2024年のレポートを引き合いに出し、女性ファンは男性よりも「適切なスタイルのスポーツグッズを見つけるのに苦労している」と答える割合が60%も高いと指摘する。これは、より多様な製品を提供する供給側のチャンスがまだ残されていることを示唆している。「これはスポーツ、ファッション、ライフスタイルのもっとも大きな融合の初期段階に過ぎず、女子スポーツの人気はその先行指標だ」とグラツィオーリ=ヴェニエ氏は言う。「女性ファンの78%が『より良いグッズがあればもっと買う』と答え、快適さ、スタイル、価格を優先事項に挙げているなら、単にメンズのテンプレートにロゴを貼り付けて『ウィメンズ』と呼ぶ以上の対応が必要なのは明らかだ。ウィメンズのスポーツグッズは真のファッションカテゴリーとして扱われるべきであり、需要の増加とともに、それはさらにプロフェッショナルなものへと進化していくだろう」。一方で、アパレルのライセンス契約には特有の落とし穴も存在する。複数のブランドがGlossyに語ったところによると、スポーツリーグ全体のライセンスを取得することは、32の異なるブランドと同時にコラボレーションするようなものだという。「リーグ側は、すべてのチームマークとライセンスに対して完全な管理権と承認権を持っていると言うだろう。しかし、ほかのライセンスビジネスと同様に、チーム側が何かに同意しなかったり、わずかに異なるビジョンを持っていたりすることもある」とピッカ氏は明かす。「それは避けられないことであり、誰かを怒らせたいわけではない。だが最終的には、リーグの最終承認に委ねられているのだ」。[原文:Fashion Briefing: Brands are rushing to make fashionable sports merchandise - but is there enough demand?]Danny Parisi(翻訳・編集:戸田美子)