過去11年間の「復路」区間賞獲得率は驚異の42%…箱根駅伝"5強"激突で今年の総合V候補筆頭に挙がる大学の名前
■2026年の箱根駅伝は“5強”の大激戦
2026年の箱根駅伝は青山学院大、駒澤大、國學院大、早稲田大、中央大という前回上位に入った“5強”の大激戦が予想されている。
前回は5区と6区の“山”を区間新で制した青学大が大会新で連覇を達成。5区でトップに立つと、復路は独走するかたちになった。しかし、2位の駒大と3位の國學院大とは平地(5区と6区以外の8区間)ではほとんど差がなく山でのタイム差がトップ3の順位を決めたことになる。
今季は10月の出雲駅伝で國學院大が連覇を果たすと、2位に早大、3位に創価大が入った。11月の全日本大学駅伝は駒大が2年ぶりに制して、中大が2位、青学大が3位。両駅伝はトップ3が入れ替わった。
今回の箱根駅伝はどうなるのか。本稿は「区間エントリー」(12月29日)の前に執筆しており、直前のチーム状態は把握していない。登録選手全員が過不足ない状態で本番を迎えたと想定して考えていきたい。

■V候補筆頭は青学大と駒大
“5強”のなかでも優勝候補は青学大と駒大になるだろう。
まずは3連覇を目指す青学大だ。Vメンバー5人が卒業。新チーム始動時は、「優勝は0%」(原晋監督)という状況で、出雲駅伝は7位に沈んだ。しかし、全日本大学駅伝で3位に浮上すると、11月22日のMARCH対抗戦1万mで5人が27分台で走破するなどチームは急上昇している。登録選手の1万m上位10人の平均タイム(28分01秒08)はチーム史上最速となった。
出雲と全日本は優勝争いにまったく絡むことができずに終わったが、箱根駅伝は優位にレースを進めることができるだろう。なぜなら絶対エース・黒田朝日(4年)の存在が大きいからだ。
黒田は出雲6区、全日本7区で区間賞を獲得したが、両駅伝はエース登場前で“勝負”がついていた。しかし、箱根では黒田の3年連続となる「花の2区」出走が濃厚。前々回は1時間6分07秒の区間賞で9位から2位に、また前回は1時間5分44秒の区間新で10位から3位に順位を押し上げている。今回もエース黒田がライバル校からアドバンテージを奪って、レースの“流れ”を作るだろう。
■青学大、3連覇のポイントは3区
前回は“山”を完勝した青学大だが、今回は5区と6区の真っ向勝負は難しい。原監督は山に1年生(石川浩輝、上野山拳士朗、松田祐真)を起用する可能性を示唆しており、未知数な部分があるからだ。そうなるとポイントは3区になる。
青学大は過去に3区で何度も“ミラクル”を見せているのだ。特に2016年の秋山雄飛、2022年と2024年の太田蒼生はすさまじかった。いずれもライバル校の指揮官たちが想像する以上の“爆走”を披露している。5区の距離が短縮した2017年以降、青学大は6度の総合優勝。そのうち半数が3区でトップに立って、逃げ切っている。
原監督は「駅伝は足し算ではなく、掛け算にしないといけない」と話しているが、アオガクの勝ち方がまさに“掛け算”だった。
12月10日に行われた前回上位校の監督による「トークバトル」で原監督は前回大会をこう振り返っている。
「1区で遅れると、掛け算になってこないんですよ。前回は駒大がライバルと踏んでいましたので、2区へのタスキ渡しで駒大との差(12秒遅れ)を見て、『勝ったな』と思ったんです。前回は宇田川瞬矢に故障があって、10区間で唯一の不安が1区でした。他大学が中大についていく展開だったら本学は勝っていなかったかもしれません」

■過去11年間の復路区間賞獲得率は驚異の41.8%
今大会も2区黒田で勢いをつけて、3区(&4区)で“爆走”というのが青学大の勝利のシナリオになるだろう。
青学大は往路を7度制しているが、そのすべてで総合優勝に輝いている。一度トップに立ってしまえば“掛け算”の駅伝で圧倒的な強さを発揮してきたのだ。
その背景にあるのが、山下りの6区において過去11年間で区間4位以下が2度しかなく、高いレベルで安定していることだ。復路の区間賞数は圧巻で、過去11年間で23度。区間賞獲得率は驚異の41.8%にのぼる。
選手層が厚いこともあるが、復路はトップを走るシーンが多いのも理由になるだろう。
「カメラが目の前にいたら、カッコいい姿で走りたくないですか。緊張感を持った状態でカメラの前に入っていく。第1中継車は選手のペースをつかんだら、ずっと同じ速度で走ってくれるのでペースメーカーの役目をしてくれますし、風除けにもなる。トップを走ると、そういう利点があるんです」(原監督)
6区終了時で青学大がトップに立っていれば、そのまま逃げ切る可能性は高い。直近11年で8度の総合優勝というキャリアは揺るぎない自信になっており、勢いに乗った青学大が崩れることはない。

■駒大のポイントは佐藤圭汰の区間
では、駒大が勝つにはどうしたらいいのか。
前回2位の駒大は、11月の全日本大学駅伝で優勝。10月の出雲駅伝は4位に終わったが、エース佐藤圭汰(4年)の復帰が大きかった。
前回7区で驚異的な区間新記録で突っ走った佐藤は、往路での出走が有力。前回6区を区間歴代5位で駆け抜けた伊藤蒼唯(4年)というゲームチェンジャーがいるのも強みだ。藤田敦史監督は前回5区(4位)を担った主将・山川拓馬の起用区間を「2区か5区」で悩んでいた。
山川を2区に起用したとしても青学大・黒田とのマッチアップを考えると、分が悪い。1区のタイム差にもよるが、2区終了時で青学大が前にいると想定すべきだろう。そうなると3区が勝負の分かれ目になる。
「守りに入ったらなかなか勝てない。攻めの区間配置ができるかどうかがポイントになると思います」と藤田監督。前回は7区に入れた“ジョーカー”を早めに切ってくるだろう。
想定されるのがエース佐藤の起用だが、前々回3区で区間歴代3位(1時間0分13秒)と設定タイム以上の走りを見せたものの、青学大・太田に逆転を許している。とはいえ、佐藤は5000mで日本歴代2位(13分09秒45)を持つ学生長距離界のスピードキング。そのポテンシャルを生かして、今度こそ青学大を撃破したいところだろう。
いずれにしても3年ぶりの総合優勝を狙うには、佐藤、山川、伊藤の3人を終えた時点でトップに立っておきたいところだ。
■國學院大、早大、中大の攻めどころは?
2大学以外にも優勝の可能性は十分に残されている。
前回3位の國學院大は青木瑠郁、上原琉翔、高山豪起(いずれも4年)、辻原輝、野中恒亨(ともに3年)の5人が軸のチームだ。なかでも野中は全日本3区で留学生を抑えて区間賞を獲得すると、1万mで日本人学生歴代6位の27分36秒64をマークしている。総合力は高いが、2区と5区は読めない部分がある。まずは1区で揺さぶり、野中の区間でライバル校を蹴散らしたい。
前回4位の早大は2区に駅伝主将・山口智規(4年)、5区に山の名探偵・工藤慎作(3年)という強力な経験者がいる。それからスーパールーキー鈴木琉胤も往路の起用が濃厚だ。「半分は臙脂(エンジ)色に染めたい」と花田勝彦駅伝監督。圧倒的な個を生かして、まずは往路を制して、総合優勝に突き進みたい。
中大は前回、1区で吉居駿恭(4年)が抜け出すと、5区まで“独走劇”を披露した。今季は全日本大学駅伝で過去最高の2位。10000m27分台ランナーを6人揃えて、エントリー上位10人の10000m平均タイムは史上初の27分台に到達した。

藤原正和駅伝監督は、溜池一太(4年)を前回同様2区に起用することを明言しており、前回3区で区間賞を獲得した本間颯(3年)も並べてくるだろう。前回は山でつかまったが、今回は7区以降での“逆転劇”を描いているようだ。主将・吉居が前回のようにダントツの区間賞を奪うことができれば30年ぶりの総合優勝が見えてくる。
“5強”以外では城西大、創価大、帝京大に上位進出のチャンスがある。
城西大は前回、5区の斎藤将也(4年)と6区の小林竜輝(2年)がともに区間3位と好走しており、山でのジャンプアップが見込める。創価大は日本選手権5000mで決勝に進出した小池莉希(3年)が快走すると面白い。
帝京大は全日本大学駅伝2区で楠岡由浩(3年)が区間賞。自信のある復路(前回4位)でどこまで順位を上げることができるのか。
学生ランナーたちの熱い継走が間もなく始まる――。
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酒井 政人(さかい・まさと)
スポーツライター
1977年、愛知県生まれ。箱根駅伝に出場した経験を生かして、陸上競技・ランニングを中心に取材。現在は、『月刊陸上競技』をはじめ様々なメディアに執筆中。著書に『新・箱根駅伝 5区短縮で変わる勢力図』『東京五輪マラソンで日本がメダルを取るために必要なこと』など。最新刊に『箱根駅伝ノート』(ベストセラーズ)
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(スポーツライター 酒井 政人)
