大谷翔平でさえ及ばない…日本の歴代人気スポーツ選手ランキングに「30年以上10位以内」レジェンド2人の名前

■4年連続1位「大谷翔平」王朝時代の到来
大リーグの頂点を決める2025年のワールドシリーズ(WS)はドジャース対ブルージェイズ戦が第7戦(11月2日)までもつれ、最後まで接戦が続いた末にドジャースが球団史上初の2連覇を達成した。WS中2試合で先発勝利投手となった山本由伸選手が中0日で緊急リリーフ登板し試合を勝利に導いてWSのMVPとなり、一躍ヒーローとなった。
一方、大谷翔平選手も第3戦で2本塁打を含む4安打を放ち、ポストシーズン史上初となる1試合9出塁をマークするなど大活躍だった。
大谷選手はWSに先立つナショナルリーグ優勝決定シリーズの第4戦(10月18日)では、先発投手として7回まで無失点10奪三振、打者としては3本塁打の活躍を見せるという「異次元」かつ超人的な活躍を見せ、歴史に残るこのワンマンショーが世界中のファンの脳裏に長く刻まれることとなった。
レギュラーシーズンでも大谷選手は、自己最多の55本塁打を記録し、打者として傑出した成績を残した。また、投手としても肘の怪我から回復し、2023年9月に受けた右肘の手術から復帰、およそ2年ぶりに投手として公式戦に登板した。限られた登板機会(14試合)だったが、防御率2.87、62奪三振という安定した投球を見せ、二刀流の完全復活を印象づけた。
2025年はシーズンを通じて、大谷選手は打者としてだけでなく、投手としても復帰を果たし、再びメジャーリーグで唯一無二の「二刀流」選手として圧倒的な存在感を示した一年となった。
こうした活躍を受けて大谷選手の人気は、日本で、また世界で止まることを知らない勢いを見せている。大谷選手のこれまでの実績のすごさについては多くが報じられているので、ここではその隔絶した人気度を示すデータを紹介しよう。
■最近4年連続で大谷翔平がトップ
各種の世論調査、意識調査を行っている中央調査社では毎年「人気スポーツ」調査を行い、その中で、最も好きなスポーツ選手を対面形式で自由回答してもらい、その結果を集計している。毎年春に調査が実施されるので前年のスポーツシーズンでの活躍が評価された結果となっている。図表1に掲げた表は、毎年の上位10選手のランキング推移である。

大谷翔平選手は2025年を含む最近4年連続でトップ人気を維持している。これがどのような意味をもつかをよりよく理解するため、これまでのランキング推移を振り返ってみよう。
1994年から30年以上の人気スポーツ選手の推移を見ると、いろいろなことに気づかされる。まず、全体的に野球選手のシェアが大きい(水色の欄の占める多さからそれがうかがえる)。1位選手にしても1994年、2014〜15年の3年次を除くといずれも野球選手である。わが国における野球人気の根強さをうかがわせている。
また、どんなスポーツ選手、どんなスポーツに人気があったかについて年次の経過とともに大きく変遷してきていることが分かる。
■大谷翔平も足元に及ばない…2人のレジェンド
人気の最も高い野球についてもトップ人気選手は、長嶋茂雄から野茂英雄、松井秀喜、イチロー、そして大谷翔平へと大きく移り変わってきている。
過去を振り返ると1990年代から2000年代にかけての若貴時代の大相撲人気は今とは比べられないほど高く、1994年の1位が若乃花だった点にも当時の空気をうかがわせている。その後、相撲の人気力士は、2010年代に白鳳、稀勢の里が上位進出したが、トップ5にまで到達することは稀だった。久方ぶりの日本人横綱誕生で2025年に大の里が3位となったが、これが新たな相撲人気上昇のきっかけとなるかはまだ分からない。
相撲の若貴時代に続いて人気が上昇したのがJリーグのサッカーである。サッカーのスター選手は三浦知良、中田英寿、中村俊輔、澤穂希、香川真司、本田圭佑、三苫薫と変遷をしながら上位を保ってきているが、最高位は2013年の本田圭佑の2位であり、スポーツ選手の人気度からは、なお、野球には及ばない状況が続いており、日本代表がブラジルやドイツ、スペインなどサッカー強国を倒すなど存在感を示しており、選手のレベルも飛躍的に高まっているものの、本調査のランキングでは最近やや振るわなくなっている。
その他のスポーツで人気上昇のうねりが感じられたのは、フィギュアスケートとテニスである。2006年トリノオリンピックでアジア選手としてはじめて金メダルを獲得した荒川静香が同年いきなり人気度3位に浮上してから、浅田真央、羽生結弦が引っ張る形でけっこう長い期間、人気度の高いスポーツだった。
またフィギュアスケートと相前後して人気上昇のうねりを見せたのがテニスであり、錦織圭と大坂なおみが人気をリードした。フィギュアスケートは2014年に浅田真央、テニスは翌2015年に錦織圭が人気度トップの座を獲得している。
その他、ゴルフは一時期石川遼の人気が高く、最近は松山英樹が健闘しているが人気度としてはやや低迷している。
こうした野球以外のスポーツの人気のうねりが継起してきたため、野球人気はやや相対的に衰えたかに見えていたが、2025年の大リーグでは、大谷翔平に加えて山本由伸や佐々木朗希の大活躍があり、おそらく2026年には人気度上位に食い込んでくると予想されるので、再度、野球人気が他を圧倒する可能性もあろう。
こうした現役野球選手の海外での活躍は日本人として誇らしいものだが、忘れてはいけないレジェンドが2人いる。ひとりは、今年6月3日に逝去した長嶋茂雄氏である。2025年度の順位は大谷に次いで2位に入ったが、過去の順位をチェックすると、調査開始(本質問項目)の1994年から必ず10位以内(うち5回は1位)にランクインしている。もし現役時代(巨人:1958〜74年)、監督時代(巨人1975〜80年、1993〜2001年)でも本調査があったら、上位10位ランクインの期間は驚異的なものになるのは確実だったろう。

■「1位」最多はイチローの17回
もうひとりは、イチロー氏(1992年にオリックス入団、2001年にマリナーズへ。現役引退は2019年)である。1994年のみランク圏外だったが、1995年以降はすべてに10位以内。しかも、1位に17回も輝いている。そういう意味で、大谷がベスト10に入ったのは2015年からなので(2013年に日本ハム入団)、まだまだ先は長いとも言えるが、今の超人的な活躍をみれば、偉大な先人である長嶋、イチローの記録を軽々と凌駕するかもしれない。

このように人気選手の変遷から人気スポーツの移り変わりがうかがわれるのであるが、中央調査社の「人気スポーツ」調査では「好きなスポーツは何か」という設問も設けているので、それに対する回答結果を図表2に掲げた。

これを見ると、野球人気が一貫して1位で推移し、2位人気のスポーツとしては、大相撲が低下し、一時期大きく躍進したサッカーが最近は横ばい傾向であるという上述したのとほぼ同じ傾向がうかがわれる。野球人気に関しては、2003年頃から人気が低下傾向をたどっていたが、大リーグでの活躍で大谷選手の人気が1位となった2022年から回復傾向となった点が印象深い。
■人気の長さではイチロー、人気の程度では大谷
上で見た人気度ランキングはあくまで順位であり、たとえば1位と2位の間の人気度の差は分からない。中央調査社の「人気スポーツ」調査では、順位だけでなく、回答率についても集計を行っている。大谷選手の人気度の高さを見るため、この回答率の推移を、大谷選手、イチロー選手、そして長嶋茂雄監督について比較したデータを図表3に掲げた。

長年トップ人気を維持したイチローと近年人気急上昇の大谷選手の人気度の推移を比較すると、イチロー選手への高い支持が長期にわたって続いていたのもすごいが、2023〜25年の大谷人気はイチローの最盛期を大きく超える5割台が支持という異常とも言うべきレベルとなっている点が目立っている。
すでに現役ではなく監督となっていたので人気度も参考となるが長嶋茂雄の推移も示した。王・長嶋が現役選手として活躍していた時代に同じような調査を行っていたら、もしかすると現在の大谷選手並みの人気度だったかもしれないが、残念ながらそうしたデータは得られない。大谷選手が日本における史上最大の人気選手と言い切れるだけのデータがないのは残念である。
なお、大谷翔平選手の人気度の高さが回答者の年齢によらない全世代的なものであることを示すデータを図表4に掲げた。

大谷選手を挙げた回答率(2025年)は年齢計で51.1%だったが、年齢別に見ると30代の36.1%から60代の58.2%までの幅があったが、いずれも高い値であり、全世代的な人気を有しているといえよう。各世代の2位人気の選手の回答率と比較するといずれも大きな人気度の差があることも分かる。
調査直前の同年6月3日に89歳で亡くなったためもあって、「長嶋茂雄」の人気度がそれまでになく高い2位だったが、年代別では、特に若い頃に長嶋選手の活躍に心躍らされた60代以上で回答率が高かった点も印象深い。
20代〜30代の若い世代ではサッカーの三苫薫が2位人気となっており、大谷選手との差も多世代よりやや小さくなっている。この世代のサッカー人気をうかがわれ興味深い。
■グローバリゼーション時代のスポーツ人気
最後に、こうしたスポーツ選手、あるいはスポーツ種類の人気度の変遷が、グローバリゼーションの深化という大きな潮流の中で生じている変化だということにふれて記事を終えよう。
大リーグにおける日本人選手の活躍に依拠して近年急回復した野球人気は日本国内のセ・パ両リーグ、特に巨人軍の王・長嶋人気に支えられていた旧来型の野球人気とは大きな質的な差があると感じているのは私だけではあるまい。
テレビ視聴率で大リーグと日本のプロ野球を比べると、先発の山本由伸投手が勝利投手となったMLB2025・WS第6戦・ドジャース×ブルージェイズのNHK総合中継(2025年11月1日)は20.7%だったの対して、日本シリーズ最終戦のテレ朝中継(2025年10月30日)は10.6%と半分だった(関東地区の世帯視聴率)。WS最終第7戦はNHK・BSでの中継だったので視聴率が発表されていないが、おそらく第6戦以上の高い視聴率だったろう。実際、米国、カナダ、日本を合わせて平均5100万人が視聴し、1991年以来34年ぶりに最も視聴されたMLBゲームとなった、との報道もある。
純粋和式の競技である大相撲にしても、その人気の維持には、かつてと異なり日本人だけでなくモンゴルやウクライナなど外国人力士の活躍が不可欠な状況となっている点も新時代を感じさせる。
それぞれのスポーツの人気は、国内の試合だけでなく、オリンピックや世界選手権、ワールドカップといった世界大会、あるいは米国の大リーグや欧州のサッカーリーグでの活躍に支えられている側面が大きくなっている。
また、日本人選手といっても陸上男子100メートルのサニブラウン選手、テニスの大坂なおみ選手やNBAロサンゼルス・レイカーズの八村塁選手といった国際結婚を抜きにしては登場しなかった選手の活躍が目立ってきている。
スポーツの分野ももはや国内の閉じられた世界では完結しえなくなっており、まさにグローバリゼーションに洗われる時代となったのである。
スポーツをめぐるメディア視聴料、広告料などのビジネス収入の規模はかつてとは比較にならないほど膨らんでいるが、それと同様に、最近の大谷翔平選手の人気度が往年の長嶋選手の人気度を越えているとしたら、まさに新時代の到来を象徴する出来事だろう。
----------
本川 裕(ほんかわ・ゆたか)
統計探偵/統計データ分析家
東京大学農学部卒。国民経済研究協会研究部長、常務理事を経て現在、アルファ社会科学主席研究員。暮らしから国際問題まで幅広いデータ満載のサイト「社会実情データ図録」を運営しながらネット連載や書籍を執筆。近著は『統計で問い直す はずれ値だらけの日本人』(星海社新書)。
----------
(統計探偵/統計データ分析家 本川 裕)
