気になるのは、ラグジュアリーブランドを展開するLVMHモエヘネシー・ルイヴィトンやケリング(グッチ、バレンシアガなどを製造販売)が、岡山や京都など国内産地の工場、メーカーと契約し、生地の供給を本格化させたことだ。円安が長期化し、欧州から見れば日本の生地は格段に割安だ。ラグジュアリーブランドに生地や織物を供給してきたイタリアのメーカーも廃業が相次ぎ、同じく高品質な生地を生産できる日本のメーカーに目をつけた。ある国内ブランドは「すでにデニム生地の調達、ジーンズの縫製が難しくなった」と説明する。「メゾン・ミハラヤスヒロ」を展開するデザイナーの三原康裕氏は「日本のファッション業界が先延ばしにしてきた課題が(新型コロナ禍後に)一気に表面化した」と分析する。脆弱な生産背景のまま、大手ファッション企業は「国内工場にコストカットを迫っていた」との声も聞かれる。今でこそ大手企業も工場との共存共栄を謡うが、実態は異なる。日本繊維輸入組合が発表した2022年度のアパレル輸入比率は98.5%で、国産の割合はわずか1.5%である。さらに人手不足や後継者問題、資金的な理由で廃業を余儀なくされる工場の根本的な課題解決は難しい。希少性があり、技術力の高い工場は減少の一途をたどっている。昨年に一部で納期遅延があった「ビューティフルピープル」(熊切秀典デザイナー)では、生地発注や縫製の注文を1カ月程度早めているが「対応が後手に回れば、国内生産が難しくなる。我々デザイナーが中長期的に工場、職人をサポートできれば」(熊切氏)と意欲を示す。加工料のアップだけではなく、継続的な発注やデザイナーが連携して繊維産地に仕事を委託、供給するなどその方法を模索している。Written by 市川重人Image via FACETASM, KANAKO SAKAI