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熱心なクルマ好きなら長距離も楽しめる

少量生産のスポーツカー・メーカーとしては珍しく、GSMが優先したのは安全性。フラミンゴの一般道との親和性や、アンダーステア傾向のシャシーは、あえて彼らが与えた特性だった。

【画像】ゴードン・マレーも所有 GSMフラミンゴ 少量生産のスポーツモデル エリートも 全122枚

ラバーコーン・サスペンションと、高回転域で滑らかさに欠けるケント・ユニットとの組み合わせで、走行中は落ち着かない。ショートなギア比も、それに加担している。


GSMフラミンゴ 1500(南アフリカ仕様)

フラミンゴを上質なグランドツアラーとは呼びにくいものの、GSMが用意できるリソースを巧みに組み合わせることで、熱心なクルマ好きが長距離ドライブも楽しめる内容にはある。普段使いできつつ、週末を謳歌するスポーツカーにもなり得る。

1960年代水準で見ても、洗練されてはいない。しかし可能な限り快適に過ごせるよう、装備は考えられている。ダッシュボードにはソフトパッドが与えられ、フロアにはちゃんとしたカーペットが敷かれている。

フロントシートの後ろには意外と広い荷室があり、メーターパネルに並ぶ計器類も充実。ダッシュボードにはビニールレザーが張られ、スイッチ類にはレーシングカーのようにラベルが貼られている。

フォード・タウヌス用エンジンを搭載した初期のフラミンゴには、グレン・ロクストン氏がオーナーのモデル以上に整ったダッシュボードが与えられていた。ただし、南アフリカ生まれでありながらベンチレーションは備わらない。もちろんヒーターも。

サイドウインドウは上下に開閉するが、雨の日は確実に困る。2枚に別れたリアウィンドウには熱線もなく、簡単に曇る。

限られていたGSMの開発予算

フラミンゴは晴天に乗るクーペだ。ドライバーを温めてくれるのは、小さなケント・ユニットが放つ熱のみ。とはいえ、GSMが英国での販売を真剣に考えていれば、ヒーターは装備されたことだろう。

特徴的なリアウインドウは、見た目の印象が良いものの、運転時もそうとは限らない。ルーフラインは低く、平均的な身長のドライバーでも頭が天井に当たりそうになる。背もたれを倒し、腕を伸ばした運転姿勢を余儀なくされる。


GSMフラミンゴ 1500(南アフリカ仕様)

この姿勢で振り返ると、目線にあるのはルーフの後端。リアウインドウ越しには、近い距離の路面程度しか見えない。駐車時には役立つかもしれないが、本来はもっと高い位置に据えられるべきだった。フラミンゴの後ろ姿も、一層美しくなったかもしれない。

フロントガラスは、オースチンA40 ファリーナというコンパクトカーのものが流用されている。前方視界は素晴らしい。だが、ボディに対していささか大きすぎるように思う。

GSMの開発予算が限られていたことは、パッケージングからも伝わってくる。最小回転直径は大きく、ペダルは思い切り外側へオフセットしている。右足が、フェンダーアーチに食い込むような感覚すらある。

もしこれがファミリーカーなら、残念な評価につながっただろう。しかし純粋なスポーツカーの場合は、特徴として見逃せる不備にならなくもない。

ゴードン・マレー氏が所有していた1台

この通称「黄色いバナナ」は、軽量化を追求するカーデザイナーでマクラーレンF1を生み出した、ゴードン・マレー氏が以前所有していた。2002年に購入し、5年間維持している。しかも、彼のコレクションには別のフラミンゴとダートが残されている。

GSMは、南アフリカ以外の地域にフラミンゴを提供したいと考えていた。1964年には1台が英国へ上陸し、伝説的レーシングドライバーのスターリング・モス氏が運転を楽しんだらしい。しかしジネッタやロータスほど、強い印象を残すことはなかったようだ。


GSMフラミンゴ 1500(南アフリカ仕様)

1950年代にダートを開発したGSMは、グラスファイバー製ボディのモデル開発で先陣を切るポジションにいた。他のメーカーが技術を我がモノとする前に、量産車の提供に成功していた。

しかし1960年代半ばに状況が一変。多くのキットカー・メーカーが英国に誕生し、フラミンゴに似たようなクルマを提供し始めた。GSMは充分な市場を獲得できず、南アフリカでの販売だけでは経営が行き詰まり、倒産に追い込まれてしまった。

フラミンゴがケント・ユニットではなく、フォード・フェアレーン用のV8エンジンを搭載していれば、状況は違っていたかもしれない。TVRグリフィスや、ACコブラに並ぶような興奮を誘うスポーツモデルが、生まれた可能性もゼロではないだろう。

協力:グレン・ロクストン氏、レジェンズ・オートモーティブ社

番外編:1957年から1965年という短命だったGSM

ボブ・ファン・ニーケルク氏とウィリー・マイスナー氏という2人は、1950年代に南アフリカのクラブマン・レースへ出場するため数台のレーシングカーを生み出した。ベース車はオースチンやMG、プジョーが選ばれた。

彼らは、より手頃な価格のスポーツカーを作れると考えていた。しかし、当時の南アフリカには軽量なボディを制作できる技術や産業が整っていなかった。


GSMフラミンゴ 1500とオーナーのグレン・ロクストン氏

そんな折、1956年にマイスナーが英国を訪れた際、グラスファイバー(FRP)による成形技術に触れ可能性を見出す。少量生産のスポーツカーに最適な素材だと考え、南アフリカの仲間とともに英国へ再上陸。ボディのスタイリングをデザイナーに依頼した。

デザインが仕上がると、英国で金型も発注。誕生したスポーツカーは、GSMダートとして販売された。

ダートは、フォード由来のドライブトレインを、スチール・パイプで組まれた独自のシャシーに搭載。投資家が注目するほど高い評価を獲得し、英国には姉妹会社となるGSMカーズ社まで設立された。英国では、70台のダートが生産されている。

2番目のモデルとして誕生したのが、クローズドボディのフラミンゴ。ダートを補完する目的があった。シャシーやボディは新設計され、南アフリカでの事業拡大も進められた。しかし、実際の需要以上の規模を擁するに至ってしまう。

最終的にダートは116台、フラミンゴは128台が製造されるが、1965年にGSMは倒産。小さな自動車メーカーは、短命に終わったのだった。

GSMフラミンゴ 1500(南アフリカ仕様)のスペック

英国価格:2500ランド(新車時)/3万ポンド(約498万円)以下(現在)
販売台数:128台(フラミンゴ合計)
全長:3760mm
全幅:1537mm
全高:1245mm
最高速度:160km/h
0-97km/h加速:9.7秒
燃費:9.9-13.5km/L
CO2排出量:−
車両重量:739kg
パワートレイン:直列4気筒1498cc自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:84ps/5200rpm
最大トルク:13.3kg-m/3600rpm
ギアボックス:4速マニュアル