ヤケド、痛み、ヒリヒリする…4人に1人が経験!脱毛エステの料金・施術トラブル(※画像はイメージです)

写真拡大

 性別や世代を問わず「ムダ毛」の悩みを抱えている人は多く、脱毛のニーズは年々増加している。若年層の美容脱毛だけでなく、近年はシニア世代においても需要が増えている。介護される立場になった場合を見据え、介護者の負担を減らせるようにデリケートゾーンを脱毛しておく「介護脱毛」の需要が拡大しているのだ。

【写真】1か月で23日も休業!? ヒカルが経営する脱毛サロンの営業日程

 一方、全国の国民生活センターには年間2800件を超える脱毛エステの相談が寄せられている。その半数以上は「解約」にまつわるトラブル事例だ。

脱毛エステと20代女性によるトラブル

 ある20代の女性は、「永久保証」を謳う脱毛コースを40万円で契約した。初回の施術時に痛みを感じ、これ以上は続けられないと思い解約を申し出たところ、施術代8万円と違約金の2万円で合計10万円の解約料を請求された。一度しか施術を受けていないのに解約料が高額で納得ができず、国民生活センターに相談することとなったが、似たようなトラブル事例は全国で起こっている。

「特に近年は“永久保証”や“〇年間通い放題”といった謳い文句で、長期間の施術コース契約を結んだ際のクーリング・オフや中途解約のトラブル相談が増えています。一般に、脱毛エステは長期間にわたってサービスを受ける契約が多いので、信頼できる業界団体に加入しているかを確認し、信頼できるサロンを選ぶことが大切です。また、契約内容や中途解約の条件を事前にしっかりと理解しておくことも重要です」

 そう教えてくれたのは、日本脱毛安全普及協会の代表理事で、弁護士の山岸純さん。特に脱毛サロンの長期契約においては、以下のような利用者の“思い違い”がよくあるという。

「例えば、1年間に12回脱毛を受けられるコースを12万円で契約したとします。2回ほど通って肌に合わないと気づき、解約をしようとしたときに、施術を受けていない10回分の10万円は返してもらえると思ってしまいがちです。でも、実際の契約上はそうなっていなかった……といった事例は多いです」(山岸さん、以下同)

初回が12万円、2回目以降が0円!?

 利用期間が1か月を超え、総額が5万円を超える脱毛エステの契約には、特定商取引法が適用される。エステサロンは契約期間内であれば、解約の理由に関係なく精算しなければならず、この場合、原則として未利用分の代金を返還しなければならない。

 ただし、この「未利用分の代金」の算出方法についてのトラブルが多発しており、国民生活センターは「脱毛が肌に合わなかった場合や、引っ越しなどで事情が変わって通えなくなったときのことも想定し、中途解約の条件についても事前に細かく確認してほしい」と注意を呼びかけている。

 また、長期の契約に限らずとも「広告に掲載されていた施術を希望したが、高額なプランをすすめられて断れずに契約してしまった」「無料体験を受けたあと、強引に契約を迫られて契約してしまった」といったトラブルも起こっている。国民生活センターでの性別の相談件数では、2020年度以降、男性からの相談も急増しているという。

「“お試し”や“低価格”といった広告の文言につられた結果、想定外の高額なコースに勧誘される例も昔から多く起こっています。あまりに低価格な広告を鵜呑みにしないことや、契約内容や金額に少しでも不安がある場合は安易に契約をしないことは当然ながら重要ですね」

 このような契約トラブルだけでなく、施術時の危害トラブルも少なからず起こっている。国民生活センターの2017年のアンケート調査では、回答者の約4分の1が「脱毛後にヤケド、痛み、ヒリヒリ感などの身体症状が生じた経験がある」と回答した。

「エステサロンで行うことができるのは、いわゆる光脱毛などの光を照射することによる一時的な除毛・減毛で、医療行為に該当しない範囲の施術のみとなります。もちろんエステサロンでの脱毛の場合も、適切な機器の取り扱いや、肌に与える影響についての十分な知識がなければ、危害トラブルにつながってしまう可能性があります」

 脱毛を受ける際にはこうしたリスクが伴うことを理解し、信頼できる施術者がいるサロンを選ぶことも必要だ。

「脱毛機器のメーカーが開催するセミナーなどを施術者がきちんと受講しているのか、しっかりとした技術を持っているのかを確認しましょう」

 契約トラブルや危害トラブルなど、脱毛エステにおいてさまざまな問題が絶えない理由のひとつに、脱毛業界への「参入のしやすさ」がある。東京都新宿区で2020年に脱毛サロンを開いた安田圭太さん(仮名)は次のように語る。

「本業は美容師をやっているのですが、そこで知り合った脱毛機器の営業の方にすすめられて、副業として脱毛サロンを開きました。医療脱毛ではないので資格や免許は必要なく、飲食店などに比べると開業費用もかなり安く抑えられます。実際、マンションの1室を借りて、ベッドなどの設備を整え、機械のリース代を払って、施術者をひとり雇えば難なく開業できてしまいますね。

 初年度は本業の美容室のお客さんに営業をかけたり、美容系の予約サイトに情報を載せてもらうことで、苦労せずにスタートできました」

十分な知識がなくても開業はできる

 料金システムは近隣の個人経営のサロンを参考に組み立てたという。機器の取り扱い方法はメーカーからのレクチャーがあった程度で、施術者に特に十分な知識がなくても営業ができている。これまでに大きなトラブルもなかったそうで、「正直なところ、必要な法律の知識なども身につけないまま今に至っています」と安田さんは苦笑する。今ではその成功を知った飲食店経営者の知り合いなども続々と似たようなサロンを開業しているという。

「この数年で個人の脱毛サロンは急増しています。いいかげんな経営知識を吹き込んで開業の手助けをするようなコンサルタント業者が介入している場合も多いので、いずれ大きなトラブルを引き起こすサロンも出てきますよ」

 競合する店舗が増えた結果、経営も以前ほどは順調ではなくなっているようだ。

「どこも導入する機械は似たり寄ったりなので、脱毛効果にはあまり差がなく、低価格競争に拍車がかかっている状態。最近は売り上げも落ちてきたので、そろそろ潮時かなとも考えています」(安田さん)

 このような状況に、山岸さんも警鐘を鳴らしている。

「実は近年、技術力が低い個人経営のサロンでのトラブルが急増しています。もちろん、きちんとしたサロンも多いですが、なかには正しい施術知識や必要な法律知識などを身につけないまま開業しているケースも増えています。広告や宣伝に惑わされずに、安全な脱毛機器や訓練された技術を持つ、しっかりとした優良サロンを見つけましょう」(山岸さん)

 最近は10代以下の年齢層での脱毛ニーズも高まっており、「キッズ脱毛」の市場も成長している。また、機器を貸し出して自分で照射施術を行う「セルフ脱毛サロン」の人気も高まりつつある。このように市場が拡大しているなかで、脱毛トラブルに遭わないためにはどのようなことに気をつけるべきだろうか。

「こういった消費者トラブルを避けるには、利用者側も知識を持つことが大前提。その中で、例えば最初から大きな契約をせずに、まず都度払いのコースでお試しの施術を受けてみて判断するといったことが必要でしょうね。また、自分が求めるところを施術者にしっかり伝え、その日の体調などまでしっかり相談できるような、信頼できるエステサロンを選ぶことも大切です」(山岸さん)

 今や身近なものとなった脱毛エステ。安さだけに踊らされず、しっかりとした優良サロンを選びたい。

日本脱毛安全普及協会・代表理事 山岸 純さん
早稲田大学法学部を卒業後、弁護士として活躍する傍ら、同協会を立ち上げ「連射式脱毛の安全の普及と適法な技術と学びの提供」を目指し活動を続けている

<取材・文/吉信 武>