この記事をまとめると

■何かにぶつかりそうになったとき、ABSを効かせることが重要

■しかし多くの人がフルブレーキをかけることができない

■その理由としっかりとブレーキを踏めるようになる方法を解説する

多くの人がフルブレーキをかけることができない

 現代のクルマに関していえば、「フルブレーキ」と「ABSを効かせる」というのは同義語だと考えていい。

 タイヤの持っているグリップ力を最大限使って、最短距離で停止するには、ABSを効かせっぱなしにする意外方法がないからだ。

 物理の授業で習ったとおり、運動エネルギーは速度の二乗に比例する。何かにぶつかりそうになったとき、フルブレーキで速度が2分の1になれば、ぶつかったときの衝撃は4分の1で済む。

 だから「もう間に合わない」「ぶつかる」と思ったときは、ぶつかるその瞬間までフルブレーキを踏み続けることが肝心だ。

 しかし、サーキットなどでドライビングレッスンの手伝いなどをしているとよくわかるが、ほとんどの人は「フルブレーキを踏んで」といってもABSが効くほど強い踏力でブレーキを踏むことができない!

 自動車教習所でも技能教習第2段階項目11に「急ブレーキ」という項目があるが、急ブレーキを踏むことが難しいことなのかを体験するのが目的で、シミュレーターで済ませる教習所すらあるのでとても身につくものではない……。

 なぜ(安全な場所で)「フルブレーキを踏んで」といわれても、あるいは踏む必要があるときですら、ABSが効くような本当のフルブレーキが踏めないのか?

・「急」のつく動作はNGだと思い込んでいる

・ペダルを強く踏み込むことに躊躇してしまう

・ドライビングポジションが遠くて、ブレーキペダルを奥まで踏み込めない

・自分では目一杯強く踏んでいるつもり

 といった理由が考えられるが、一番の理由は経験がないために、ABSを効かせるために、どれぐらいの踏力が必要なのかがわかっていないからだろう。

 メーカーの純正装着タイヤであったとしても、いまのクルマのタイヤはそこそこのグリップ力がある。したがって50km/h以上の速度で走っていたとしたら、ABSを作動させるためには親の敵のようなつもりで思いっきりブレーキペダルを蹴飛ばすことが必要だ。

 正直、普段のブレーキのちょっと強め程度ではABSはなかなか作動してくれない。ではどうすればいざというとききちんとフルブレーキが踏めるようになるのか。

ドライビングポジションも重要!

 まずはドライビングポジションを見直すこと。シートと腰・背中の間に隙間ができないように深く腰掛け、ブレーキペダルを奥まで踏み込んだときでも膝裏が少し曲がった状態になるところまで、座面の位置を前にしておく。

 一番踏力が入りやすい足の位置でブレーキが踏めるポジションになることを何より優先させておこう。かろうじて足先がペダルに届いているようなポジションで運転している人を見かけるが、それではいざというときフルブレーキなんて踏めるわけがない。

 あとは経験。メーカーやレーシングドライバーなどが主催しているドライビングレッスン、あるいはツインリンク茂木などのサーキット主催のドライビングスクールに参加し、実際にABSを効かせるまでフルブレーキ練習をするのが一番。

 2〜3回のフルブレーキ体験では、なかなかABSを効かせるほどガツンとしたブレーキは踏めないので、少なくともブレーキだけで5〜6回以上、できれば10回ぐらいはフルブレーキを練習できるプログラムを選んで身体で覚えるしかない。

 時間もコストもそれなりにかかるが、いざというときもっとも役立つスキルが身につくことを考えれば安い投資なはずだ。

 せっかくだから大事なことをもうひとつ。もしもスピンモード(ハーフスピンを含む)に入った場合、下手にカウンターなどで建て直そうとせず、クルマが完全に停止するまでとにかくフルブレーキを踏み続けること。これが被害を最小にする秘訣なのでぜひ覚えておいて欲しい。とくに完全停止までブレーキを踏み続けるというのが要諦(でもできない人が多い)なので、肝に銘じておくように。