デルタ変異株の影響か? 遠のく「テーパリング」 外為オンライン佐藤正和氏
中国市場や香港市場の株価が、中国政府によるハイテク関連企業への引き締め政策の影響で乱高下していますが、米国株や日本株にも影響が出ています。ただ、現在の米国の「実質金利」は、過去最大のマイナス金利となっており、株式市場から資金が逃げるといった図式にはなりにくいと考えています。
実質金利というのは、長期金利からインフレ期待率をひいたもので、現在の水準はマイナス1.2%前後。実質金利が、これだけ大きなマイナスになっているということは、株式市場から債券市場などに資金が流出することは考えにくく、現在の株価を支える要因のひとつにもなっています。
ただ、最近は株式市場の動きが以前に比べて為替市場にダイレクトに影響して来ない傾向があります。本来であれば、ニューヨークダウ、ナスダック、S&P500の3指数が揃って最高値更新というような事態では、ドルが大きく買われるパターンですが、最近は限定的な動きになっています。
――金利引上げ=金融政策の転換が、一時的に心配されていましたが?
7月28日(現地時間)に行われたFOMC(米連邦公開市場委員会)の声明文では、テーパリング(債券購入縮小)の時期について「委員会は今後数会合において引き続き進展度合いを精査する」との表現に留まっています。数カ月に渡って経済指標をチェックしないと判断しない、というわけです。パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長もFOMC後の記者会見で、「(利上げの開始時期は)ずっと先であることは明白だ」と述べました。
デルタ変異株の感染拡大が世界的に拡大しており、経済成長を脅かすリスクが高まっており、FRBとしては「拙速」な判断は避けたい、という意識が高まったと考えられます。7月のFOMCで何らかの示唆があり、8月に実施される経済シンポジウムの「ジャクソンホール会議」で利上げ時期の表明――というシナリオは完全に消えたわけですが、FOMC後の記者会見でFRB議長が自らジャクソンホールへの出席や講演を表明し、一部の市場関係者からは異例の「議長出席表明」として注目されています。
ただ、テーパリングを実施するために重要なのは、やはり物価の動きと同時に雇用市場の回復がカギになってきます。8月6日に発表される「非農業部門雇用者数」は、予想では92万6000人の増加となっていますが、パンデミック以前の水準にはまだまだ遠いものがあります。その一方で、先日発表された失業保険申請件数は37.3万件と市場予想の35万件を上回るなど、雇用市場の安定にはまだブレがあるようです。
――8月はどんな相場になるのでしようか?
8月は、FOMCや日本銀行の「金融政策決定会合」といったいつものイベントもありません。夏休みシーズンとなり、マーケットは流動性の少ない「夏枯れ相場」に突入するのかもしれません。もっとも、時々日本の株式市場やドル円相場では、お盆休み前後に流動性の少ないマーケットを狙って、急激なボラティリティを仕掛けて来るヘッジファンドなどもいます。そういう意味では気を抜かないことです。
