JALがエアバスA350-900型機のテストフライトを実施しましたが、エアバス機を新規に導入するのは今回が初めて。そこで、ボーイング機を飛ばしてきたパイロットたちに、操縦桿だけではない飛行機の違いや進化を聞きました。

用語や表現から違う、エアバスとボーイング

 JAL(日本航空)が2019年8月27日(火)、新型機「エアバスA350-900型機」のテストフライトを報道陣に公開。パイロットが、エアバスA350-900型機の操縦について質問に答えました。


JALのエアバスA350-900型のコクピット(2019年8月27日、乗りものニュース編集部撮影)。

 JALは、過去に経営統合したJAS(日本エアシステム)のエアバスA300-600R型機を引き継いだ経験はあるものの、エアバス機を新規に導入するのは、今回が初めてです。

JALにとっては、初めての「サイドスティック」機!


航空科学博物館の「ボーイング737MAX型機」シミュレーター(2019年7月、乗りものニュース編集部撮影)。

 エアバス機におけるコクピットの大きな特徴は操縦桿(かん)。1987(昭和62)年に初飛行したエアバスA320型シリーズから、各操縦席横に設置する「サイドスティック」タイプを採用しています。一方、JALがこれまで運航してきた機種は、クルマのハンドルのような「コントロールホイール」です。過去のエアバスA300-600R型機もこのコントロールホイールを採用していました。

 つまりJALにとって今回導入のA350-900型機は、初めての「サイドスティック機」となります。これまで操縦してきたボーイング機などとどのような違いが生じるのか、操縦桿だけではない違いも含めてパイロットが教えてくれました。

「ボーイングはスポーツカー、エアバスは安定感」


エアバスA350-900型機のパイロット。一番左が南雲恒昌機長(2019年8月27日、乗りものニュース編集部撮影)。

 ボーイング767型機など、ずっとボーイング機で乗務してきたという南雲恒昌機長。初めてのエアバス機は操縦方法だけでなく、用語や操縦方法の表現まで違っていて当初は戸惑いもあったと振り返ります。

 サイドスティックの操縦感覚については「ボーイング機は『スポーツカー』のようなイメージで操縦するのですが、同じ感覚でA350-900型機を動かすと、非常に大きく動いてしまいます。安定のさせ方を理解してくると、とても操縦しやすい安定感のある飛行機です」と話します。

スティックだけじゃない! A350運航乗員部副部長が語る違い

 A350運航乗員部の杉本 恒副部長は「ジャンボジェット」ことボーイング747-400型機のほか、ボーイング737-400型機、ボーイング777型機、エアバスA320型機(ジェットスター・ジャパン運航)の4機種の操縦経験があります。


A350-900型機のパイロット。中央手前が杉本 恒副部長(2019年8月27日、乗りものニュース編集部撮影)。

 サイドスティックのエアバスA320型機の経験を持つ杉本副部長にとっても、A350-900型機は初めてのことが多かったと言います。人間にたとえると「冷静に相手と向き合って会話ができる飛行機」という印象とのこと。

――サイドスティックの場合、機長は左手、副操縦士は右手だけで終始操縦しますが、左右で違いや違和感などは生じないのでしょうか。

杉本副部長:スティック操作は動かすというより方向を入力するイメージなので、どちらの手でも違和感なく操縦ができるとの声が多いですね。むしろスティックと反対の手で操作するスラストレバー(ジェット機のエンジン出力調整を行う。クルマのアクセルに相当)のほうが、慣れるまで時間がかかるようです。ボーイング機は自分でレバーを動かすのですが、エアバス機は所定のポジションに入れるとほぼ動かすことがないのです。

――スラストレバー以外にも、エアバスとボーイングの大きな違いがあれば教えてください。

杉本副部長:使われる用語も全く異なりますし、ライト類のスイッチを倒すとき、ボーイングとエアバスは逆方向だったり、逆に違いすぎて混同することは少ないともいえます。

副部長が考える、A350-900型機の一番の進化とは?

――A350-900型機で一番進化したところはどこでしょうか。

杉本副部長:何よりキーボードの導入は大きな違いです。エアバスのなかでも、コクピットにキーボードを取り入れているのは数機種しかないと思います。「すごい」と思ったことは、A350-900型機は自動ブレーキ(BTV)を備えていることです。「着陸したあとこの位置で滑走路から離れたい」とセットすると、着陸時にそれに合わせてブレーキをかけてくれます。

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 JALはボーイング777シリーズの後継として、「A350 XWBシリーズ」のA350-900型機と、長胴型にあたるA350-1000型機を、国内幹線から導入します。


A350-900型機の機首部分を入口から(2019年8月27日、乗りものニュース編集部撮影)。

 JALのA350-900型機の訓練飛行は、2018年12月から開始。シミュレーターでの訓練を経て、実機でテストフライトを行い、順次、機長認定される予定です。現時点では、20人弱が同型機の機長認定を受けているといいます。

 A350-900型機のエンジンは、質問に答えたパイロット全員が「静かだった」と評価します。「静寂性はコクピットで感じるほど静かです」(南雲恒昌機長)、「過去に乗ったエアバスA320型機も静かだなと感じましたが、A350-900型機はそれ以上です。ぜひ一度乗っていただき、快適性を実感していただければと思います」(杉本 恒副部長)。

 A350-900型機は、9月1日(日)に羽田〜福岡線でデビュー予定。その後10月27日(月)から羽田〜新千歳線に、2020年2月1日(土)から羽田〜那覇線にそれぞれ投入される予定です。

※一部誤字を修正しました(8月31日18時31分)。