結婚できない女が本命彼女に勝てないワケ。男が最初から弱さを見せる女は、1番ではない
熾烈を極める東京婚活市場。
その中で「結婚したいのに結婚できない」と嘆く女には、いくつかの共通点がある。
ある行動により自分の市場価値を無駄に下げる女、逆に実態なく価値を上げ過ぎて機会損失している女……。
これまで、24時の誘いに乗る女、都合のいい女、提案してしまう女、王子様を探す女、食事会NG通告を受けた女、花嫁修業する女、港区女子、選択できない女などの事例を紹介してきた。
今回は、2番手の女に甘んじているアラサー、小雪が登場。

【今週の結婚できない女】
名前:小雪
年齢:30歳
職業:PR会社経営
結婚相手に望むこと:高め合える関係
私の方がいい女なのに…
―今日、小雪の家行ってもいい?
水曜日の20時過ぎ。33歳・総合商社に勤める啓太から届いたLINEを確認して、橘小雪(たちばな・こゆき)は返信を躊躇う。…いや、躊躇うフリをしているというほうが正しいかもしれない。
今夜、啓太と逢える。その事実にどうしようもなく高鳴ってしまう鼓動の止め方を、小雪は知らない。
しかし30歳の小雪が躊躇うフリをしなくてはならないのには、理由がある。啓太には、同棲してもうすぐ2年になる年下の彼女がいるのだ。
「彼女の情緒不安定についていけない。」
気まぐれに小雪の家にやってくる啓太は、彼女への愚痴や不満も隠すことなく小雪にぶつける。
「小雪と一緒にいるほうが、ずっと楽しい。」
「俺たち、相性ばっちりだよね。」
そうやってさんざん小雪に甘えた後で、愚痴をこぼしていたはずの彼女が待つ家に戻っていく。
27歳で美容部員をしているという啓太の彼女は、金銭的にはもちろん精神的にも完全に啓太に依存しており、啓太が仕事で遅い日がちょっと続いただけで情緒不安定になり、泣いたり拗ねたりとにかく面倒なことになるらしい。
自身でPR会社を設立し、自立した人生を送っている小雪にしてみたら、啓太がそんなつまらない女のどこに惚れているのか疑問である。
自慢じゃないが小雪は、男にも女にもモテる。トレンドに敏感で洗練された佇まい、忙しくてもジム通いを欠かさず、いつでもビキニが着れるボディラインを維持している。
理解できないだろうからと、啓太は彼女には仕事の話をしないそうだが、小雪なら聞いてあげられるしアドバイスだってできる。
だから小雪はいつも思う。
ー私のほうがどう考えてもいい女なのに、どうして私が2番手なの?
私の方が…そう主張する小雪。啓太の本音とは?
本命女と、浮気女。その差はどこにある?
彼女・裕美には、一目惚れだった。
啓太は2年前、当時よく遊んでいた音楽好きの仲間たちで夏フェスに行こうという話になり、その時に女友達のひとりが、裕美を連れてきた。
出会った当時、裕美は25歳。
瑞々しい胸元や、無駄な肉のない二の腕や美脚を惜しげもなく露出した裕美は、夏の太陽の下でとにかく眩しかった。
色白の肌も、垂れ気味の目も口角の上がったあひる口もとにかく好みだったから、飲み物を買ってきてあげたり、日陰を譲ってあげたり、仲間に冷やかされるのも構わず彼女の気を引くためにできることは全部した。
2週間後、啓太が30歳になった時に清水の舞台から飛び降りる気持ちで買った愛車レクサスで彼女の家まで迎えに行き、鎌倉までドライブ。
白いノースリーブのワンピースからのぞく華奢な肩や、海風で長い髪が揺れるたびに漂う甘い香り、そして裕美をからかうと見せる、唇を尖らせて上目づかいで見上げる表情が、逆らい難く啓太の心を掴むのだった。

そして啓太は勝負に出た。
サンセットに合わせて予約した『オーシャンズクラブ ハヤマ』でロマンチックにディナーを楽しみ、これでダメなら何してもダメだ、という完璧なシチュエーションで、裕美を口説き落としたのである。
◆
美容専門学校を卒業し地元・秋田から上京してきた裕美は、学芸大学でひとり暮らしをしていたが、美容部員の薄給では生計を立てるのがやっと。
当然のように裕美は、付き合い始めると間もなく、啓太の中目黒のマンションに転がり込んできた。そして、世のカップルの大半がそうであるように、啓太と裕美の関係もほどなく変化することとなる。
天使か妖精かという表情だけが浮かんでいたはずの裕美の顔に、般若の形相が見え隠れするようになった。
啓太が連絡なしに飲んで帰ったり、仕事や接待で(実際は別の理由である場面も多々あったが)午前様で帰宅する日が続いたり、髪を切ったことに気づかなかったりすると、何もそこまで、というほどに泣いたり喚いたりするのである。
―面倒くせぇな…。
同棲をはじめて1年が経つ頃には裕美が隣にいることが当たり前になり、恋愛初期の初々しさは日を追うごとに消え去っていく。
PR会社を経営しているという橘小雪と出会ったのは、そんな時だった。
異動してきた上司と反りが合わず、溜まったストレスを発散しようと同僚と飲みに出かけた『サカナバル グリル』で、たまたま隣のテーブルに座っていた女子2人組に声をかけた。そのうちの1人が、小雪だった。
小雪は、自分で事業をしているだけあり話し上手の聞き上手。飲んで饒舌になる啓太の愚痴を優しく受け止め、時には毒舌も交えながら聞いてくれた。
同棲している彼女がいることも、その彼女が面倒な性格だということも、洗いざらい話した。
小雪はそれらをすべて知った上で、その夜、啓太とともに一晩を過ごしたのだ。
啓太は裕美と小雪、どちらを選ぶのか。その答えは…
本命が、本命たる所以
週末の朝、小雪はジムで身体を動かした後『マザーエスタ』に立ち寄った。
オフの日は朝から運動して、野菜たっぷりのランチを食べるようにしている。いつまでも魅力的なボディラインを保つため、日頃の努力を怠るわけにはいかない。
急ぎの仕事もなく時間に追われなくてよい週末だから、小雪はお花見がてら、目黒川沿いを散歩して帰ることにした。

―桜って、儚いなぁ…
目黒川を通り抜けた風に、桜の花びらが舞う。ひらひらと風に乗って運ばれていく花びらを目で追っていた、その時だった。
小雪は視線の先に、見覚えのあるシルエットを捉えた。
―あれ、啓太…と彼女?!
川沿いのフェンスに並んで立つ男女は、仲睦まじく笑い合っている。
啓太が何かからかうようなことを彼女に言って、それに対して拗ねた彼女が唇を尖らせ彼を見上げる。そんな彼女を見つめ、愛おしそうに肩を抱く啓太。
そこには、小雪の知らない啓太がいた―。
桜舞い散る春の目黒川。その美しい景色の中で、小雪の周りだけが色を失くしたように思えた。ふつふつと湧いてくる、怒り、そして悔しいという思い。
小雪は、無意識のうちにふたりの方に足を進めていた。
「啓太」
ふたりの背後から声をかけた小雪に気づき、啓太の顔から笑顔が消える。
「…誰?」
自身の彼氏を名前で呼ぶ女に、怪訝な表情を向ける彼女。そんな彼女を庇うように、啓太は一歩前に出る。そして小雪に対し、信じられないセリフを吐くのだった。
「橘さん!久しぶりですね。」
久しぶりなんかでは、ない。今週水曜日に、啓太は小雪の家に泊まっているのだから。しかし啓太のその言葉で、小雪は自分の立場というものを思い知らされた気がした。
―最初から、勝ち目などなかった。
啓太は彼女との関係を守るためなら、小雪にどう思われようが構わないのだ。
小雪には、初対面から遠慮もなく洗いざらい曝け出してきた、男の弱さや狡さ。同棲している彼女の存在も、最初から隠す素振りもなかった。
しかし小雪の存在は、彼女の前ではなかったことにされる。彼女には決して、弱さや狡さを知られるわけにはいかないから。
啓太は、彼女の前でかっこいい自分を保つために、小雪で傷を癒していただけ。
小雪は、こみあげる感情が溢れないよう唇を噛みしめ、無言でその場を立ち去った。
▶NEXT: 4月12日 水曜更新予定
丸ごと愛して!最初から見せすぎる、結婚できない女
【これまでの結婚できない女】
vol.1:24時からの誘いに乗る女は、“立ち食いラーメン”の価値しかない
vol.2:”いい女”を演じるほど結婚は遠のく!29歳、愛を忘れた女の誤算
vol.3:港区スタンダードで店を予算別に提案。知りすぎた女が選ぶべき男は...
vol.4:いつまで王子様を探すの?未婚女友達の助言は、竜宮城への罠
vol.5:まさかの参加NG通告。流されやすい女、2度目の食事会には呼ばれない
vol.6:〆のラーメンに行く女は選ばれない。男には腹八分目を徹底せよ
vol.7:花嫁修業は逆効果?結婚に必要なのは、女子力ではなく生活力という事実
vol.8:なぜか自分だけ100点。男を減点方式でしか見ない、高慢女の自戒
vol.9:「もう誰も愛せない…」泡沫の夢と知りつつも囚われる、昔の大恋愛
vol.10:女の敵は女。堅実な結婚を目論む港区女子と、それを阻む彼氏の女友達
vol.11:20時開始の食事会に、ほろ酔いで登場。誘いの絶えないモテ女の残念な理由
