「汗かぶれだと思っていたら…」革靴や歯の詰め物が原因で肌トラブルに?気づきにくい「金属アレルギー」の実態
「なんとなく肌が弱い」「汗をかくとかゆくなる」。そんな不調の原因は金属アレルギーかもしれません。実は、金属製のものを身につけていなくても肌トラブルが生じる可能性があるという金属アレルギー。自身も長年、原因不明のかゆみに悩まされたという一般社団法人金属アレルギー協会代表の鈴木久子さんに詳しく伺います。
【写真】「画期的」金属アレルギーに悩む人のために製造されたアクセサリー(全4枚)
衣類や革靴、アイライナーでもかゆくなる!?
── 金属アレルギーと聞くと、アクセサリーに関する肌トラブルを想起しがちですが、意外な原因から不調をきたす人もいるそうですね。そもそも金属アレルギーは、どれくらい身近なものなのでしょうか。
鈴木さん:正確な患者数を把握するのは難しいのですが、日本メタルフリー歯学学会調べによると、現在日本国内での罹患者及びその予備軍を合わせると1300万人が金属アレルギーであると言われています。ただ、食物アレルギーのように子どものころから症状が出るとは限りません。それまで問題なく身につけていたアクセサリーや使い慣れた化粧品で、ある日、突然かゆみやかぶれなどの症状が現れることもあります。
そのため、ご自身では「自分には関係ない」と思っていても、実は金属アレルギーだったというケースも少なくありません。
── 鈴木さんの元には実際に金属アレルギーに悩む人の声も届くことがあるそうですね。
鈴木さん:特に女性からの悩みや質問をいただくことが多いですね。統計的にも罹患者の7割が女性と言われています。アクセサリーなどの金属に触れる機会が圧倒的に女性の方が多い、というのが理由のひとつではないかと言われています。
── アクセサリー以外で、「実は金属が関係していた」と驚いたものはありますか?
鈴木さん:化粧品です。アイライナーやマスカラ、アイシャドウやヘアカラーといった商品には色を出す顔料が入っているものがあります。顔料は鉱物由来のものが多いため、金属が関係していることがあるのですが、普通は「化粧品でかゆい=化学物質が原因かな?」と思いますよね。「金属=アクセサリーのような塊」というイメージが強いですから。でも実際には、日常のいろんなものに金属は使われています。たとえば衣類に「シャリ感」を出すために素材に金属が織り込まれてあることもあります。
── 日常生活にも、金属が使われている意外なものが多いんですね。
鈴木さん:意外に思われるのが革製品です。男性の方で、革靴を素足で履いていて足がかゆくなったことがきっかけで金属アレルギーが判明したという方がいらっしゃいました。実は、革は「なめし」の工程でクロムという金属が使われることが多いんです。ですから靴やバッグが素肌に当たると、かゆくなる人もいます。
── それはかなり盲点です。
鈴木さん:「革が原因」とは思わず、「汗かな?」「肌荒れかな?」と考えてしまいがちです。皮膚科を受診したとしても塗り薬で様子を見ることが多いので、金属アレルギーに結びつかないことが多いようです。
「安いピアスだからかゆい」と思い込んでいた高校時代
── ご自身も長年、金属アレルギーに悩まされてきたそうですね。症状が出たのはいつごろだったのでしょうか。
鈴木さん:今から30年以上前の高校生だったころです。ピアスを開けるのが流行していて、私もピアッサーや安全ピンで穴を開け、安価なピアスをつけていました。でも、いつまで経っても耳たぶがグジュグジュして治らないんです。パンパンに腫れて、よくわからない汁が出たり、かゆみも出てきて大変でした。寝ている間にかいてしまって出血し、翌朝にはかさぶたになって剥がれ落ちたものが大量に髪の毛についていて…。
── 病院でも原因はわからなかったのでしょうか?
鈴木さん:皮膚科でも「自分でピアスを開けたから化膿したんでしょう」と言われて、炎症を抑える薬を出されただけでした。ですからアクセサリーをつけてかゆくなっても「安物だからかな」くらいにしか思わなかったんです。
── 金属アレルギーだと正式に診断されたのはいつごろでしょうか?
鈴木さん:インターネットで情報を調べるうちに、「もしかしたら金属アレルギーかもしれない」とは思っていました。ただ、そのころはまだ「高価な素材なら大丈夫」「安いアクセサリーだからかゆくなるのかもしれない」くらいの認識だったんです。
── しばらくは正式な診断は受けなかったんですね。
鈴木さん:はい。そんななか、プラチナのピアスをなくしてしまったことがあったんです。高価だったのでショックで、代わりになるものを探しているうちに、海外では金属アレルギー対応のアクセサリーが広く販売されているのを知りました。当時は自宅でネットショップを始めようと考えていた時期でもあったので、「これなら必要としている人がいるかもしれない」と思い、金属アレルギー対応アクセサリーの販売を始めることにしたんです。
ただ、販売する以上は自分自身もきちんと知識を持たなければいけないと思い、「自分の不調は本当に金属アレルギーによるものなのか、だとしたら何の金属に反応するのか」を調べるために皮膚科を受診しました。
ところが皮膚科医からは、「『なんとなくかゆいから』という理由なら、パッチテストは勧めません」と言われてしまって…。
── 「かゆい」という症状だけでは、パッチテストは推奨されないのですか?
鈴木さん:「アクセサリーでかゆいなら、つけなきゃいいのよ」と言われました。お医者さんの立場からすると、もっともな意見だと思います。というのも、金属アレルギーのパッチテストは複数種類の金属を肌に直接48時間貼り続ける必要があるんです。とてもかゆくなりますし、ごくまれですが新たな感作のリスクも指摘されています。
私の場合は、口の中の金属の詰め物についても一度確認したかったので「診断書を歯科医に提出する必要もあるから」と伝えて、パッチテストをお願いしました。結果、ニッケル、コバルト、クロム、イリジウムの4種にアレルギーがあるという診断でした。
── 実際に診断されて、変化はありましたか?
鈴木さん:それまでは、「高価な素材なら安全」だと思い込んでいました。でも実際は、そう単純ではなかったんですよね。たとえば「18金」は金(Au)100%ではなく75%が金(Au)で、そのほかは別の金属を使用しています。ピンクゴールドには銅(Cu)などが含まれているので、金(Au)は平気でも、銅(Cu)に反応する人はかゆくなってしまいます。「金属アレルギー」とひと言でいっても、人によって反応する金属が違うため、たとえ高価であっても自分に合わない金属が入っていれば、症状が出てしまうこともあるんだと改めて気づきました。
── そうした経験が、現在の協会活動にもつながっているのでしょうか。
鈴木さん:そうですね。そもそもこうした情報は消費者に十分伝わっているとは言えません。「金属アレルギー対応」と表示されていても、どんな金属が使われているのか、販売する側さえも正確な知識を持っていないことがあるからです。そこで金属アレルギー協会では、製造メーカーや販売会社と協力しながら正しい知識の普及に取り組み、消費者・販売者・製造者の間にある知識ギャップを埋めることを目指しています。
「保険適用になるケース」を知らない人も
── 歯科治療と金属アレルギーの関係で悩む人は多いのでしょうか。
鈴木さん:多いと思います。たとえば、ずっと肌荒れに悩んでいた人が、だいぶあとになって「歯の詰め物が関係していたかもしれない」と気がつくケースもあります。
── 肌荒れと歯の詰め物に関係がある可能性があるとは考えたことがありませんでした。
鈴木さん:金属の詰め物が口の中であたって直接かゆくなるというパターンは実は少ないようです。金属が唾液でイオン化されて体内に取り込まれた結果、汗と一緒に出てきた部分がかゆくなることが多いんです。それが金属アレルギーだとは気づきにくく、「汗かぶれかな」と思ってしまう人も少なくないと思います。
── 実際、金属アレルギーが疑われる場合、歯科治療ではどんなことが起きるのでしょうか。
鈴木さん:まず、皮膚科でパッチテストを受けて診断をもらい、その結果を歯科に持っていく流れになります。ところが、金属アレルギーの方でも使える保険適用の素材があるのにも関わらず、まだ十分に知られていない場合もあります。
── 患者側としても「保険適用になる場合がある」こと自体を知らず、「金属は避けたいから全部自費で払うしかない」と思う人もいるのではないでしょうか。
鈴木さん:そうしたケースもよく耳にします。ただ私は、自費診療が全部悪いわけではないと考えているんです。自費診療でよく使われるセラミックやジルコニアは、金属を含まない材料として金属アレルギーへの配慮という観点から選択されることがあります。また、見た目や耐久性、生体親和性などの面から選ばれることもあります。
いっぽうで、「まずは保険適用でできる範囲を知りたい」という人もいると思います。金属アレルギーに理解のある歯科を探したり、それが難しければ「自分はこうした不安や問題を抱えているから、それに対応する治療をしてほしい」と積極的に相談したりすることが大切だと思います。
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「金属アレルギー=アクセサリー」というイメージが強いからこそ、歯の詰め物や化粧品、革製品などが関係しているとは思わず、長年原因不明の不調として抱えている人も少なくないのかもしれません。特に歯の詰め物は、自分ではなかなか原因と結びつきにくいもの。長引く肌トラブルに悩んでいる人は、原因のひとつとして知っておくだけでも、今後の選択肢が変わるのかもしれません。
取材・文:石野志帆 写真:金属アレルギー協会

