歯周病は認知症や動脈硬化、糖尿病の引き金に!90代でも好きなものを食べ毎日を楽しむための、口の健康セルフケア
おいしい食事は人生の楽しみのひとつ。自分の歯で噛むことは、健康にもつながります。いつまでも歯を守るために、口腔内を清潔に保つセルフケアが重要です(イラスト:末続あけみ 取材・文・構成:島田ゆかり)
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口腔内細菌は全身の臓器に影響する
長寿になるほど、多くの人が望むのは「一生涯自分の歯でおいしく食べる」ことではないでしょうか。1989(平成元)年に始まった8020(ハチマルニイマル)運動は、「80歳になっても20本以上、自分の歯を残そう」というもの。この啓発活動が功を奏し、口腔ケアの意識が高まったことで高齢者の「残存歯」は増えています。
ところが、「歯があるために、新たな課題が生まれている」と指摘するのは、歯科医師の米山武義先生です。「口腔内には1000種類を超える細菌がいます。歯が残っているのは喜ばしいことですが、磨き残しが多くなると菌が爆発的に増え、歯周病に罹る高齢者が増加しているのです」
歯周病は、多くの疾患を引き起こす原因になるのだそう。
「歯周病菌は、血管や呼吸器、消化器を通して全身の臓器に広がり、動脈硬化や心筋梗塞、誤嚥性肺炎、糖尿病など深刻な病気の引き金になるのです。また、菌が脳へ達することもわかってきており、アルツハイマー型認知症への影響が懸念され始めました。
加えて、歯周病が進むと噛みにくいなど口腔機能の低下も進み、食事の偏りや低栄養が起こり、フレイル(虚弱)へと進んでしまうことも問題視されています」(米山先生。以下同)
つまり、歯があっても菌を増やさないことが、健康寿命を延ばす鍵になるのです。

(イラスト:末続あけみ)
菌を浄化する唾液も重要
口腔内環境を清潔に保つには、毎日のケアが欠かせません。
「しっかり歯磨きをしているつもりでも、長年のクセで磨きやすいところばかり熱心にブラッシングしたり、力が強すぎて歯を削っていることも。そうならないために、正しい歯磨きを身につけること。そうすれば歯周病もむし歯も予防できるのです」
さらに、加齢による唾液の分泌減少も口腔内環境を悪化させる要因のひとつ。
「唾液には口腔内の細菌を浄化する役割があります。たとえば食事をすると口腔内は酸性に傾きますが、唾液が出ることでアルカリ性寄りに戻る特性があるのです。
しかし、唾液量が少ないと酸性に傾いたままとなり、歯が溶けやすい状態に。すると、知覚過敏になったり、歯がもろくなったりしてしまう。唾液は3つの唾液腺(図参照)を刺激すれば分泌を促すことができるので、こまめに押すようにしましょう」

3つの腺を刺激することで唾液の分泌を促進。各腺を指で押したり回したりしてマッサージしましょう。唾液がじんわりと出てきます。軽い力でOKです。耳下腺は上の奥歯周辺をぐるぐる回すと刺激できます。顎下腺は、口角の下あたりにある顎の骨の内側を。舌下腺は顎の下あたりです。
さらに「粘膜ケア」もプラスして
頬の内側や唇の裏などの汚れを落とす「粘膜ケア」もプラスすれば、清潔を保つだけでなく血行促進にも効果があり、口腔内の健康につながるのです。
「粘膜ケアは歯周病やむし歯予防、口腔内の乾燥、感染症防止にも役立ちます。スポンジブラシを使って頬の内側や歯ぐきをやさしくこすりましょう。舌の上も雑菌が多いため、舌ブラシで軽くこすり取ります。アルコール入りのマウスウォッシュは使いすぎると乾燥を招くので、口の乾きが気になる人は口腔保湿ジェルを活用しましょう」
米山先生が何より大事だと指摘するのは、口腔内環境が整っていれば食事を楽しめるということ。
「家族や友人と食事をしても、歯が悪いために楽しめなくなる。すると一緒に出かけるのが億劫になったり、食べる楽しみを失い、QOL(生活の質)が大きく下がります。私の患者さんで口腔ケアに熱心な90代の方は、未だに歯周病が1ヵ所しかありません。残存歯も25本以上。
好きなものを食べ、毎日を楽しんでおられます。歯周病はセルフケアで進行をゆるやかにすることが可能です。セルフチェックで、ご自身の歯周病の有無を確認してみましょう」
次回からは、正しい口腔ケアの方法をご紹介します。
