物価高の救世主「ガチ中華と町中華」似て非なる両者の《意外な共通点》…日本人が求める”ノスタルジー”の正体とは

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物価高の波がじわじわと広がり続けている中で、外食業界では「安い・早い・うまい」を求める消費者ニーズが高まりを見せている。とりわけ注目を集めているのが「町中華」や「ガチ中華」といったブームの後押しも受ける中華料理店業態だ。

帝国データバンクによる最新の調査では、2025年度の中華料理店における業績動向(4月時点)に関しても、3割超が「増収」。損益面に関しても、やはり3割超が「増益」を達成しているという。数字の上でも、あらためて中華料理店は人気の高まりを見せている。

ところで、〈町中華とガチ中華〉という2つのブームは、くしくも同じタイミングで人気を博し、今に至る。はたして共通点があるのだろうか。それともまったく異なる流行なのだろうか――。くらし文化研究所主宰・作家・生活史研究家の阿古真理氏が解説する。

【前編記事】『町中華が“倒産ラッシュから一転”よみがえり…令和の若者たちが行列を作るようになった「明快な理由」』よりつづく。

「日本の中華」その歴史を紐解くと…

町中華のルーツをたどれば、幕末に横浜、その後神戸で誕生した中華街から始まる。

長崎も含め、19世紀後半から20世紀初頭に日本で暮らすようになった中国人は、広東省や福建省、浙江省など沿岸部から来た人たちが中心だった。「食は広州にあり」とも言われるが、淡白で洗練された味の料理が多かった。そうした料理を日本人が採り入れ、自分たちの好みに合わせて発展させたのが、日本の中華である。

その代表がラーメン。横浜の中華街でラーメンを食べていた横浜税関職員が、脱サラし浅草で1910年に開いた「来々軒」は、ラーメンの元祖の一つだ。

当時の中華料理店は、日本人向けのものばかりだった。留学生が増えた20世紀初頭、神田で中国料理店が増えるといった現象はあったものの、『横浜中華街』(山下清海、筑摩書房)によると、関東大震災直前の横浜在住の華僑は4705人と、ごく少数だった。

現在、日本に住む中国人移民はケタ違いに多い。2001年末には中国出身者はすでに、全国で38万1225人もいたが、その後急速に上昇し、2021年末には76万7797人と2倍に、さらに直近では93万428人(出入国在留管理庁『令和7年末現在における在留外国人数』より)にまで膨れ上がっている。

“日本に居ながら”中国旅行をした気分に

新チャイナタウンの代表は、池袋の北口エリアと西川口駅西口エリアである。

『新・中華街』(山下清海、講談社)によれば、1980年代後半に留学生など日本に来る中国人が増えたことから、池袋に中国人の食品スーパーができたのが1991年。その後、周辺に中国料理店、書店、旅行社、不動産屋などが次々とでき、21世紀になると、池袋北口エリアに中国系の店が集積するようになった。

西川口は、2000年代前半に駅前の風俗街を埼玉県警などが一掃した結果、安い家賃に惹かれて中国人が集まり、さまざまな店を開業していった。2018年1月に『タモリ倶楽部』(テレビ朝日系)が紹介し、同年2月3日号の『週刊東洋経済』(東洋経済新報社)が移民特集で西川口を紹介して以降、さまざまなメディアが取り上げ人気が高まっていった。近辺の団地に住む中国人が多いこの町では、生活のひと通りが中国系の店で賄えることから、中国人は日本語を覚えなくても暮らせるほどだという。

新華僑とも言われる近年の移民たちは、中国の東北地方など内陸部から来た人たちが多い。中国は地方によって食文化が異なるが、彼らには、日本人向けに変化してしまったうえ辛くない従来の中華料理は口に合わなかったかもしれない。唐辛子と花椒をたっぷり使った麻辣味の料理が、新チャイナタウンの店では提供されている。

そうした町や店に日本人が通うようになったのは、旅行やビジネス、留学などで海外に行った経験がある日本人が増えたこと、1980年〜1990年代の「エスニック」料理ブーム以降、アジアの食文化が身近になり、本格派の料理を好む人が増えたことが大きい。また、新チャイナタウンでは、日本に居ながらにして中国旅行をした気分になれるところも魅力なのではないだろうか。

みな「ノスタルジー」を求めている

ここ数年、刺激的な味が人気で、麻辣味自体がブームでもある。強炭酸ドリンク、それはそれは濃厚な味わいのラーメンその他、さまざまな濃い味、刺激的な味の料理が流行っている。ストレスフルな時代の影響もあるだろうし、濃い味や辛い味は食べれば食べるほど病みつきになる傾向があるため、より強い刺激を求める人が増えていると思われる。

町中華とガチ中華は、まったく異なる料理のジャンルである。町中華はある意味、すでに二世代三世代と親しんできた日本人にとって懐かしい味と店の作りに惹かれた人々が訪れる。一方、ガチ中華は異国で暮らす人たちがふるさとの味と雰囲気を求めて訪れる。

どちらの人たちも、ノスタルジーを求めている点は共通している。しかし、ガチ中華の店を訪れる日本人は、自分たちが親しんできた中華料理とはまるで違う新しい文化として、その味を楽しむ。それは異文化への好奇心で、まったくベクトルが違う。

では、町中華とガチ中華はそれぞれ、異なる人々が訪れるのだろうか? 私は案外同じ人が両方楽しんでいるのではないかと思う。

特に、ブームになってから町中華をひんぱんに訪れるようになった人たちは、どちらに行くことも非日常なのではないだろうか。かたや中国へ行った気分、かたや昭和の日本へ行った気分、とどちらもどこかふだんとは違う場所に行った感覚を味わえるのだ。そして、どちらの空間でも、均質化されていない人間の営みが垣間見えるところも魅力なのではないだろうか。

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