国内最大級の竜巻被害から9か月 被災地で再建中の農家に中東情勢がさらなる試練(静岡・牧之原市)
2025年、牧之原市などで甚大な被害を出した竜巻から5日で9か月。
被災地では今もなお懸命に再建に取り組む農家がいます。
そんな苦境と戦う農家にあの中東情勢がさらなる試練を与えようとしています。
3日、県内に接近し大雨をもたらした台風6号。
その様子を心配そうに見守る一人の男性がいました。
(2025年の竜巻で被災 藤田治之さん)
「2026年も台風が始まっちゃったなと」
20歳のとき、ふるさとに戻り実家の苗農家の仕事を始めた藤田さん。
全国に販路を拡大し栽培面積は創業時に比べて5倍、売り上げも10倍となるなど経営は順調でした。
ところが…
(竜巻発生時の様子)
2025年9月5日台風15号に伴う国内最大級の竜巻が牧之原市を襲ったのです。
牧之原市での住宅被害は全壊の73棟を含め、1350棟に上りました。
これは、被災当日の藤田さん夫婦のやり取り。
当時、配達に出かけていた藤田さんに妻・佳子さんから送られてきたのは、ぶどう棚の屋根が飛ばされたことを伝えるメッセージ。
ちょうどその時間帯、農園に設置された防犯カメラには強風が吹き荒れる様子が残されていました。
(藤田治之さん)
「まさしく配送中。お店から電話がかかってきてガラスが割れて怖いですと。電柱が倒れてて迂回しながら戻って。うちの場合はハウスが全部つぶれていて周りの木は真っ白になっていて・・・・」
(カメラマン)
「多くのビニールハウスが倒壊しています」
ハウスは風速45メートルでも耐えられる設計でしたが、竜巻により43棟あったハウスのうち35棟が倒壊。
大切に育てていた50万株もの苗が、一瞬にして失われたのです。
(藤田治之さん)
「先行きどうしようというのが現実。この竜巻で一瞬にして終わり」
再建にかかる費用は2億円以上。
そのほとんどを借金で賄い片付け作業を進めていきました。
ただ、行政職員との会話では時に厳しい言葉になることも・・・
(藤田治之さん)
「この現状、この災害をそんなに甘くみられているのか」
(行政職員)
「いやそういうことではなく・・・」
(藤田治之さん)
「再建して建てて借り入れローンをして、設備投資をしたとするそうすると今までの設備投資や修繕のローンが重なるのでうん、素直に考えても1年以内には倒産か廃業するしかないかな」
被災後、ハウスがなくても育てられる少量の苗の出荷を続けた藤田さん。
残された広大な農園では、被災して3か月がたったころからハウスの再建が始まりました。
マイナスからの出発となった藤田さんですが、苗を楽しみに待つ人のためにと奮闘する一方で再建を目指すもう一つ理由が‥・
(2025年の竜巻で被災 藤田治之さん)
「子供たちがね、2026年春から引き継いでやってくれるような形にもなっているので、その子たちのためにも・・・うん・・・頑張んなきゃいかんなと」
愛知県で暮らしていた娘夫婦が2026年春、牧之原に戻り農園で働くことが決まっていたのです。
藤田さんは、ハウスの再建を急ピッチで進めましたが出荷量は停滞するまま。
毎月のように再建費用の支払いが藤田さんの方に重くのしかかります。
2026年3月。
(娘・彩花さん)
「本日からよろしくお願いします」
娘の彩花さんが牧之原に戻ってきました。
これまで農業と無縁の仕事をしてきた彩花さん。
(藤田治之さん)
「ついていってやっていくように頑張って」
初めてのことばかりですが、まずは土を知ることからと現場での仕事が始まりました。
(娘・彩花さん)
「真剣にちゃんと覚えていかなきゃなって思います。ハウスを覚えるとこから」
娘とともに再建に向けて動き出した藤田さん。
しかし、さらなる苦難が待ち受けていました。
中東情勢の緊迫化による資材の高騰です。
(藤田治之さん)
「肥料が秋まで輸入がないっていうことを聞いたので、秋までのは買ったり」
肥料をはじめさまざまな資材が値上げされ供給も不安定に…
特に影響が大きいのが年間450万個ほど使う苗を入れるポットです。
(藤田治之さん)
「(ポットは)7月10~15%上がると言われてます。想定外も想定外。損失を取り戻すための単価上げのつもりでいたところもあったが、そこに資材の高騰で返済のことを考えるとちょっと難しくなるかなと。」
花や野菜の苗は100円前後で販売されるものが多く収益は多くありません。
それでも藤田さんは…
(藤田治之さん)
「手をかけない人でも手をかけてる自分とでも同じ納品単価。でも自分はお客さんのことを思うと、2027年もリピーターになってほしいから手を抜けない」
父親の再建への強い思いを、娘の彩花さんも受け止めていました。
(娘・彩花さん)
「ついていくので必死。私ももっと頑張んなきゃなとは思う。やれることはまだまだあると思うのでコツコツやっていけたら」
国内最大級の竜巻が起きてから5日で9か月。
被災した苗農家は、新たな試練に見舞われながらも再建に向け走り続けています。
