『タツキ先生は甘すぎる!』©日本テレビ

写真拡大

 フリースクール「ユカナイ」のタツキ(町田啓太)は、“子どもファースト”の激甘なスタッフ。子どもたちに何かを強要することはなく、本人がやりたいことを尊重する。そんなタツキが、身を挺して子どものやりたいことを止めた『タツキ先生は甘すぎる!』(日本テレビ系)第5話はこれまで以上にシリアスな展開となった。

参考:町田啓太、金髪&タトゥー姿で「アツかった夏」 『九条の大罪』壬生憲剛のオフショット

 しずく(松本穂香)は、フリースクールの子どもたちが“スクラップアート”に使う素材選びに付き添う。スクラップアートとは、廃棄されたガラクタやゴミなどを再利用し、自由に創作するアート活動のこと。子どもたちは思い思いの素材を選び、新たな命を吹き込んでいく。それを「ゴミは何をしてもゴミじゃん」と一蹴するのが、中学3年生の智紀(大倉琉人)だ。

 智紀は約1年前に学校へ行けなくなり、「ユカナイ」に通っていたが、もう半年以上も姿を見せていなかった。そこで、タツキはしずくの提案で家庭訪問をすることに。ゴミが散乱した智紀の部屋で一緒にスクラップアートを作ろうと誘うタツキ。最初はゲームばかりで一瞥もしなかった智紀だが、タツキの押しに負けて、ティッシュの空き箱で車を作り始める。

 タツキが気になったのは、その車体に積まれたダイナマイトだ。後日、タツキが「ユカナイ」に持ち帰った智紀のスクラップアートにしずくがぶつかって落ちた拍子に、ティッシュ箱の中からぐしゃぐしゃに丸められた学校の集合写真が出てきた。

 智紀が学校に行けなくなった理由は、いじめ。彼のあだ名である“トモキン”を、同級生の男子がSNS上で「トモ菌」と表記するようになったことが発端だった。最初は本人も単なる“いじり”と捉えていたが、どんどんエスカレートし、ばい菌扱いを受けるように。最終的にはクラスのグループトークで智紀以外の生徒が退会していくという、SNSいじめへと発展したようだ。

 そんな智紀の元担任の先生は、まさかのしずくだった。親の離婚で苗字が変わっていたことから最初は気づかなかったが、智紀が教え子だったことを知ったしずくは愕然とする。自分のクラスにいじめが存在していたことを全くもって知らなかったからだ。実際、SNSの普及によって、いじめの不可視性が増していると言われている。今回の例と同様に、もしSNS上で子どもたちの間にトラブルが起きていても、現実で何事もなかったかのように振舞われたら、大人が気づくのは至難の業だ。

 ましてや、智紀は学校にいじめの件を報告しないまま転校していた。ゆえに、生徒たちの中でいじめはすでになかったことになっており、中心人物の男子生徒は陸上部で活躍し、スポーツ推薦で高校に進学することも決まっている。一方、智紀は新しい学校にも馴染めず、自室に引きこもるように。皮肉だが、いじめの被害者は一生癒えぬ心の傷を負い、加害者はのうのうと幸せな社会生活を送るという構図は現実世界でも頻繁に見られる。その理不尽に耐えられなかった智紀は転校からちょうど1年、本人にとっては学校を追い出された“Xデー”に「祭り」と称して何かを起こそうとしている様子だった。

 タツキは智紀がいつもプレイしているPCゲーム上でコンタクトを取り、その内容を聞き出そうとする。しかし、今まで助けてくれなかった大人への信頼をすでに失っている智紀はタツキにも心を許そうとせず、自分のアカウントごと消してしまう。ゲームが「命の浮き輪」と呼ばれていることを、本作で初めて知った人が多いのではないだろうか。学校に行けず、孤独や不安を抱える子どもにとってゲームは心の拠り所になる。いじめで深く傷ついた智紀もゲームをすることで、どうにかここまで命を繋いでこれたのだろう。

 そんな智紀がやり込んだゲームのアカウントを消すというのは相当なこと。胸騒ぎがしたタツキはXデーに智紀の後を追う。すると工事中のビルに入っていき、屋上へと上がっていく智紀。その日、彼は自ら命を絶ち、あらかじめ預けていたいじめの証拠を友達にSNSで晒してもらう計画を立てていた。近年、急増するSNSいじめだが、その一方でいじめの復讐にSNSが用いられるケースも増えている。いじめを法律で裁けないのであれば、自らの手で加害者に社会的な死を与えたいと思う気持ちを一概に否定することはできない。だが、そのために自分を犠牲にしようとしている智紀をタツキは止めずにいられなかった。

 自殺を止める有効な手段はほぼ存在しない。ましてや「死ぬな」という言葉は、生きていることが苦痛で仕方ない人間の前ではあまりに無力だ。タツキは智紀に生きていてほしいという気持ちを行動で示した。人生はゲームのように一からやり直すことはできないが、過去の出来事を踏まえて新たに生き直すことはできる。息子・蒼空(山岸想)の心を自らの手で壊してしまったタツキ。その消えぬ後悔が、彼を飛び降りようとした智紀の元へ走らせる。タツキは智紀を助けた拍子に転落し、命は助かったものの、腕に大怪我を負ってしまった。さらに、その日は元妻の優(比嘉愛未)と久しぶりに会う予定だったのだ。意図せず約束を破ってしまったことで、家族との仲がさらにこじれないか心配である。

 一方、前回からしずくの後をつけていたのは元教え子たちであることが判明。ゲーム上で智紀と繋がっていた彼らから、しずくは助けを求められる。そのことからも彼女は生徒にある程度慕われていたようだが、なぜ自ら学校を去ったのか。次週はしずくの過去も明らかになりそうだ。(文=苫とり子)