Amazonとベンダーのメールが暴いた価格操作の実態
セールに沸く裏側で、こんなことが起きていた…。
アメリカのeコマース市場でおよそ50%のシェアを握るAmazonが、長年にわたって「違法な価格操作を行なっていた」とするメールが公開され、波紋を広げています。
カリフォルニア州司法長官ロブ・ボンタ氏は2026年4月20日、Amazonをめぐる訴訟で提出された仮差止め申立書を、ほとんど黒塗りすることなく一般に公開しました。
そこに記載されていたのは、Amazonと大手ブランド・競合小売業者との間で交わされた、具体的な価格交渉の記録です。
訴訟の背景は2022年にさかのぼる
この訴訟が最初に提起されたのは2022年のことです。当初の訴状は、Amazonが他のプラットフォームでより低い価格を提示することを販売者に禁じる「価格同一性契約」、つまり「他で安く売るな」という縛り行為に焦点を当てていました。
ところが、2026年2月に提出された仮差止め申立書では、その後の証拠収集で明らかになった新事実がさらに加わりました。
カリフォルニア州はこの行為が、州が定める反トラスト法(カートライト法)のもとで「それ自体が違法」な「価格固定」にあたると主張しています。
3つの手口:「仲介業者」を使った価格コントロール
価格のコントロールは、Amazonがベンダーに対し、他の小売業者が掲載している商品の価格を「固定」「修正」「引き上げ」「値上げ」「調査」するように要求することから始まっている、とボンタ氏。
その上で、Amazonが用いたとされる手口は大きく3つに分けられます。
1.価格合わせ:AmazonとWalmartのような競合他社が共通のメーカー(ベンダー)を仲介役として使い、どちらかが値上げするか在庫を一時的に引き上げることで、もう一方がその高い価格に合わせられるようにする。
2.競合の引き上げ:別の小売サイトがAmazonより安い価格で販売しているとき、Amazonがメーカーに圧力をかけて競合側に値上げさせ、その後にAmazonも高い値段に合わせる。
3.安値を消す:Amazonより安く売っている競合サイトからメーカーに商品を引き上げさせ、市場から安値をなくしてしまうことで、Amazonが価格を引き上げるというパターン。
3つに共通するのは、消費者をないがしろにして、「選べたはずの選択肢」を消しているということです。
ベンダーへのこれらの指示は、従わない場合は広告やプロモーションの制限、金銭的補償の要求、Amazonからの商品の削除などの罰則が科される、という脅し付きです。
社内メールに残っていた「痕跡」
さて、このたび公開された文書には、驚くほど具体的なやり取りが記録されています。
Amazonはリーバイスへ「Walmartでカーキパンツ」が25.47〜26.99ドルで販売されているリンクを送付。翌日、リーバイスの担当者は「Walmartと話し合い、29.99ドルへの値上げで即座に合意した」と報告し、Amazonも「29.99ドルの価格がAmazonに反映された」と確認しました。
値上げ幅は約1.5ドル。地味に見えますが、無数の商品で繰り返されていたとすれば、まさにチリツモですよね。
ある家具メーカーに対しては、「ブラックフライデーとサイバーマンデーという重要な売上日の直前」に競合サイトの価格を引き上げなければ商品を削除する、と脅迫めいたメールも含まれています。
さらに芝生・ガーデン用品メーカーのScottsには、「プライムデー直前の3日間だけでもいいから」価格を引き上げるよう求めたメールも存在します。
つまり、大きなセールの「割引前の価格」自体をあらかじめ高く設定することで、セール中の「お得感」を演出していた可能性も浮かびます。
「電話で依頼すること」がベスト、とされていた
Amazonは今回の件をどう見ているのでしょうか。広報担当のマーク・ブラフキン氏はニューヨーク・タイムズの取材に対して、ボンタ氏が持っている「証拠」は何年も手元にあったはずの古いものだと一蹴。裁判を前に「その重要性を誇張している」と主張しており、今回の公開は「訴訟の弱さを隠したいのが見え透いている」と指摘。
一方、ボンタ氏は、これらの事例は例外ではなく、「何年もの間、多くの異なる社員や商品ラインにまたがる無数のやり取りを示す典型例だ」と反論しました。
さらに、ボンタ氏が明らかにしたAmazonの行動として、こうした価格交渉のメールでは「曖昧な表現を使うように」と指示し、望ましくは「電話で依頼すること」をベストプラクティスとして指導していた、と話します。それでもこれだけの証拠メールが残っていたことが、今回の訴訟の核心となっています。
今後の仮差止め審問は2026年7月23日に予定されており、認められればAmazonは競合他社の価格についてベンダーとやり取りすることが禁止され、裁判所が任命する独立した監視員がAmazonの行動を監督することになります。
裁判本体は2027年1月の開廷が予定されています。 なお、Amazonの価格慣行をめぐっては、カリフォルニア州の訴訟とは別に、2023年9月には連邦取引委員会(FTC)と17の州も、独占的地位の違法維持を理由とした連邦反トラスト訴訟を提起しています。複数の訴訟が同時進行しており、Amazonにとっては長期戦を強いられそうな状況です。
最もこれらは、アメリカのAmazonを舞台に行なわれていたことですが、日本のAmazonでも2024年に「表示優遇を条件に安値要求か」という報道が出ていましたね。ただこの件は、マーケットプレイスとカートボックスを巡るもので、今回の裁判とはちょっと毛色は違いそうですが…。
消費者的にはオトクに買えれば嬉しいけれど、もしどこかに「泣く泣くせざるを得ない」という人がいたとしたら…ちょっとなぁ…やっぱり気持ちよく「いい買い物したな〜!」って思いたいですもんね。
Source: Ars Technica , California Attorney General Office , CNBC

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