「 プラダを着た悪魔2 」グッズ販売で終わらない商品コラボの多様な舞台裏

記事のポイント
映画『バービー』以降、大作映画には多角的なグッズ展開が必須となった。本作は美容・ファッション業界そのものを描くため、関連ブランドにとって絶好の機会となっている。
ランコムは製品開発ではなく、作中のキャラクターを起用したSNS動画や公式パートナーとしての地位を重視。文化的な文脈とブランドのメッセージを融合させる戦略をとる。
タングルティーザーなどは、ノスタルジアを刺激する限定商品を展開。日常的なアイテムをカルチャーの接点に変えることで、新規顧客の獲得と既存ファンの維持を狙っている。
もはや盛大なプレミア上映と綿密に設計されたプレスツアーだけでは足りない。いまや、グッズ展開が不可欠なのだ。グッズの上にグッズ、そのまた上にグッズが。ブランドにとっても映画配給会社にとっても、収益とマーケティングの機会はほぼ無限だ。
これまでの「バービー」「ウィキッド ふたりの魔女」「ウィキッド 永遠の約束」とは異なり、「DWP2」は、美容・ファッションブランドにとってまさに自分たちの業界そのものを描いた作品である点で、独自の機会を提供している。
美容ブランドが「DWP2」のチャンスを掴もうとするアプローチは多岐にわたり、作品をめぐる話題はさらに大きくなっていくと予想されている。
4月初旬、エンタメ業界誌のデッドライン(Deadline)はオープニング週末の興行収入が6600万ドル(約99億円)超になると予測した。
ツイーザーマン、ディズニーとの協業を新たな次元へ
ピンセットなどの美容ツールブランド、ツイーザーマン(Tweezerman)は、ミッキーマウスとミニーマウスのコラボレーション作品を発表した2023年から、ディズニー(Disney)と協力関係にある。ディズニーは、「DWP2」の開発、製作、配給を手がけている。
その後、ツイーザーマンはディズニープリンセス、「101匹わんちゃん」「おしゃれキャット」「わんわん物語」をあしらったツイーザーのコレクションも展開してきた。
「あれらは正真正銘のディズニー作品だった。だが今回は、ファッションと美容が完璧に融合したコラボレーションだ」と、ツイーザーマンのグローバルマーケティング&デジタル担当シニアバイスプレジデントのクリスティン・パスクッロ氏は語る。
同ブランドは看板商品のピンセット、爪切り、爪やすり、まつ毛カーラーに、「DWP2」のアイコニックなモチーフ(ピッチフォーク型のヒールが付いたスティレットや、ニューヨークの摩天楼など)をあしらった。
パスクッロ氏は今回のコラボレーションを「考えるまでもないこと」だと表現した。
「我々にとって、自社ブランドに自然になじむ必要があるのだ。『プラダを着た悪魔2』はまさにその条件を満たしていた」と彼女は語る。
「とてもアイコニックなフランチャイズだが、当社のブランドにも通じるものがあると思う。これは自己表現を体現するものであり、最高の自分を引き出すものだ」。
同ブランドはニューヨークでのプレミア会場にブースを構え、出席者にはこのコレクションのギフトが贈られる予定だ。さらに、メディアやインフルエンサーを招いてコラボレーションを祝うカクテルパーティーも開催する。
ランコム、公式スキンケアパートナーとして参戦
化粧品ブランドのランコム(Lancôme)は本作とのタイアップに相当な投資を行ったとみられ、そのパートナーシップは大小さまざまなスクリーンで展開されている。
すでに、コメディアンのカレブ・ヒアロンと共演するSNS動画で、ポーリーン・シャラメに本作で実際に演じるランウェイ誌の美容エディター役を演じさせている。
このクリップはテレビCMとしても放映される予定だ。動画では、シャラメが電話越しにミランダ・プリーストリーから、ランコムの未発売の新製品「ロンジェビティMD(Longevity MD)」を入手するよう命じられる。
4月14日に投稿されたこのクリップは、すでに1万3000件以上の「いいね」を獲得している。
「キャンペーンは、適切な人材を起用し、適切な脚本を用意することで実現した」と、ランコムのゼネラルマネジャー、ラムジー・バーンズ氏は語る。
「社内チームと、俳優のライアン・レイノルズが手がけるデジタルマーケティングエージェンシーのマキシマム・エフォート(Maximum Effort)とで戦略を組み立てた」。
本作にまつわるほかのパートナーシップとは異なり、ランコムには「DWP2」ブランドの製品はない。むしろ、新製品の「ロンジェビティMD」のローンチとテーマ的な合致点を見いだし、それを生かしたとバーンズ氏は語る。
DWP2プロダクト不在でも成立した理由
「1作目の『プラダを着た悪魔』はイメージチェンジや華やかさを描いた作品だった。続編は、アイコンが何十年にもわたって自身の力、存在感、活力を高めていく姿により焦点を当てている」とバーンズ氏は語る。
「これはランコムが何者であるか、そして女性をエンパワーするという当社の役割と、極めて深く関わるものだった。当社はまた、美容とファッションの両面でトレイルブレイザー(先駆者)にも焦点を当てている。『DWP2』に登場する力強い女性キャラクターたちと、当社ブランドが(本作と)パートナーシップを組むのは、完璧な接点だと考えた」。
ほぼすべてのブランドと同じく、ランコムも文化的に重要な瞬間に登場することをめざしている。「我々は、これまで行ってきた従来のキャンペーンを、よりカルチャーと融合した形に変えようとしている。エンターテイメントを活用することは、当社にとって非常に重要だ」とバーンズ氏は語る。
「DWP2」は同ブランドにとって初めての映画とのタイアップ作品となる。バーンズ氏は、単なるプロダクトプレースメント以上の存在になれる機会が魅力だったと強調した。
ランコムとディズニーの契約により、ランコムは本作の公式スキンケアパートナーとなった。商品が映画内に登場することすら確約されていなかったが、ランコムにとってそれは問題ではなかった。
「重要だったのは、我々が使うことのできるすべての知的財産であり、撮影現場だけでなく舞台裏でも撮影が可能であることだった」とバーンズ氏は語る。
「すべてが360度フルパッケージで提供される必要があった。キャラクター、ストーリー、カルチャーといったすべてを含むものでなければならなかった」。
本作がブランドにとって意味を持ったもうひとつの理由は、ノスタルジア・マーケティングがランコムにとって有効に機能してきたことにあるとバーンズ氏は語る。
たとえば2025年の「ジューシーチューブ・キッシングウェブ」キャンペーンには、パリス・ヒルトン、エド・ウェストウィック、チャド・マイケル・マーレイ、レイチェル・ビルソンといったY2K時代のスターが登場した。あのキャンペーンの共感性が、ランコムに重要なメッセージを伝えたとバーンズ氏は語る。
「あのときに、このアプローチが当社にとって有効だと確信した」。
タングルティーザー、ノスタルジアと文化の波に乗る
ヘアブラシで知られるタングルティーザー(Tangle Teezer)は、2023年に映画「バービー」とのコラボレーションを行った。
「あれは、消費者にとっても当社のブランドにとっても、本当に意味のあるグローバルなカルチャーの瞬間に歩調を合わせた、商品パートナーシップの最初の取り組みだった」と、同ブランドのシニアブランドマネジャーのカーステン・ガーリトス氏は語る。
直近では2025年10月、タングルティーザーはアパレルブランドのスキムス(Skims)とのコラボレーションをローンチした。これにより「すでにカルチャー的に共鳴している瞬間と歩調を合わせ、ブランドにとって本物で、ブランドらしいと感じられるものを取り入れることに、より一層フォーカスするようになった」とガーリトス氏は語る。
「『プラダを着た悪魔』は単なる映画ではない。ファッションと美容のファンにとってのカルチャーの試金石だ」。
日常商品をカルチャー接点に転換
タングルティーザーの「プラダを着た悪魔」商品のコレクションには、定番のもつれほぐしブラシの赤と黒のバージョンが、オリジナルとミニのサイズで展開されている。
ランコムと同じく、タングルティーザーも初代映画にまつわるノスタルジアを強力なツールととらえた。
「このフランチャイズが文化的な会話に再び登場するのを見て、懐かしさ、ファッション、美しさが本当に自然なかたちで交わる瞬間が訪れたと感じた。多くの人が日常的に使う商品を通じて象徴的なものを祝うのに、まさに最適なタイミングだと思えた」とガーリトス氏は語る。
彼女は「バービー」のときと同じように、人々がドレスアップして上映に訪れ、タングルティーザーのブラシが小道具として登場することも期待している。タングルティーザーのコラボレーション商品は、ターゲット(Target)、アルタ・ビューティー(Ulta Beauty)、Amazonで購入可能で、同ブランドはコラボレーションを祝うカクテルパーティーも開催する。
ブランドのタイアップが大型商業映画の公開に欠かせない要素となるなか、その騒がしさや過密さに対する懸念について尋ねられたタングルティーザーの北米マーケティング責任者のキャスリーン・ムーア氏はこう語った。
「我々はそれをエキサイティングなチャンスとしてしかとらえていない。タングルティーザーをずっと愛し続けてくれている人がたくさんいることはわかっているが、まだ試したことがない人たちもいる。映画が好きな人、アン・ハサウェイが好きな人、メリル・ストリープが好きな人、(本作を)楽しみにしている人たちが、新しいお気に入りのヘアブラシに恋に落ちるかもしれない。それこそ、我々が見ているチャンスだ。それはまた、長年ご愛顧いただいているお客様に引き続きご満足いただくための方法でもある」。
なお、本記事は、タングルティーザーのパートナーシップの対象が特定の続編ではなく「プラダを着た悪魔」シリーズ全体であることを反映するため更新されている。
[原文:Glossy Pop Newsletter: 'The Devil Wears Prada 2' is the movie collaborator fashion and beauty brands were waiting for]
Sara Spruch-Feiner(翻訳、編集:藏西隆介)
