日産リーフからフィアット600eへ乗り換えて約半年 春の航続距離と回生ブレーキにおける考え方の違い
三浦半島城ヶ島まで往復351kmを一充電で快走執筆/撮影:Kaoru Kobayashi(小林薫)
愛車が日産リーフからフィアット600eに変わって約半年が経ち、EVにとって好条件の春を迎えました。コンパクトEVである600eの魅力は、何と言ってもバッテリー容量54kWhで航続距離493kmという長さ。そこで、実用的な航続距離を試すために、甲府から神奈川県三浦半島の城ヶ島へ行ってみることにしました。
【画像】春のドライブ、往復351kmを一充電で 日産リーフから乗り換えたイタリアンEV『フィアット600e』 全3枚
甲府の自宅を満充電で出発。中央自動車道に乗り、町田市を通って横浜横須賀道路で三浦半島へ向かいました。

城ヶ島の対岸にある三浦漁港。 小林薫
宿泊する予定の『ふふ城ヶ島 海風のしらべ』に着いた時、走行距離は160km、バッテリー残量68%、平均電費9.6km/kWhでした。城ヶ島の標高は甲府より250mほど低いので、良好な電費になっています。
城ヶ島では、対岸にある三浦漁港、海南神社、三崎口駅などの観光スポットを巡りましたが、追加充電なしで帰宅することができました。
もし必要なら、途中談合坂SAの急速充電スポットを利用することを考えていましたが、談合坂SAでのバッテリー残量は35%もあり、休憩するだけでそのまま甲府へ向かうことにしました。
帰宅した時、総走行距離351km、バッテリー残量23%、平均電費9.2km/kWhとなっており、航続距離の推定値は455km、バッテリーの実効値は49.5kWh。予想を越える電費値になっており、期待以上の航続距離には驚きでした。
なお、6割ほどあった高速道路はスポーツモードで、一般道はノーマルモードで走り、天候は良くエアコンはほとんど使用していません。自宅充電だけで往復できる素晴らしさと、車体重量1580kmの軽さによる電費の良さをあらためて感じました。
回生ブレーキを十分に研究、感動の走りに
14年間乗ったリーフの後継EVとして600eを迎えたわけですが、重要だったのは、回生ブレーキについての操作方法でした。
リーフでは、D/Bモードの切り替えを、シフトレバー位置にあるセレクトレバーで行えるようになっていました。それを使い、回生ブレーキの強さを頻繁に変え、14年間しっかりと楽しませてもらいました。

帰りの中央自動車道の談合坂下りSA。充電せずに帰宅できました。 小林薫
パドルシフトではそれ以上の機能があり、後継EVを検討していた際には、それがEVの究極なのではないかと思っていました。新型リーフのGグレードやトヨタのbZ4Xでは、このパドルシフトの方式を採用しています。
しかし、600eに半年乗ってみると、このクルマの回生ブレーキについての機能も、実用上魅力的ではないかと考えるようになりました。
600eの特徴はEV性能の良さですが、回生ブレーキへのこだわりも強く感じています。『EVの面白さは回生ブレーキにある』ことは言うまでもありませんが、フィアットではその機能を徹底的に研究し、感動をもたらすような快適な運転を実現させたのではないかと思います。
誰もが最初から快適な運転ができる
通常、新しいEVに試乗すると、そのクルマの特性をよく知らずに運転するので、なかなか快適な走行ができないことが多いです。特に輸入車ではそれぞれ個性的な特徴があり、その傾向は多く出ます。
しかし、この600eでは回生ブレーキのチューニングを十分にすることにより、誰もが最初から快適な運転ができるようになっています。それが最初の試乗での『感動!』をもたらしたようです。
言い換えれば、良くある強い個性が感じられないことになりますが、それこそが600eの魅力になっているのではないでしょうか。
試乗の際や乗り換えてすぐには分かりませんでしたが、そのポイントはふたつあり、電費性能の良さに加え600eの大きな特徴になっています。
フットブレーキを軽く踏むと強い回生ブレーキが
まずは、回生ブレーキの仕様です。フィアット600eには、回生ブレーキの強さについてD/Bモードの切り替えがあります。アクセル戻しでそれなりの回生ブレーキが効くだけでなく、フットブレーキを軽く踏むことによってかなり強い制動の回生ブレーキを使えます。そして、さらに強く踏み込むと油圧ブレーキになります。
なぜこのような仕様になっているのか、しばらく分りませんでした。

帰宅時の600e走行データの画面表示。 小林薫
しかし、最近になってようやく理解できてきました。このようになっていると、交差点などで停止しようとする時、まずはアクセルを戻して回生ブレーキで減速し、交差点に近づいたらフットブレーキを軽く踏み、そして最後に奥まで踏み込んで止まることになります。とても自然な操作となり、回生ブレーキを特に意識することなしに、それを十分に使うことができるのです。
また、前を走っているクルマの急な減速時でも、フットブレーキの強い回生ブレーキで、瞬時の対応が可能となります。
それに、下り坂の時などでは、アクセルとフットブレーキだけの調整により、手の操作なしで、回生ブレーキをしっかりと効かせながら下りてくることができます。
リーフでは、セレクトレバーのD/Bモード切り替えとアクセル操作によって回生ブレーキの強さを調整し、下り坂を下りてきていました。パドルシフトのEVなら、これらよりさらにいろいろな方法で操作できそうです。
効き始めのわずかな間の重要性
もうひとつは、回生ブレーキの切り替えです。最初に600eを販売店で試乗した時、アクセルを戻した時に回生ブレーキが効くまでわずかな遅れがあるのに気付きました。すぐに反応するリーフの方がさすが技術力は上なのかな、とその時は思いました。しかし、このわずかな間には大きな意味があり、あえてこのようにしたのではないかと今は考えるようになっています。
その目的は、普段回生ブレーキをBレンジに入れたままで快適に走行できるようにする為。走行中にB/Dの回生ブレーキの切り替えをしなくても済むようになっています。

600eのD/Bモードの切り替えスイッチ。 小林薫
これにより、街中でのB/Dの切り替えは、全く不要となります。
今までのリーフでは、Bレンジだとちょっとアクセルを戻しただけでブレーキが効いてしまうので、通常はDレンジで走行し、交差点などの手前でBレンジに入れていました。しかし、わずかな間があると、Bレンジの状態でも意図しないブレーキが効くことはないので、郊外の道などでもBレンジのまま快適に走行できるのです。当然ながら、走行中、左手は暇になります。
リーフはマニュアル車に近いイメージ
リーフでは、セレクトレバーを左手で頻繁に操作し、D/Bモードの切り替えをするのが面白かったのも事実です。アクセルレスポンス、回生ブレーキ、フットブレーキはそれぞれシンプルな機能になっており、ドライバーがそれを操って快適なドライビングを実現できるようになっていました。通常のエンジン車で言うところのマニュアル車に近いイメージで、パドルシフトはそれ以上に面白そうです。
一方、600eはドライバーが退屈になるぐらい上手くチューニングされており、EVであることを特に意識しなくても、回生ブレーキを十分に生かした運転ができます。これはこれでEVとしてとても魅力的なクルマだと思います。
心満たされるインテリアデザインや、高音質の音響空間と相まって、優雅なEVライフをもたらしており、600eとは素晴らしい出会いだったと感じています。
