日米両政府が米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の返還に合意して、12日で30年を迎えた。「世界一危険」といわれる海兵隊基地は今も市中心部に残ったままである。

 30年を振り返って目につくのは、沖縄の悲願に向き合わない日本政府の姿勢だ。

 返還の目的は普天間飛行場の危険性を除去し、国内の米軍専用施設の7割超が集中する沖縄の過重負担を軽減することだった。

 ただし、名護市辺野古沖に日本政府が新基地を建設し、機能を移す条件が付いた。

 新たな負担に沖縄が猛反発したのは当然だ。県民は移設反対の民意を県民投票などで示し、県は司法の場でも政府と争い抵抗した。

 それでも政府は「辺野古移設が唯一の解決策」と繰り返し、民意を顧みなかった。新基地に対する名護市長の態度によって交付金に差がついたのは、露骨な「アメとムチ」と批判されている。

 この間に県民は移設容認と反対に大きく分かれ、イデオロギーを排して官民で移設に反対する「オール沖縄」が退潮する変化が生じている。

 新基地建設は誤算続きだ。軟弱地盤に7万本を超えるくいを打ち込む難工事は遅々として進まず、総事業費の試算は当初の約2・7倍の約9300億円に増えた。さらなる増額は確実とみられ、完成時期は見通せない。

 改めて確認しておきたい。普天間返還は沖縄の基地負担を軽減するためである。

 日本の安全保障環境が厳しくなったことを挙げ、新基地の必要性を唱えるのは後付けの理屈だ。返還が実現しないのは、沖縄にとって不条理でしかない。

 近年は台湾有事を想定し、在沖縄海兵隊に新たな役割が加わったといわれる。だが日米防衛協力指針は、離島などへの陸上攻撃には自衛隊が主体的に対処し、米軍は支援や補完をすると明記している。

 イラン情勢を受け、沖縄から2千人規模の海兵隊員が現地に派遣された。日本の安全保障に、大規模な在沖縄海兵隊がどこまで必要なのか。政府に検証を求めたい。

 沖縄に駐留する米軍が一定の抑止力になっているのは確かだ。半面、県民生活にしわ寄せが及んでいる現実を直視しなくてはならない。

 米軍訓練に関係する事故に巻き込まれる被害が後を絶たない。基地の騒音、米兵が起こす事件事故の多発にも苦しめられている。沖縄の負担は限界を超えている。

 米国防総省は昨年、新基地とは別に「長い滑走路」が選定されるまで、普天間飛行場は返還されないとの見解を示した。到底認められない。

 政府は30年前の原点に立ち返り、実効性のある負担軽減策を米国と交渉すべきだ。

 本土の私たちは、沖縄の基地負担の問題に関心を持ち続けたい。抑止力と負担を国民全体で分かち合う議論も無縁ではない。