「ボーナスカットでも前向き」小さな家電メーカーで若手が育つ理由 “働く幸せ”とは?:ガイアの夜明け

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4月10日(金)に放送した「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは、「働いて、幸せになる」。

日本企業の99.7%を占め、労働人口の約7割、3200万人を抱える中小企業。それは、激動する世界の中で、大きな波に飲まれた小さな葉のように揺れ動く存在だ。
今回の「ガイアの夜明け」は、ある小さな家電メーカーを舞台に、働く人の心を通して、働くことの意味や、幸せな働き方をみつめる。
中小企業の現場にあるのは、成功物語だけではない。やりがいと同時に、規模が小ささゆえの不安、重圧…そして、そこで生きる人々の人生がある。
日本経済の足元を支える現場で、人はなぜ働き続けるのか――。その答えを、一人ひとりの物語として、描く。

【動画】「ボーナスカットでも前向き」小さな家電メーカーで若手が育つ理由 “働く幸せ”とは?

アイデア家電を生み出す「小さな家電メーカー」




埼玉・八潮市にある「シリウス」の工場。2008年創業、社員15人の小さな家電メーカーだ。
シリウスの特徴は、独自技術で開発したアイデア製品。例えば、2023年に発売した掃除機「スイトル スティック」は、ティッシュをフィルター代わりにでき、手入れを簡単にした。


今開発しているのは、次世代型ヘッドホン。耳に付けるのではなく、耳の近くにスピーカーを置くというのが独自のコンセプトだ。
シリウスは常にヒットを狙っており、当たれば儲かるが、直近は4期連続の赤字。不安定な経営が続いている。


2025年12月、シリウスの亀井隆平社長(61)は、社員を一人ずつ呼び出していた。
大手企業のボーナスが過去最高を記録する中、シリウスは冬のボーナスを4分の1カット。亀井さんも苦渋の決断で、社員に「絶対に取り返す」と告げる。
これが多くの中小企業の現実だが、社員たちは「私たちが入社してからは(ボーナスカットは)初めて。むしろ、もらえていたのはありがたい」「返してくれるかも僕たちの働き次第。先行投資」と、なぜかみんな前向きだ。

入社4年目で大抜擢の“ハタちゃん”




2025年4月、シリウスの本社(東京・台東区)。この日は入社式で、新入社員は高卒の2人。
シリウスではここ数年、会社の若返りを図っている。


亀井さんは元「三洋電機」の営業担当で、大企業の戦士として世界中を飛び回っていた。
しかし2011年、三洋電機は業績が悪化し、パナソニックの完全子会社に。亀井さんは同年、早期退職し、シリウスの経営に参加した。
シリウスとは、夜空で一際輝く星の名だ。
「休みが多くて給料が高い、それが一番いいとは思う。ただその会社が、何に向かって進んでいるのか。我々は『社会の困った』を解決して、喜んでもらえる商品をつくっているので、やりがいにつながる。誇りに思って仕事をするのが一番」(亀井さん)。


シリウスの主力製品が活躍しているのが、介護施設。
2024年に発売した「スイトル ボディ」は、わずか1リットルの水で全身を洗うことができ、独自の技術で、洗った水を同時に吸い込むことができる。
ベッドに寝たままシャワーが浴びられるため、入浴介助は15分ほどで済む。


商品の販売促進を任されているのは、高校を卒業後に入社し、4年目を迎えた畠澤美玖さん(22)だ。畠澤さんはコロナ禍での就職活動を強いられ、業種の選択肢は多くなかったという。
「就職する以外に美容の専門学校も考えていた。社長の話や(高校に)来てくれたのも、運だと思ってシリウスにした」。

そんな畠澤さんに転機が訪れる。2025年夏、「大阪・関西万博」でシリウスの出展が決まり、その案内役に抜擢されたのだ。
展示できるのはわずか1週間。社長の亀井さんは「スイトル ボディ」をヒット商品にしたいが、この頃、販売が伸び悩んでいた。そこで、万博を起爆剤にしようと考えたのだ。


出展するのは、未来型の「スイトル ボディ」。この機械は、吸い込んだ空気を冷却することで結露させ、水を製造。その水で洗浄し、洗浄後はすぐに回収。それを濾過することで、何度でも再利用することを目指している。災害現場や水のない場所で使えるのが特徴だ。


万博出展が1カ月後に迫ったこの日、畠澤さんは、会場で流すPR動画を亀井さんと上司の高橋秀行さんに見てもらうことに。世の中に「スイトル ボディ」を広めるため、畠澤さんがゼロから企画した動画だ。
「たった1リットルの水で、頭の先から足の先まで洗える、それを端々に訴求したい。一世一代の1週間だから、シリウスにとって。名誉はある、だけど何の問い合わせもないのは寂しい」(亀井さん)。


万博が終わりに近づいた9月30日、会場に畠澤さんと高橋さんがやって来た。
舞台は、人気の会場の一つ「大阪ヘルスケアパビリオン」。「健康と医療」がテーマのパビリオンで、館内は連日熱気を帯びていた。
1週間の期間限定とはいえ、畠澤さんはここで「スイトル ボディ」をPRできる。

シリウスに割り当てられたのは、中小企業が共同で展示する場所で、50型のモニターが一つだけ。予算の都合上、展示物も出せない。
興味をもってもらえるかどうかは畠澤さんにかかっていたが、客は展示があることすら気づいていないのか、誰も足を止めてくれない…。
畠澤さんは客に声もかけられず、手応えがないままあっという間に1週間が過ぎてしまった。
「いつまでも『(若手を)お客さん扱い』できる会社じゃない。人間は任せたら一生懸命にやる。それで成長する」(亀井さん)。


2026年1月。畠澤さんは苦い経験を糧に変えようと、業務の合間、台湾出身の社員に頼んで英会話のレッスンを始めた。万博で、英語の必要性を実感したからだ。
こうして迎えた2月下旬、「東京ビッグサイト」。畠澤さんにリベンジの機会がやってきた。
「東京ケアウィーク‘26」は、約360社が参加する日本最大級の介護に特化したイベントで、最新の設備やサービスが一堂に展示される。
今回は、入社1年目の後輩・炭谷流星さんも一緒。ここでも「スイトル ボディ」を売り込むが、畠澤さんは自信を持ってアピールできるのか――。

大企業から転職…“嫌われ者”に徹するなか中国で問題発生




畠澤さんが販売促進で奮闘する中、売れ行きが悪くなっていた「スイトル ボディ」に追い風が吹いていた。
「スイトル ボディ」は1台20万円ほどするが、介護事業所などが購入する場合、最大100%補助の対象になったのだ。シリウスはこれを好機と捉え、「スイトル ボディ」を増産することに。


その責任者に抜擢された社員が、2年前シリウスに転職してきた品質管理の小堺真吾さん(52)だ。以前は大手オーディオ機器メーカー「オンキヨー」に勤めていたが、業績不振をきっかけに早期退職した。

2026年1月、中国・深圳。小堺さんは「スイトル ボディ」の量産に向け、現地工場を視察する。名だたる企業を顧客に持つ工場だ。


この工場には「スイトル ボディ」の製造ラインもあり、工場が移転したため、小堺さんは品質に問題がないかチェックする。そして早速、気になる点が…。
オンキヨー時代も品質管理を担当していた小堺さんの見る目は確かで、製造ラインで立て続けに不具合を見つけていく。さらに、決定的な問題も発覚。工場側は急きょ生産ラインをストップさせ、担当の工員を全員、帰宅させることに。この事態を受け、小堺さんと話し合いの場が設けられるが、工場側から出てきたのは思わぬ指摘だった――。


番組ではこの他、シリウスを支え続けた圓乗 正さん(67)が勇退するまでの日々に密着する。

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