「ただの日本人に興味ありません」話題の帝国ホテル京都を見てわかった…!日本のホテル業界に起こる「大いなる変革」

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3月初旬、京都の祇園に「帝国ホテル京都」が開業した。帝国ホテルにとって京都進出は長年の悲願で、これで4軒(東京・上高地・京都・大阪)の体制となった。

世界的な旅行目的地ランキングでつねに上位にランクされる京都は、この10年ほどで多くの外資系ラグジュアリーブランドが参入し、いまや「ホテルの魅力度」では世界有数となっている。そこに参入した帝国ホテル京都。ライバルの外資系とどう競っていくのか。

「これほどのインパクトは久しぶりだ」

これほど外観にインパクトのある新ホテルをみるのは、久しぶりだ。

祇園の芸妓・舞妓のための劇場兼文化施設として昭和11年(1936)に建てられた、城郭建築をモチーフとした和洋折衷様式の弥栄会館(国の登録有形文化財、市の歴史的風致形成建造物)。花街のシンボルとして親しまれてきたそのレガシー建築を保存活用して開発されたのが、帝国ホテル京都である。弥栄会館所有者の学校法人八坂女紅場(にょこうば)学園から土地を賃借して、帝国ホテルが建物を開発して経営する。

京都名物「都をどり」の披露舞台として知られる祇園甲部歌舞練場、それと同敷地内にあったのが弥栄会館だが、老朽化や耐震強度不足から2010年代になると展示場などを除いて利用されなくなっていた。

建築の特徴的な正面(南面)・側面(西面)の外構、望楼などを保存活用しながら、そっくり内部をつくり替えるという難工事のすえに、帝国ホテル京都は完成した(設計・施工は大林組)。以前、解体工事のようすをNHK番組「解体キングダム」が紹介したが、ご覧になった方も多いだろう。

伝統的な建築意匠のホテルとしては箱根の富士屋ホテル、奈良ホテルなどが知られているが、帝国ホテル京都は、それらとはまた異なったユニークでノスタルジックな外観意匠だ。

どこか、大正期生まれの帝国ホテル2代目本館「ライト館」に似たニュアンスも感じられる。これは偶然らしいが、再利用された外壁のタイルや装飾テラコッタは、ライト館とおなじ愛知県常滑市の伊奈製陶(元帝国ホテル煉瓦製作所、現INAX)で焼かれたものだ。奇遇というほかない。

「史上初の和室も」欧米客を強く意識か

外資系ラグジュアリーブランドの集積が急速に進んだ京都では、国内系ホテルの存在が霞んでいる。そこに参入した帝国ホテル京都は、富裕層の獲得で外資系と十分に競える55室のスモールラグジュアリーホテルとして誕生した。

最小客室(50平方メートル程度)の最低料金は16万円ほどだ。もっとも高いのは「インペリアルスイート」の300万円で、128平方メートルの客室には65平方メートルのガゼボ(東屋)と広いバルコニーがつき、祇園の街並みが一望できる。

また帝国ホテルとしては史上初の和室も設けていて、畳敷きの床に低床ベッドを置く。かつては日本人客むけにつくられたホテルの和室だが、いまでは「日本の情緒を味わいたい」と和室を指定する欧米客も少なくない。もう彼らも、靴を脱いで部屋に入ることも、箸を使うこともあたりまえに受け入れている。

これほどインバウンド旅行が伸びる以前には、100室以下のスモールラグジュアリーの運営は、市場性でも安定運営の面でも日本では難しいとされていた。しかしいまは京都人気が世界的になって海外富裕層が押し寄せているので、そこに向けてのマーケティングが成立する。

インバウンド隆盛が日本の宿泊産業にもたらした「革命」といえるだろう。観光公害も叫ばれる京都のインバウンド旅行は、数でなく質、つまり準富裕層〜富裕層市場の拡大が重要テーマとなっている。

ちなみに2036年に登場する「帝国ホテル東京」の4代目本館もまた、さらなる高単価路線を目指すと予想される。高度成長期〜バブル期の旺盛な企業需要のうえに成立していた「巨大な高級ホテル」業態は、もう過去のものとなりつつある。

帝国ホテル京都、すでにライバルも…

京都の高級ホテルエリアは、鴨川西側の市街中心部と、東山一帯に集中していて、祇園エリアはこれまでエアポケットだった。そこに進出したのが帝国だが、もう1軒、スモールラグジュアリーの新ブランドが帝国とほぼ同時に、祇園に隣接した宮川町に登場した。

シンガポール拠点のカペラホテルズ&リゾーツが運営する「カペラホテル京都」である。全89室の客室は広さが帝国と同様に50平方メートル以上で、29室あるスイートルームには専用温泉風呂を備えたものも6室ある。最低料金が20万円程度と帝国を超える。こちらは京町家を想わせる外構一階の意匠が印象的だ。帝国ホテル京都とは直接のライバルとして競っていくことになる。

帝国ホテル京都の最低客室料金16万円は、競合するフォーシーズンズホテル京都の18万円、上記のカペラホテル京都の20万円、ザ・リッツ・カールトン京都の20万円、パークハイアット京都の30万円、アマン京都の同40万円というところと比べればまだ割安といえる(各ホテル最低料金は目安)。

京都のラグジュアリーホテルでは、最低料金でも1桁で泊まれる客室はもはや存在しない。筆者はじめ庶民が利用しようと思えば「清水の舞台から飛び降りる」覚悟が必要だ。

なお京都市は今年3月1日から「宿泊税」を改定し、従来は10万円以上の宿泊料金で1000円だった税額が一気に1万円となった。この稿で紹介しているラグジュアリークラスであれば、いずれも1万円が徴収されることになる。改定の結果、2025年度で約52億円だった宿泊税収入が、今年度は126億円になると見込まれる。

また、ここ最近のホテル業界では、帝国ホテル京都のように、レガシー建築や名庭園を活用した開発事例がこの10年ほどで数多くみられている。背景にはなにがあるのか。【後編記事】『京都ばかりで「日本人すら泊まれない超高級ホテル」の開発が加速する“根本的な”理由』へつづく。

【つづきを読む】京都ばかりで「日本人すら泊まれない超高級ホテル」の開発が加速する”根本的な”理由