太い幹を枝分かれさせて大きくして、人生で何があっても、進んでた枝が折れてしまっても、別の枝に進めばいい。そうやって選択肢を持てる状態を子どもに残したいと思っています」

 だからこそ、海外に出る意義があるとかかさんは続けます。

「英語を学ぶことが目的ではなくて、そこで出会う人や、見たことのない景色や食べ物、そういう一つひとつが選択肢になるんです。でも、それは親自身も見ていないと、子どもに示すことができない。だからまずは親が世界を知ることが大切だと思っています」

 その言葉を聞いて、かかさんがこれまで見てきた世界の広さを感じました。

 実際にかかさんは、娘さんとの世界一周を終えた後も、親子で海外での生活を続けながら、カンボジアに学校をつくったり、セブ島で貧困層への支援活動を行ったりしてこられました。さらに現在はセブ島で、語学学校オープンに向けて準備をされています。

 さまざまな経験を重ねて、枠に囚われない生き方や子育てを実践しているからこそ、説得力のある言葉でした。

◆「遅れさせてはいけない」という焦りは本当に未来につながっているのか?

 海外での生活が始まってから、もうひとつ、ずっと頭の中にあるのが子どもたちの学びのことです。

 いつか日本に帰るときが来るのに備えて、日本の学習要領に沿って、しっかりフォローしていくべきなのか。私は子どもたちに、日本での学習に遅れがないように問題集を揃えて、朝の時間に解かせたりしています。

 でも、現地の学校の学習もあるなか、日本の学習も並行してやっていくのは大変で……。

 そんなお話を対談でしたとき、対照的な考え方に触れました。かかさんは、まったく違う視点を持っていました。

 かかさんに娘さんの日本の学習についてどうしているのか尋ねると、

「本人がやりたいと思っていないことは、無理にやらせていません。それよりも、その子が今、何に興味を持っているかのほうが大事だと思っています。極端な話、今やっている勉強が10年後、本当に必要かといわれたら、そうじゃないものも多いと思うんです。10年後の日本の世界で、漢字を書けることがどのくらい求められているでしょうか」

 さらに、こんな言葉もありました。

「どうしても高校や大学進学をゴールに考えてしまうと、そこから逆算して焦ってしまう。でも私は、小学生で起業する道があってもいいと思っています。そのための支援はどれだけでもしたい。人生のゴールを大学進学に置いていません。大学は本人が学びたいと思ったときに、いつでも行けると思っています」

 さすが、かかさんの視野はどこまでも広いというのを痛感しました。

◆環境を変えるだけでは変わらない、子育ての本質とは

 教育について考える中で、もうひとつ、私の中で大きかったのが、息子のことでした。

 日本の私立の小学校に通っていた頃、息子はしゃべりすぎてしまう性格で、和を乱し周りと対立することがありました。うまく馴染めず自己肯定感がどんどん下がってしまっていました。

 ハワイに来て、多様性が受け入れられる環境に変わり、ひとつの価値観に縛られず、もちろんよかった面もあります。個性が受け入れられて、少しはラクになるのではないかと思っていました。

 けれど実際には――環境が変わっても、うまく言葉にできず、気持ちがあふれてしまい、キレてしまうということがあって。

 そんな彼を受け入れてくれる世界はどこにもない。だから直さなきゃいけない部分ではあり、どうしていいのか悩んでいました。

 そんな息子の様子をかかさんに相談したとき、こんな言葉をかけていただきました。

「きっと、頭の中の言語化がまだうまくできていないんだと思います。言いたいことはあるのに、それをどう表現していいかわからないから、行動で出てしまう。もし私の娘が同じ状況であったら、家庭の中でとことん言葉にする手助けをします。“本当はどうしたかったの?”って、一緒に整理していく。