DIY未経験で「家」を自作「ローンに縛られない自由」わずか7畳の動く家に夫婦で6年暮らした幸福の正体
「一生ローンに縛られるのか」。物価高や家賃高騰が続く今、住まいは安心ではなく「重荷」になっていないでしょうか。電動工具すら触ったことがない「DIY未経験」から、「動く家」を自作し、7畳で夫婦暮らしを営む相馬由季さん。常識を捨て、あえて極小空間を選んで見えた「縛られない自由」と安堵の形を追います。
【写真】「わずか7畳」にキッチンやソファーも完備!未経験で建てた「理想の家」の全貌(全11枚)
「不器用な私」が、2年かけて家を建てた理由
── 最近は賃貸の家賃高騰が話題ですが、相馬さんは「タイニーハウス」(極小住宅)を自作し、夫婦で暮らして6年になるそうですね。そもそもタイニーハウスはアメリカ発祥でリーマンショックを機に広がったそうですが、どんな家なのでしょうか?
相馬さん:明確な定義はないですが、主に10~25平米前後の小さな家を指し、基礎付きのタイプ(一般の住宅と同じように土地に定着するもの)と、移動できるタイプ(シャーシという車台の上に建てられたもの)があります。私は後者の移動式で、7畳の家に住んでいます。
── タイニーハウスはどんなきっかけで知ったのですか?
相馬さん:2014年ごろに読んだ記事で、アメリカ人が自作でタイニーハウスを作り、各地を移動しながら暮らしていると知りました。「家を建てても自由に動ける気軽さ」に惹かれました。同時に「家=一生その場所に縛られるもの」という思い込みが外れたんです。
── とはいえ、家を自作となるとハードルが高そうです。
相馬さん:DIYの経験もなく不器用な私ですが、ワークショップに半年通って、基本的な道具の使い方を学びました。図面も国内にはなかったので、海外のものを参考に、知人の設計士さんにアドバイスをもらって自分で引きました。電動工具も怖くて毎回ビクビクしていましたが、地味な作業をコツコツ2年続けました。屋根や水回り、資格が必要な電気工事はプロにお願いしましたが、それ以外はほぼ一人で作りました。
35年ローンを組んで大きな家を建てるというプレッシャーがないぶん、精神的なゆとりは大きいですね。不具合があっても構造を知っているから自分で直せますし、手狭になれば、もう1台作ればいい。その身軽さが私には合っていました。
7畳に夫婦2人。狭さは「窮屈」ではない?
── 7畳にキッチン、トイレ、シャワー、さらにロフトまで。夫婦2人で暮らすには、さすがに狭くないですか?
相馬さん:コンパクトなため、物理的に夫との距離は近いですが、ロフトをプライベート空間にしているので適度な距離感は保てています。掃除も一瞬で終わりますし(笑)、自分が作った家なので愛着があり、「相棒」に見守られているような幸福感があるんです。
── 旦那さんは、この暮らしをどう受け止めていたのでしょう。
相馬さん:当初から夫の反対はありませんでした。彼は登山をするので狭いテントのような狭い空間にも慣れていたのかもしれません。料理上手な彼のためにキッチンを広く、天井を高く設計変更したんです。
「そのときに考えればいい」という生き方の余白
── もし今後、ライフステージが変わって家が手狭になったら?
相馬さん:そのときに考えればいい、と思っています。部屋を増築してもいいし、もう1台作ってもいい。大きな家が欲しくなれば、「こうしなきゃいけない」という縛りがないのが、タイニーハウスのよさですから。
── もし、タイニーハウスに興味を持った方がいらしたら、何かアドバイスはありますか?
相馬さん:いきなり自作で家を作るのは大変ですが、今はタイニーハウスに滞在できる宿もあります。大きなローンを背負う前に、一度「本当に必要な広さ」を体感してみる。それだけで、生き方の選択肢は広がるはずですよ。
…
大きな家がよくなったらそのときに考えればいい。相馬さんのその言葉は、何かに縛られるように生きてきた私たちの心を、ふっと軽くしてくれます。
一生続く住宅ローンや、終わりのない家事。私たちはいつの間にか、「家」を快適な場所にすることよりも、「家」を維持することに疲れ果ててはいないでしょうか。もし、今のあなたにとって本当に必要な広さが「7畳」だとしたら、その余ったスペースには、どんな心の余裕が生まれると思いますか?
取材・文:小山内麗香 写真:相馬由季

