一度は食べたいとんかつ名店巡り!東京7店舗の伝統製法と素材へのこだわりを紹介
いくつになっても心が踊る永遠のご馳走「とんかつ」。なかでも、その味が長年に渡って愛されてきた“名店”にはやっぱり一度は訪れたい!お肉に始まり衣や油など、素材へのこだわりから下拵え、揚げ方まで。作り手のこだわりが詰まった逸品の数々に、虜になること必至です!
軽やかな衣の上質なおいしさが最後まで続く『とんかつ すぎ田』@蔵前
とんかつ、ロース約160g。それは最初のひと口目から最後のひと切れまでおいしさが続く、軽やかで食べ疲れないサイズ感。極厚だレアだと流行を追う店も多いなか、変わらず気負わず2代目の佐藤さんが先代のスタイルを守っている。
プロの極意は数多いが、強調すべきは温度が違うふたつの油鍋を使い分ける三度揚げだろう。肉の余分な脂を削ぎ落とし、地元の老舗パン屋から仕入れる細かめのパン粉をまとわせてから、最初は中温で旨みを閉じ込め、次に低温でじっくり、最後はまた中温でカラリと揚げる。特にロースは肉本来の味と嚙み応えを楽しめるようしっかりめの火入れを意識するそう。
とんかつロース2700円、ごはん300円、豚汁200円

『とんかつ すぎ田』とんかつロース 2700円、ごはん 300円、豚汁 200円 カリッとした薄衣が特徴。パン粉は老舗パン屋「ペリカン」から。豚肉は千葉産中心。創業時と同じ信頼の業者から質のいいものを仕入れる
さらに米のおいしさにもこだわっており、生産者指定で仕入れる品質の良さはもちろん、炊きたての風味を保てるようお櫃を湯煎して保温するなど繊細な配慮が何ともニクい。とんかつはやっぱり白飯が最高の相棒、日本の味だよなぁ。改めてそう思わせてくれる店だ。
【名店の証】

『とんかつ すぎ田』約140度と約170度のふたつの油の鍋を使い分けて三度揚げ。油切れが良く軽やかに仕上がるという
約140度と約170度のふたつの油の鍋を使い分けて三度揚げ。油切れが良く軽やかに仕上がるという。

『とんかつ すぎ田』店主 佐藤光朗さん
店主:佐藤光朗さん「色や温度など全てを総合して仕上がりを見極めています」

『とんかつ すぎ田』
[店名]『とんかつ すぎ田』
[住所]東京都台東区寿3-8-3
[電話]03-3844-5529
[営業時間]11時半〜14時(13時45分LO)、17時〜20時半(20時頃LO、材料がなくなり次第終了)
[休日]木・他不定休
[交通]都営大江戸線蔵前駅A5出口から徒歩3分など
時代を越えて愛され続ける箸で切れるとんかつ『井泉』@湯島
昭和5年の創業時は今と違って豚肉が硬かったため、「何とか柔らかく作れないか」と初代が試行錯誤で完成させたのが店の謳い文句である「お箸で切れるやわらかいとんかつ」だ。
ヒレかつ定食2200円(単品は1700円)

『井泉』ヒレかつ定食 2200円(単品は1700円) 王道のきつね色と美しい楕円形が目を引く。サクッと心地よく歯が入る柔らかさだ。パン粉は糖度控えめのパンを特注し、店で挽いている
肉を叩くことで柔らかく歯切れのいい独特の食感を生むのだが、その微妙な加減は機械では到底できないまさに職人技。肉の状態を見て、人の手による感覚で伝統の味を今に伝えている。毎日店で挽きたての自家製生パン粉を使うのも特徴で、水分を多く含むのでしっとりサクッとした仕上がりになるとか。
さて『井泉』といえばの元祖「かつサンド」は明治生まれのハイカラな初代女将が考案した逸品。当時は下谷花柳界の芸者が店のお座敷に出入りしており、彼女らの口紅が取れないよう、大口を開けなくていいよう、小ぶりのパンを特注して作ったのが始まり。粋な物語も一緒に、とくと味わいたい。
【名店の証】

『井泉』ヒレかつ定食 2200円(単品は1700円) 手の感覚で肉を叩いて独特の柔らかさに。8割ほど火入れして余熱で仕上げる。パン粉も自家製
手の感覚で肉を叩いて独特の柔らかさに。8割ほど火入れして余熱で仕上げる。パン粉も自家製。

『井泉』料理長 冨永健司さん
料理長:冨永健司さん「味も雰囲気も変わらないことを大事にしています」

『井泉』
[店名]『井泉』
[住所]東京都文京区湯島3-40-3
[電話]03-3834-2901
[営業時間]11時半〜15時(14時50分LO)、16時半〜20時10分(19時45分LO)
[休日]水※水が祝の場合は営
[交通]地下鉄銀座線上野広小路駅A4出口から徒歩1分など
計算されたバランスのいい味わいに惚れる『ポンチ軒』@小川町
どこからどう眺めても完璧な揚げ上がり。中心部はほんのり桃色を覗かせ、まるでこちらを誘惑するかのようだ。たまらず頬張れば柔らかくしっとりした舌触り、甘美な脂にもうイチコロ。これぞ名店の味、『ポンチ軒』の特ロースである。
ロース豚かつ定食(昼)特2600円※ご飯・豚汁・漬物付き、キムチは食べ放題

『ポンチ軒』ロース豚かつ定食(昼) 特2600円 ※ご飯・豚汁・漬物付き、キムチは食べ放題 肉厚の特ロースは衣もサクサクの仕上がりで脂と赤身の旨みのバランスがいい。揚げ油は植物性の数種を独自にブレンド。海鮮などを揚げるのはコクのあるラードを使う
揚げ物なのに重くない味わいは計算されたバランスゆえだ。さっぱり繊細な肉質の豚肉を厳選しているため、なるべくその味を邪魔しないよう揚げ油はクセのない植物性をブレンド。低温から火入れし、徐々に温度を上げながら高温でフィニッシュ、余熱で絶妙な塩梅に仕上げる。
パン粉も素材が引きたつ&焦げにくい糖分・塩分が控えめのものを特注するとか。そう、昔ながらのとんかつの味を踏襲しつつ、肉料理としての高い完成度を追求しているのだ。
2種のソースや岩塩のほか、オリジナルの柚子ペッパーソースなど変化球の味変もヒット!
【名店の証】

『ポンチ軒』低めの油から高温で仕上げる手法が特徴で、植物油の配合とパン粉の調整でバランスよく仕上げる
低めの油から高温で仕上げる手法が特徴で、植物油の配合とパン粉の調整でバランスよく仕上げる。

『ポンチ軒』店長 橋本正幸さん
店長:橋本正幸さん「夜は揚げ物&豚しゃぶなど居酒屋的に楽しめます」

『ポンチ軒』
[店名]『ポンチ軒』
[住所]東京都千代田区神田小川町2-8扇ビル1階
[電話]03-3293-2110
[営業時間]11時15分〜14時半(14時LO)、17時半〜21時(20時半LO)
[休日]日
[交通]都営新宿線小川町駅B5出口などから徒歩3分
激戦区の人気店はボリュームよしコスパもよし『まるやま食堂 蒲田本店』@蒲田
とんかつ激戦区の蒲田からは地元御三家の1軒をご紹介しよう。創業は50年ほど前。当初は刺身や煮付けも出す大衆食堂だったが、今やとんかつが看板。豚肉は上質な千葉産「林SPF」を使い、極上ロースなら生肉で約280g、衣を付けて揚げれば400gにも迫るボリュームだ。しかもそのコスパたるや。
極上ロースとんかつ定食2000円※ライス・味噌汁付き、写真はとん汁に変更+300円

『まるやま食堂 蒲田本店』極上ロースとんかつ定食 2000円 ※ライス・味噌汁付き、写真はとん汁に変更+300円 ラード100%で揚げれば文字通り衣カリッと中しっとりの仕上がり。嚙めば脂の旨みがほとばしる!とん汁は具だくさん
「うちはもともと気軽な食堂だからね」とは2代目、その心意気にうれしくなってくる。
さあさあ皿に横たわるワイルドな姿に肩を回して挑めば口中が旨みの渋滞。カリッと歯に響く衣の香ばしい揚げ色も食欲をそそり、頬張るほどにお腹も心も満ちてくる。
なるほど連日の行列も納得、多い日は1日約100kgの肉が出るとか、ひえ〜。しかも日によって「TOKYO X」や「マンガリッツァ豚」など超希少な限定肉も品書きにあるとあればそりゃ並ぶわ。蒲田へ急げ!
【名店の証】

『まるやま食堂 蒲田本店』「林SPF」を惜しげもなく使う。上質な肉の味を生かすため仕込みにあまり手を加え過ぎないそう
「林SPF」を惜しげもなく使う。上質な肉の味を生かすため仕込みにあまり手を加え過ぎないそう。

『まるやま食堂 蒲田本店』店主 丸山陽平さん
店主:丸山陽平さん「かつ以外に生姜焼きも名物。雑色店もあります」

『まるやま食堂 蒲田本店』
[店名]『まるやま食堂 蒲田本店』
[住所]東京都大田区蒲田5-2-7渡辺ビル1階
[電話]非公開
[営業時間]11時〜15時、16時〜21時
[休日]日
[交通]JR京浜東北線ほか蒲田駅東口から徒歩3分
かつもツキも“あげる”!神楽坂の行列店『あげづき』@飯田橋
「皆様のツキが上がり(揚がり)ますように」。
店名の由来がこれ。そんな縁起の良さと圧倒的なおいしさ、加えて勝負に“かつ”というゲン担ぎで全国からとんかつファンが訪れる神楽坂の隠れたパワースポットである。
店主があらゆる豚肉を食べ比べて選んだ看板食材が宮崎の希少な銘柄「南の島豚」だ。脂身の融点が低いため口の中でスッと溶けるような甘みがあるのが特徴で、赤身は実に濃厚、噛むほどに旨みが湧き出る。それを胃もたれしないよう高級ラードにオリーブオイルなどを配合した独自の油でじっくり二度揚げするのがこの店流だ。
南の島豚ロースかつ2640円(数量限定)※定食(ご飯・お味噌汁・お新香・1品)は+450円

『あげづき』南の島豚ロースかつ 2640円(数量限定) ※定食(ご飯・お味噌汁・お新香・1品)は+450円 肉をふわりと包み込むやや白めの衣も特徴。水分を逃さない粉の付け方など肉の魅力を引き出すよう全てにこだわる。「南の島豚」は宮崎の「永田種豚場」のみで生産される希少な銘柄。都内ではあまり出回っていないため、これ目当てに来る人も
富岡料理長曰く「理想の仕上がりはエッジの効いた衣で肉はふんわり」、そのため一度に揚げる枚数を制限するなど数々の工夫をしているそう。
ということで思い立ったら “あげづき詣で”。かつもツキも最高に揚げ&上げてくれるはず!
【名店の証】

『あげづき』「南の島豚」は旨みと脂身の甘みが抜群。揚げる枚数を制限して20分ほどかけてじっくり二度揚げ
「南の島豚」は旨みと脂身の甘みが抜群。揚げる枚数を制限して20分ほどかけてじっくり二度揚げ。

『あげづき』料理長 富岡敬晶さん
料理長:富岡敬晶さん「とんかつ人生は約20年になります」

『あげづき』
[店名]『あげづき』
[住所]東京都新宿区神楽坂3-2山ノ内ビル地下1階
[電話]03-6265-0029
[営業時間]11時半〜14時LO、17時半〜21時LO※土・日・祝の昼は14時半LO、日・祝の夜は20時半LO、いずれも売り切れ次第終了
[休日]火
[交通]地下鉄有楽町線ほか飯田橋駅B3出口などから徒歩3分
黒豚と向き合う真摯な姿勢が美味を生む!『とんかつ いわい』@大門
ひと言でいえば愛にあふれたとんかつだ。
厚切りロースかつ定食(ご飯・黒豚のとん汁・ゆず大根・ポテトサラダ付き、数量限定)3450円※昼はセット内容が違って3400円

『とんかつ いわい』厚切りロースかつ定食(ご飯・黒豚のとん汁・ゆず大根・ポテトサラダ付き、数量限定) 3450円 ※昼はセット内容が違って3400円 オリジナルの食べ方は茎山葵+鹿児島の甘口醤油。肉の旨みにピリッとアクセントが加わって美味。ロースは右端から味わうのが店主のおすすめで、それを想定して計算した火入れにするという
店主の岩井さんは「脂の甘みと旨みが素晴らしい!」と自身が惚れ込んだ鹿児島産「六白黒豚」を「F1ならフェラーリ」と称し、「操縦者=自分の能力を高め、肉の評価をもっと上げたい」と日々研究。
誠実な仕事は皿上の至宝を味わえばわかるはず。例えばこんなことだ。ラードは温度上昇が早いタイプとコクがあるものを独自に配合、朝夕で異なる油の状態や鍋内の位置でも変わる温度を考慮した緻密な火入れ、脂と赤身をバランスよく味わえる厚みの調整、等々。
低温から静か〜に揚げる肉はまるで温泉に浸かっているかのように気持ちよさそうで、それを客が食べ始める1分1秒まで逆算して仕上げる配慮にも脱帽だ。
ちなみにパン粉はフードロスを防ぐためあえて耳入り。とんかつを愛する料理人は環境へのやさしさも忘れない。感服。
【名店の証】

『とんかつ いわい』一番の特徴は「六白黒豚の旨さ」と言う。約120度の低温から揚げ始め、温度を調整しつつ仕上げる
一番の特徴は「六白黒豚の旨さ」と言う。約120度の低温から揚げ始め、温度を調整しつつ仕上げる。

『とんかつ いわい』店主 岩井三博さん
店主:岩井三博さん「とんかつをあらゆる形で表現していきたいと思います」

『とんかつ いわい』
[店名]『とんかつ いわい』
[住所]東京都港区芝公園2-3-7玉川ビル2階
[電話]03-6809-1529(営業中は対応不可)
[営業時間]11時半〜14時半(13時45分LO)、17時半〜21時(19時45分LO)※売り切れ次第終了、土・祝は昼のみ
[休日]日
[交通]都営浅草線ほか大門駅A6出口から徒歩3分
これぞ達人の技、丁寧な仕事で作る絶品とんかつ『洋食・ワイン フリッツ』@春日
店主の田苗見さんが近年進化させたという推しかつはヒレ。特別な銘柄豚を使う訳でもない。なのに何なんだ、この高クオリティは!
ヒレとんかつセット3000円(ランチ・季節野菜のサラダ・デザートまたはコーヒー付き、夜はひと口ヒレかつ1個650円)

『洋食・ワイン フリッツ』ヒレとんかつセット 3000円(ランチ・季節野菜のサラダ・デザートまたはコーヒー付き、夜はひと口ヒレかつ 1個 650円) ヒレは柔らかくてクセのないUS産。包丁の背で繊維を切るように少々叩いてから揚げる。粉は薄く、パン粉はたっぷり付けるのがコツ。低温で揚げるため、火入れ時間と余熱を長めにしてジューシーに仕上げる。塩・胡椒の下味が付いているのでそのままでも旨い。ワインとも合う!
ロゼの断面にうっすら滲む旨みの肉汁、ピンと立った黄金の衣、柔肌をむぎゅっと噛み締めれば実にジューシーで……書いてるそばから生つばゴクリ。揚げ物の達人&洋食の料理人の優れた技量を見せつけられた気分になる。
秘密は肉の血抜きをやり過ぎないこと。水分が抜けず身質がしっとりするという。さらに以前よりも低温から揚げるように変え、肉にストレスをかけずに火入れすることでふくよかな旨みを内に湛えた仕上がりに。
パン粉は立ちと色付きがいい糖度高めのもの。ふむ、数々の美味の仕掛けに感心しきりなのである。一方、ロースに使うのは銘柄「美明豚」。こちらも丁寧な仕事と工夫は当然、それがきちんと味に表れている。
【名店の証】

『洋食・ワイン フリッツ』細部まで丁寧な仕事は洋食の料理人ならでは。毛抜きで肉の血管を取るなど繊細な仕込みに感動
細部まで丁寧な仕事は洋食の料理人ならでは。毛抜きで肉の血管を取るなど繊細な仕込みに感動。

『洋食・ワイン フリッツ』店主 田苗見賢太さん
店主:田苗見賢太さん「店は今年で開店10周年になります!」

『洋食・ワイン フリッツ』
[店名]『洋食・ワイン フリッツ』
[住所]東京都文京区小石川2-25-16リリオ小石川2階
[電話]03-3830-0235
[営業時間]11時半〜14時LO、18時〜21時※日祝の夜は〜20時
[休日]月
[交通]都営三田線春日駅A5出口などから徒歩3分
撮影/鵜澤昭彦(すぎ田、井泉、ポンチ軒、あげづき、いわい、フリッツ)、浅沼ノア(まるやま食堂)、取材/肥田木奈々
※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。
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