WBCの公式インスタグラムより

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2026年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で韓国代表は17年ぶりに準々決勝へ進出したものの、強豪ドミニカ共和国代表に0―10、7回コールドという屈辱的な敗北を喫した。韓国国内では失望や怒りの声が広がる一方、冷静に現状を分析し、再建の道を探ろうとする議論も出始めている。その中で語られているのが「韓国でも第2の大谷翔平を育てるべき」という主張だ。

メジャーリーグのスター選手を多数そろえるドミニカ打線に対し、韓国投手陣は立ち上がりから失点を重ねた。試合の主導権を完全に握られ、試合は一方的な展開となった。

この大敗に韓国メディアは厳しい論調を展開した。スポーツ紙は「韓国野球は井の中の蛙だった」と見出しを掲げ、世界トップレベルとの差を指摘した。

もっとも、ファンの受け止め方は一様ではない。2013年大会、2017年大会、2023年大会と韓国は1次ラウンド敗退が続いており、今回のベスト8進出自体を前進と見る声もある。若い選手が多く起用されたことから、「ようやく世代交代が始まった」と評価する意見も少なくない。

一方、野球関係者の間では、日本との差を指摘する声も目立つ。侍ジャパンが世界大会で安定した結果を残している背景には、小学生年代から広がる裾野の広い競技人口と、科学的トレーニングを取り入れた育成システムがあるとされる。韓国でも長期的な育成体制の整備を求める議論が強まっている。

韓国で人気高まる「ゴッタニ(神大谷)」

そうした議論の中で象徴的に語られているのが、大谷翔平の存在である。韓国では以前から大谷の人気が高く、単なる外国人スターを超えた社会現象になっている。

大谷は過去に「韓国は好きな国の一つ」と語り、韓国選手に韓国語で「アンニョンハセヨ」とあいさつしたこともある。こうしたエピソードもあり、韓国では「憎もうとしても憎めない日本人選手」だ。

特に韓国の若者にとって、投打の二刀流という前例のない挑戦を成功させ、人格面でも高い評価を受けている大谷は単なる野球選手ではない。激しい受験競争や就職難の中で、「努力すれば世界で成功できる」という希望の象徴と受け止められている。

自己管理能力や目標設定の明確さに関する分析記事も多く、ネット上では「ゴッタニ(神大谷)」「マンチッナム(マンガから飛び出してきた男)」といった愛称で呼ばれている。

近年、韓国でも二刀流に挑戦する若手選手が現れ始めた。光州第一高校出身で米大リーグのテキサス・レンジャーズと契約したキム・ソンジュンらである。まだ数は多くないものの、大谷の成功が新たな挑戦を生み出している。

韓国野球は長く、少数のエリート選手を中心とした育成体制や精神論重視の指導が中心だった。米大リーグでの二刀流への挑戦は単なる話題作りでは終わらない。育成システムそのものを見直す象徴ともなりつつある。

韓国球界がどこまで体質改革を進められるのか。その成否は、アジア野球全体の競争力にも影響を与えるだろう。

文/五味洋治 内外タイムス