「#ママ戦争止めてくるわ」に浴びせられた冷笑的な批判の正体とは…瀧波ユカリ氏が一刀両断「女性やマイノリティが連帯して言葉を発する意味がわかっていない」

衆院選のさなか、1人の女性の「#ママ戦争止めてくるわ」というX(旧Twitter)のポストが大反響を呼んだ。
ニュース番組『わたしとニュース』では、投稿者の女性への取材をもとに、マイノリティの発信やSNS上の批判について漫画家の瀧波ユカリ氏とともに考えた。
■「#ママ戦争止めてくるわ」2児の母の思い
衆院選投開票の3日前に投稿され、大きな話題と議論を呼んだ「#ママ戦争止めてくるわ」。同じ境遇のママだけでなく、様々な立場から「戦争止めてくる」投稿が相次ぎ、ネット上で大きなトレンドとなった。そもそもの発信元は、2人の子を持つエッセイストのAさんだ。投稿に至った経緯を本人に聞いた。
「ある自民党議員が『血を流していただくこともある』という発言をし、2人の子を持つ母として、この大切な子どもたちに血を流させるなんて絶対に嫌。私は賛成しないと強く思いました。選挙予測で自民党圧勝という報道を見て、その予測に私のこの気持ちは入っていないと感じました」
そんな思いでAさんは期日前投票へ向かった。ちょうど夫が会食で留守のため、子どもを連れて投票に行き、ついでに外食をすれば一石二鳥だと考えていたという。
「先に学童から帰ってきていた上の子に『ママ、戦争止めてくるわ。ついてきて』と言いました。投票に行くというのを子ども向けにわかりやすく、ちょっと明るくしようと言った言葉でした」
将来、子どもが血を流さなくてもいい平和な国であってほしいという素直な気持ちを、子どもに向けて言葉にした際に生まれた言葉。同じ思いを持つ人々の共感を呼び、高市総理の強い日本に対する象徴的なフレーズとして、選挙戦の終盤にまたたく間に拡散された。
しかし、SNSでは多くの共感の一方で「高市政権が戦争をしたがっているというレッテル張り」や「ハッシュタグに候補者や議員が乗っかった姿が残念だった」といった批判的な投稿も見られた。
これまで特定の支持政党はなく、政治活動をしたこともないというAさんは、反響について…。
「普段は日常のつぶやきや仕事の告知でしかSNSを使っていません。あの言葉がバズったことで、政治的発言をする危ない奴と周りに思われて引かれてしまったらどうしようと不安にもなりましたが、保護者会であったママ友に『いいこと言うね!』と明るく受け止めてもらえ、ホッとしました。いろいろな友達から『私も戦争止めてきたよ!』とLINEをもらったりもして、みんなも政治のことをいろいろ考えているんだな、政治のことを話してもいいんだなと思いました」
何気ない日常から生まれた一言が、選挙戦の大きなトピックになったことについてはこう語る。
「憲法で言論の自由が守られているからこそ、『#ママ戦争止めてくるわ』と気軽につぶやき、自分以外のたくさんの人の平和への願いを知ることもできました。このままずっと、誰かが平和を願うとき、その思いを気軽につぶやける国であってほしいです」
■マイノリティの発信に対する「冷笑的な批判」
どこの政党にも所属しておらず、政治活動もしていない「普通の人」が、生活や子どもを大切に思う気持ちから発信した言葉。この波紋について、瀧波氏は次のように語った。
「女性や子育て中のお母さんが、自分たちの思っていることやあるあるなど訴えたいことをハッシュタグにするのは、Twitterが始まった頃からずっと続いている、ごくごく日常の中のこと。それを見た人たちも、私も一言言いたいとハッシュタグに乗せて何かを言っていく。その一連の流れの中の1つ。だから私も、全く批判的なことは何も思わないし、素晴らしいハッシュタグだと思う。『ママ』を主語にしていることによって、子どもに伝えているのが1発でわかる。言語センスがないと作れないハッシュタグで素晴らしいと思う」
一方で、この投稿に対して批判的な意見も巻き起こっている。その批判の根っこについてこう分析する。
「母親とか女性もそうだけど、要はマジョリティじゃない人たちが声を上げる時に叩かれるのは本当によくあること。サバルタン・. カウンター・パブリックという社会学の言葉があるけれども、そうした周辺化された存在の人たちが世の中を変えるために発信していく場を持つ。デジタル空間だとハッシュタグがそういう役割を持っていて、例えば、ミートゥー(#MeToo)運動もブラック・ライブズ・マター運動(#BlackLivesMatterや#BLMなど)もそう。そういうハッシュタグには今までも冷笑的な批判コメントがいっぱいついて叩かれてきた。それと同じことが起こっていると思う」
本来なら周囲が気づいて手を差し伸べるべきところを、当事者たちが傷つきながら主張しなければならない辛さもあるという。
「マジョリティはわざわざ団結してこうして言葉でつながっていく必要性がない。メインカルチャーの中で発信していくことが可能なので。だから、女性とかマイノリティの人たちが連帯して言葉を発している姿の意味がわからないのだと思う。何やっているんだと上から審査員的な立場でジャッジする、それはすごく簡単にできることだからやってしまっている。恥ずかしくないのかなと思ってしまう」
また、自然と湧き上がる言葉や、生活・子どもといった大切なことに対するハッシュタグは、政治家にとっても意味を持つはずだと指摘する。
「漠然とした不安とかじゃない。ちゃんと政治のことをチェックしている母親たちが、これは良くない、危ないと思っている。『血を流していただく』といった言葉もあって、そういう流れになっていると判断して声を上げているわけだし。例えば『保育園落ちた日本死ね!!!』も、それで保育園のことを変えていかなきゃいけない流れになった。最初からムーブメントにしようとは思っていないけれど、この声が広く届いたらいいなと思ってやっていることなので、そうした意味をちゃんと捉えてほしい」
さらに、SNSという気軽につぶやける場所での発信に対し、「気持ち悪い」などと強い感情をぶつける声もある。特に男性からの批判も多いという現状について、瀧波氏は苦言を呈する。
「『気持ち悪い』とか『センス悪い』は、大変感情的な言葉。批判をするのだったら、もっと丁寧にちゃんと伝えられる言葉でやってほしい。よく『男は論理的、女は感情的』と言われるが、それは全く信じるに値しない偏見だと思う。もし本当にそう思っているのだったら、ちゃんと理論的に説明してほしい」
(『わたしとニュース』より)
