「年金もらえないでしょ」「年金はないものだと思っています」現役世代の絶望…年金制度が行き詰まる、当然の理由
厚生労働省や国民年金基金連合会のデータによると、「確定拠出年金」の加入者は個人型(iDeCo)、企業型(企業型DC)ともに右肩上がりで増加しています(2022年時点)。この背景には、年金制度の“限界”が隠れているようです。本記事では、岩崎陽介氏の著書『頭のいい会社はなぜ、企業型確定拠出年金をはじめているのか』(青春出版社)より、人生100年時代の老後資産形成について解説します。
「確定拠出年金」加入者増加の背景にある「老後の不安」
確定拠出年金の加入者は右肩上がりで増えていますが、その背景には何があるのでしょうか。まず1つ目は、私たちの老後が長期化していることです。
[図表]平均寿命が延びて「人生100年時代」へ 出所:内閣府高齢社会白書より
ご覧のように、私たちの平均寿命は年々延びています。私たちの国の年金制度がスタートしたころ、人々の平均寿命はそれほど長くありませんでした。現役引退後、十数年生きた後に亡くなる人が大半だったのです。
そのため、老後のお金は今の時代ほど重視しておらず、老後の資産を準備しておくことに対して、それほどの危機感はなかったのかもしれません。
しかし、2021年の平均寿命は、男性が81.64歳、女性が87.74歳(2021年、厚生労働省)です。さらに、2050年には男性が84.02年、女性が90.4年まで延びる見込みです。老後の時間がどんどん長くなっていきます。そんな「人生100年時代」と言われる現在は、老後の生活のためにお金を準備しておく重要性が、以前にも増して高まっています。
さらに、確定拠出年金の注目が高まってきているもう1つの理由は、公的年金に対して不安を感じる人が増えていることが挙げられるでしょう。
2019年に話題になった「老後2000万円不足」問題が記憶に新しい人も多いのではないでしょうか。金融の専門家たちが作成したレポートの中に、「公的年金だけでは老後の生活資金が2000万円足りませんよ」というところがあり、その部分をマスコミがフォーカスして取り上げたために、公的年金に対する不安感が高まりました。
私も日々いろいろな方とお話しする中で、公的年金に対する不安をよく耳にします。若い人たちの中には、「年金もらえないでしょ」「年金はないものだと思っています」などと言う人もいます。極端な考えですが、そう思ってしまうのも無理のない状況といえます。
国の“延命策”も限界…崩れる「世代間扶養」のバランス
公的年金が完全になくなってしまうことはおそらくないかと思いますが、現在の公的年金を取り巻く状況を理解すると、より自助努力によって老後資金を準備しておかなければいけないことは確かです。
なぜかというと、ご存じのように、公的年金の仕組みは「世代間扶養」です。
世代間扶養とは、現在働いている現役世代が納める社会保険料をもとに、年金受給者に対して年金を支給するというものです。「世代と世代の支え合い」によって成り立っています。世代間扶養により年金の支給は終身にわたって続き、物価変動にも対応できる仕組みになっています。
ところが、この世代間扶養は、現役世代と年金受給者の割合がいいバランスを保てているときはいいのですが、それが変わってきたときは状況が厳しくなってきます。
実際、公的年金制度が作られた当初は、社会保険料を納める現役世代に対して、年金受給者はとても少ない状況でした。しかし、時代を経て少子高齢化が進み、現役世代が減って年金受給者が増えてきました。
さらには、その年金受給者が長生きするようになってきたため、世代間扶養を維持していく良好なバランスを保っていくのが厳しい状況になってきているのは誰が見ても明らかです。
そこで、国は少しでも年金制度を長持ちさせるために、受給開始年齢を先送りさせたり、年金支給額を調整できる仕組みを組み入れたりしています。また、現役世代の人にはできる限り長い間仕事をしてもらえるようにしたり、社会保険に加入する人を拡大したり、社会保険料率を少しずつ引き上げるなど、さまざまな工夫を凝らしているのです。
確定拠出年金は、老後不安を減らす資産形成の“近道”
今すぐに年金がなくなる、ということはなくても、少子高齢化が進む世の中で制度をめぐる財政状況が厳しさを増してくるのは止められない流れです。そんな時代に、老後もお金の面で心配をすることなく、安心して暮らしていくためには、現役世代のうちに自助努力での資産形成をしておかなければいけないのです。
その際に、真っ先に活用すべきなのが、確定拠出年金です。確定拠出年金は、まさに今の時代の救世主といえるでしょう。実は先ほどご紹介した「老後2000万円不足」問題の一端となったレポートには、こんな一節も含まれていました。
米国では、市況が好調だったことに加え、401(k)プラン等の制度的な後押しもあり、現役期から資産形成を実行し且つ継続するとともに、そのような世代が歳を重ねるに従い、高齢世帯の資産が増加していったと推察される。
この点、わが国でも後述するつみたてNISAやiDeCo等が整備され、個人が長期の資産形成を行うに際して、制度的な環境が整いつつある。
出典:金融審議会市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」
老後2000万円不足問題に対して、つみたてNISAやiDeCo等を活用して、しっかり準備していきましょうね、というメッセージが読み取れます。
国として準備してくれている制度をまずは有効活用していくことが、老後2000万円不足問題を解決する近道ではないでしょうか。
岩崎 陽介
株式会社Financial DC Japan
代表取締役社長

