元F1ドライバーのダニール・クビアト【写真:Panoramic/アフロ】

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元レッドブルのダニール・クビアトと対決

 AIの進歩がモータースポーツ界に大きな衝撃を与えている。英専門メディアは、元F1ドライバーのダニール・クビアトがAIが駆るマシンと対戦。追いつくことができなかったと伝えている。

 英専門メディア「ザ・レース」は、「A2RLの2025年アブダビ復帰から学んだすべてのこと」という見出しで記事を掲載。「アブダビ・オートノマス・レーシング・リーグ(A2RL)は、2025年アブダビ大会にて、チームが総額225万ドルの賞金をかけて競い合う姿を見せ、どれほど進歩したかを示した」と記している。

 A2RLは各チームが開発した自動運転AIを搭載したスーパー・フォーミュラでレースを行う次世代レースカテゴリー。UAEのヤス・マリーナ・サーキットにて行われたイベントでは、クビアトがAIチーム「TUM(ミュンヘン工科大学)」と対戦した。10秒のハンデが与えられたTUMのマシンに、10周以内に追いつくことを目指したクビアトだったが、「チェッカーフラッグを最初に受けたのはAIで、クビアトがその後を追った」と記事は伝えている。

 記事によると「この対決は、技術の進歩とAIのスピード向上を人間のドライバーと比較して見せるショーケースの意味合いが強く、クビアトが追い抜いて”勝つ”ことが目的ではなかった」としながらも、「AIは驚異的なラップタイム59.154秒を記録し、クビアトのベストタイムとの差はわずか1.585秒」だったといい、これは2024年に開催された際の「10秒差」から大きく改善された結果だという。

 続けて「さらに、TUMは完全自律走行レースでも58.183秒を記録し、その日のクビアトの最速ラップよりわずか0.5秒遅いだけだった」と、AIがレッドブルなどで3度表彰台に上ったこともあるロシア人ドライバーと遜色ないタイムを叩き出したことを明かし、「AIマシンと人間が操るマシンの区別がはるかに難しくなった」と強調している。

クビアトはAIマシンに衝撃

 記事では「去年とは昼と夜ほどの違いだ」と語ったというクビアトの談話を紹介。「去年よりずっと差が小さかった。これこそ、過去数年間でA2RLが成し遂げた進歩を確認できる最も重要なポイントだ」と、AIの恐るべき進化スピードに驚きを見せている。

 クビアトは、AIマシンについて「ブレーキのタイミングはかなり遅めで、正確だ。タイヤのスライドなど一部の領域ではまだAIに不足が感じられるが、量子力学の領域にも踏み込み始めている」と評価。「温度が1度変わるごとに、マシンの動きやエアロダイナミクスなどが変化し始める」という対応力にも舌を巻き、「かつてSFと思われていたことが現実となり、今このような話ができること自体が非常に素晴らしいよ」と称賛している。

 一方で「僕は昔からこの種の技術の大ファンだ。未来はここにある。細部に踏み込めば踏み込むほど難しくなり、最後の数十分の1秒を縮めるのは常に困難を極める」と、ドライバーとしてここから更にタイムを縮める困難さにも言及。「エンジニアがさらに細かい部分を発見するためには、より多くの技術的な作業が必要になる」と、“人類vsAI”の未来に対して展望を述べていた。

(THE ANSWER編集部)